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「好きだからやってきたこと」の繰り返しでヒット曲を生めたーーMega Shinnosukeが語る音楽家としての成長と「愛とU」のすごさ

SPICE

Mega Shinnosuke 撮影=福家信哉

作曲、作詞、編曲、アートワーク、映像制作をセルフプロデュースするマルチアーティスト・Mega Shinnosukeが、9月18日に4thアルバム『君にモテたいっ!!』をリリースした。chelmicoをフィーチャリングした「あの子とダンス(feat.chelmico)」や、崎山蒼志とのコラボ曲「海をみにいこう(with崎山蒼志)」をはじめ、全8曲が収録された1枚。先行シングルとして6月18日に配信リリースされた「愛とU」は、リリース後約2ヶ月でTikTok総再生回数が1億回を超え、「愛とU(Sped Up Ver.)」は『Bilboard Japan TikTok Weekly Top 20』に6週連続で首位を獲得、大バズりを引き起こしている。現在『Mega Shinnosuke ONEMAN TOUR “君にモテたいっ!!”』も開催中。今回はそんなMegaに、『君にモテたいっ!!』の制作話や「愛とU」のヒットが何をもたらしたのかを語ってもらった。


●海外でのクラブ体験が、J-POPへの意識を変えた

Mega Shinnosuke

ーー今回も自信作だと思いますが。

そうです!

ーー『君にモテたいっ!!』は全曲ラブソングですが、今のモードがラブソングだったんですか?

「聴きやすいポップスにしよう」と決めてはいたけど、聴きやすいポップスでラブソング以外を作るのは、僕は結構難しくて。そうなるとラブソングばかりになってきて、じゃあラブソングのアルバムにしようかなと思った感じです。

ーー聴きやすいポップスにしようと思ったキッカケはありましたか?

まず、NYとタイで、現地のクラブに行ったんです。僕はハウスミュージックが好きで行ったんですけど、クラブに来ていたお客さんもめっちゃハウスミュージック好きというか、「イェーイ! 音楽好きで楽しいね!」みたいなパーティーな感じ。それが正直日本にはないなと。日本は半分ぐらいファッションでクラブに来てる人が多い気がして、純粋に音楽が好きで踊りに来てる人ってあまりいない印象に僕は感じていて。

ーーなるほど。

インターネットが普及して、どんな音楽でも聴けるようになってるけど、日本でハウスミュージックはあまり広く聴かれてない。ライフスタイルも全く違うし、やっぱりそのカルチャーが生まれる国民性や地域性は絶対にその土地にあるなと思って。逆にJ-POPが日本でカルチャーとして作られていった理由が外から見てすごくわかったし、胸を張ってJ-POPをやってもいいかなと思ったんです。あと、カラオケスナックによく行くようになったので、歌う曲を作りたいなと思って「聴きやすいポップス」をテーマにしました。

ーーNYとタイには、どのぐらい行かれていたんですか。

NYは8~9日間で、タイは3日間ですね。

ーー毎日クラブに通われていたんですか?

タイでは最終日だけ。日本に住んでるタイ人の友達が帰国するタイミングで一緒に行って、向こうのインディーズバンドの人たちと繋がって、みんなでクラブに行ったんです。そこはタイでも知る人ぞ知るクラブで、たまたまボイラールームとかで回してるフランスのDJが出てるイベントをしていて。本当ハコもDJも良かったし、めっちゃ楽しかったです。

ーー日本のクラブシーンとは違いますか。

全っ然違いますね。そもそもクラブというものが違います。さっきも言ったように、日本は音箱と言われる良い東京のクラブにも、音楽よりファッションから入ってくるインフルエンサーとかが一定数いるけど、海外にはいないんですよ。よく映画とかで、友達と「クラブ行こう」みたいになって、中に入ったらみんな踊ってるクラブがあるじゃないですか。タイにあったのは、まさしくそのクラブでした。

ーー帰国後にアルバムの曲を書いたんですか?

旅行中に書いたのも、旅行前に書いたのもありますけど、アルバムを作っていくにあたって色々進めたのは、海外から戻ってきた後ですね。

ーー楽曲が全部揃ったのはいつ頃ですか?

いつだろう。大体DTM上でデモを作って、それが出揃ってからレコーディングをちょっとずつ進めて、どんどん形になっていった感じです。今までよりも、ちゃんと自分で1回DTMで起こしてみる、みたいなのをやったと思います。そのままDTMの音を使った曲もすごく多いです。

●アルバムのストーリー性とサウンド面の余白

Mega Shinnosuke

ーーアルバム全体の歌詞を曲順通りに追っていくと、1人の人と出会って付き合って別れるまでのストーリーがあるなと感じました。特に「あの子とダンス(feat.chelmico)」から最後の「ふたりの映画」までは、次に続く楽曲同士の歌詞がリンクしていますよね。それは意図的なものですか?

意図的なものです。ラブソングだけど、具体的に誰を描いているというのはなくて。もちろん自分の色んな経験から出てきた曲ではあるけど、それが前後するのはちょっと嫌だなと思って。すごいラブラブな曲の後に別れた曲があって、またラブラブな曲があったらちょっとよくわかんないから。しかもちゃんと曲のトーンに合わせて、失恋なのか片思いなのかを考えて歌詞を書いてるから、自然と流れも出てきた感じですね。

ーー曲展開ではJ-POPを意識されたところもありますか?

そうですね。「J-POPだ」と感じだけど、サビがバーッとくるよりかは、ビートがずっと続いていって、音が少ないところに急に上モノが乗ってくるだけで盛り上がる、そのくらいの感じが良くて。それこそ「愛とU」は本当にそうだと思うんです。ビートの上にベースとカッティングで同じコードがずっと鳴ってて、サビでコーラスとエレキギターが1本増えるだけ。「ふたりの映画」もキメがあって、サビがきてコーラスが増えて、ドラムがちょっと激しくなるぐらい。そういう余白感は全曲で意識してます。

●「愛とU」は音楽家として成長したからできた曲。胸を張って送り出せる

Mega Shinnosuke

ーーアルバムの中でMegaさんが気に入ってる曲はどれですか?

流れで聴くか、単曲で聴くかによってちょっと違ってて。流れだったら「18才の夏休み」がめっちゃ好きなんです。「愛とU」が終わった後にセミの声が上がってきて、バシってくるのかと思ったら、うわんっと広がっていく感じがめっちゃ良い。でもまあ、シンプルに「愛とU」っすね。「愛とU」をこのアルバムの中で1番最初に先行リリースした理由も、1番良いなと思ったし、1番良いと思ってもらえそうだなと思ったから。自分のバックボーンがすごく活きた楽曲だし、世の中にあまりない曲というか。僕、「愛とU」の何が良いかっていう説明、めっちゃできるんですけど(笑)。

ーーお願いします!

「愛とU」の何が良いかというと、そもそも「丸サ進行」と言われる、椎名林檎の「丸ノ内サディスティック(1999年)」のコード進行が使われているんですけど、そのコード進行を用いた流行りの曲ってめちゃくちゃあって、大体ピアノかエレピなんですよ。僕はそんなにピアノにルーツもないから、それをギターでやりたいなと。かつちょっとUKサウンドっぽいビートで、でも打ち込みで。要はDTMバンドをやるみたいな。リズムのヨレもなくてピチッと合ってるけど、オレのアンニュイな感じも相まって、ちょっとヨレてるように聴こえる感じを出してる。多分あのトラックの少なさで3分間引っ張るって、結構難しくて。それができたのは、僕がただアンニュイに歌えるだけじゃなくて、歌い上げることもラップもできるし、ギターソロも弾けるから。僕のスキルの曲だけど、流行りの曲という印象で聴けるのがすごいんですよ。

ーー実際、めちゃくちゃバズっていますよね。

サビだけ聴いたら「ああ、流行りそうな曲だね」という感じなんですけど、ちゃんと楽曲としても胸を張って送り出せる。すごく気に入っています。

ーー「愛とU」は、作った時から手応えがあったんですか?

あのコード進行は結構ムードが出るので、最初から毎日疑う余地なく「良い感じの曲だな」とは思ってたんですけど、あの平坦な感じのまま何回も聴けるのがすごい。そこを作れたというのが、自分的に音楽家として成長した感じはあります。歌詞も意味が通ってて好きだし、MVのディレクションも自分でやれたし。だから作詞、作編曲、歌唱、ギター、映像監督、出演までやっててセルフメイドなんですけど、それがこうやって広いところに届いてることが結構ウケる(笑)。

ーー今は音楽家としての成長の喜びが大きいですか?

そうですね、そっちの方が大きいのと、普通にヒットソングが出たのがウケる。ライブでやっても、イントロがかかった瞬間に盛り上がるんですよ。みんな演奏を見て盛り上がるんじゃなくて、この曲が好きだからアガるのがウケる。

ーーウケる、なんですね。

僕、ヒットが「愛とU」で2曲目なので。18歳の時に「桃源郷とタクシー(2019年)」がヒットしたので、思うこともあんまないです。でも懐かしい感じっすね。曲がヒットすると、音楽好きな大人じゃなくて、中学生や高校生まで聴いてることになる気がしていて。思い出したんですけど、ヒットすると急に「可愛い」と言ってくる人が増えるんですよ

ーーへえ! 中高生から?

だと思います。DMに「中間テストなんですけど、頑張ってと送ってほしいです」みたいのがめっちゃ来るんですよ。「桃源郷とタクシー」の時も超ありました。この感じが懐かしいなと思ってます。「Spotify RADAR: Early Noise」に18歳で選ばれて、でも当時は福岡でふらついてただけだったので「何これ」みたいな。あまりわからなくて。それで全然曲も出さないままだったんです。「桃源郷とタクシー」が世の中的なMega Shinnosukeの初期衝動だったんですけど、今そこから5年ぐらい経って、音楽シーンも変わったし、新しい人が出てきたり、オレが好きだったシーンはほぼなくなっちゃったけど、その中でこうやって新たにできたシーンでヒット曲を出せた。本来は今いるファンの人とどんなコミュニケーションを取って、もっと近いファンにしていくか、その人たちが離れないでいるにはどうしたらいいかとか、色々考えて動くと思うんですけど、僕はない。

ーーもう自分の好きなことをやりたい。

今までもそうやってきたし、そうした結果、何もなくなったようなところから、またヒット曲が出た。だからもし何かがなくなっても、またヒットを生もうかなというモチベーションなので(笑)。わかりやすく見えるファンは増えたけど、「世の中の人がめちゃめちゃオレに興味を持ってるぞ!」というものはなくて、相変わらずやるしかないなという感じです。

Mega Shinnosuke

ーーその中で、今回のワンマンツアーは自身最大規模ですね。

たまたまっすよ。こういうのってめっちゃ前から決まってるじゃないですか。

ーー以前インタビューで「頑張ってデカい会場でやっても、それができたらどうなるんですかね」とおっしゃっていたのを拝見しましたが、今回は大人が決めたと。

そうですそうです。イベンターの人が決めた。ライブは好きなのでしたいですけど、「ここでやりたい」とかこだわりはないですね。僕が決めるなら、例えば初日(11月2日(土))の札幌は鍾乳洞っすね。

ーー鍾乳洞!?(笑)

11月16日(土)の福岡は地元なので、姪の浜とか福岡タワーの下。12月8日(日)の東京ファイナルは、下北沢の小田急線の前です。あとはカラオケスナックでもいい。僕が本当に「音楽をやったらおもろいんじゃね?」という場所は、そういうことになっちゃうんですね(笑)。

ーーそれも観てみたいです。でもシンプルに、大きいハコでライブが観れるのはこちらも嬉しいですよ。

頑張ってきたからとかじゃなくて、普通に好きだからやってきたことで「これ良いんじゃね?」ということの繰り返しでヒットを生めた方がデカい。すげえラッキーという感じです。オレすごラッキー。相変わらず生きていけると思って(笑)。

ーーそのマインドはすごくヘルシーですね。

ツアーはめちゃめちゃ楽しみですよ。新しい歌いたい曲を、カラオケスナックより良い音響の中で、たくさんの人に見てもらいながらやれるから。

ーー今、ライブはどんなモードでされているんですか?

前は5人編成だったんですけど、今回は僕を含めて4人で廻ります。音数少ない方がいいのと、僕がギター上手くなったので、自分が弾きゃいいやと思って。あとはアコースティックもやります。でも直前で変わるから、何が起こるかわからない。今は盛り上げるマインドもありますけど、歌うマインドです。

取材・文=久保田瑛理 撮影=福家信哉

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