カモフラージュが得意な<ニシキフウライウオ>はタツノオトシゴの親戚? 擬態のためカラフルに
海の中を漂うニシキフウライウオ。
ダイビングで時折見かけることのある魚ですが、一般の人にとっては少しマイナーな存在なのではないでしょうか。
ニシキフウライウオは、実はよく知られる魚・タツノオトシゴの仲間なのです。
ニシキフウライウオってどんな魚?
ニシキフウライウオの学名は”Solenostomus paradoxus”(ソレノストムス・パラドクサス)、訳すと「不思議な菅のような口を持つ魚」という意味になります。
その名の通り、細長い口をしており小型の甲殻類を食べているそうです。
普段は珊瑚やウミユリ、シダの近くに生息。カモフラージュのために体中に多数の皮弁があり、尚且つ体色も近くのものに似せるのでカラフルな個体が多いです。
逆立ちの体勢をとることが多いですが、これはカモフラージュを高めるために枝っぽさや海藻っぽさを出してるようです。
目も眼窩の中で回転するので、体を動かさなくとも、逆立ちのままで全方位を見渡すことができます。
どこで出会える? 見つけるコツ
基本的にインド洋から西部太平洋にかけて分布しているニシキフウライウオですが、日本では黒潮にのってくる死滅回遊魚として、房総半島以南で見ることができます。
実際に筆者は、和歌山県の白浜エリアや串本エリアで出会いました。
ニシキフウライウオは成長するにつれ容貌を変化
ニシキフウライウオは一生のうちに何度か容貌を変化させます。幼魚は透明の体でプランクトンに混じって目立たないように生活しているようです。
ニシキフウライウオの幼魚(撮影:shell)
前述のとおり、成長すると珊瑚やウミユリ、シダの近くに生息するようになり、その環境に合わせて体色を変えて擬態するため、カラーバリエーションも豊富です。
ニシキフウライウオは、カモフラージュの達人。見つけるのも簡単ではありません。
そのため、まずは擬態してそうな場所(シダの近くなど)をじっくり観察するのが確実な方法です。
また、ペアでいることも多いので、1匹見つけたら周囲もよく観察してみてください。
そして何よりも、現地のガイドさんに「ニシキフウライウオに会いたい!」と事前に伝えておくと、遭遇率はグッと高くなると思います。
タツノオトシゴの親戚
ニシキフウライウオはタツノオトシゴの親戚。
ニシキフウライウオはカミソリウオ科、タツノオトシゴはヨウジウオ科と分けられる科は異なるのですが、どちらもトゲウオ目という同じくくりの中にいます。
トゲウオ目には、ヘラヤガラやヨウジウオなどといった「細長くて擬態上手なユニークな仲間たち」が属しています。ぜひ海の中や水族館で、目をこらして探してみてください。
黄色のヘラヤガラは“幸運の金色”ともいわれてるそうで、海で見かけたら拝みたいものです。ふわりと漂うニシキフウライウオもお忘れなく。
(サカナトライター:Shell)
参考文献
スミソニアン協会・ロンドン自然史博物館、遠藤秀紀・長谷川和範(2021)、OCEAN LIFE 図鑑 海の生物 Book、東京書籍