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転職活動で内定がもらえる人、もらえない人 ─面接での“伝え方”の違い

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転職活動で内定がもらえる人、もらえない人 ─面接での“伝え方”の違い【求人ボックスジャーナル】はたらき方やキャリアを考える機会を創出するメディア

転職活動にはしっかり準備して臨んだ――それなのに、なぜか結果につながらない。いったいどこがいけなかったのだろう? 実はその原因、「自分を買ってもらう」ことだけを考えていたからかもしれません。そう語るのは、転職サイト「リクナビNEXT」の元編集長で、30年以上にわたり中途採用の現場を見つめてきたキャリアのプロ・黒田真行さん。企業に「この人と一緒に働きたい」と思ってもらうには、単なる自己PRは避けたい。では、選ばれる人は何が違うのか――。採用の現場を熟知する黒田さんに、 企業目線で考える“伝え方”の本質 を伺いました。

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企業は“人”を欲しがっているわけではない

企業の採用力と、自分のスキルや経験を比べたときに自分の方が上回っていれば、適切に伝えるだけで、採用につながりやすくなります。

しかし、 人気の高い企業や、自分の実力以上だと感じる企業に挑戦する場合、状況は異なります 。なぜなら、そのような企業にはライバルとなる応募者が集まるからです。実際、人事担当者は30人以上の候補者を同時に比較しながら、会社や事業に必要な人材を見極めていきます。そのため、「私はこういう強みがあります」といった自己アピールだけでは、人事担当者は、その人の価値を見出せない可能性が高いです。

企業が本当に求めているのは“人材”そのものではなく、“事業を推進できる力”です 。雇用はそのための手段のひとつにすぎず、より成果が見込めるのであれば、業務委託や代理店契約といった外部リソースを活用することもあります。

だからこそ、「この人を採用すれば成果につながる」と企業に確信してもらえなければ、採用には至りません。

にもかかわらず、面接でありがちなのが、「自分にはこういうスキルがあります」と、自分の能力・スキルの紹介だけで終わってしまうことです。しかし、 企業が本当に知りたいのは、“あなたに何ができるか”ではなく、“あなたが自社に何をもたらしてしてくれるのか”。つまり、提供される価値そのもの なのです。

選ばれるのは「貢献可能性を伝えられる人」

内定を獲得できる人とそうでない人の差は、「自分がこの会社でどう貢献できるのか」を、どれだけ具体的に伝えられるかにあります。

もちろん、転職活動では多くの人がまず自分の強みやキャリアの棚卸しから始めます。それ自体は重要なステップです。しかし、強みをどれだけアピールしても、「その力が企業にどう役立つのか」が伝わらなければ意味がありません。

企業側が求めているのは、「この人を採らないと損だ」と思えるだけの裏付けです。その判断材料として、必要なのが次の3つの要素です。

①何をしてきたか(実績・スキル・能力・姿勢)
②それがどう役立つか(企業への具体的な貢献可能性)
③なぜ再現できるのか(裏付けとなる経験や考え方)

単に「こんなことをやってきました」と①だけを語っても不十分です。でも多くの候補者は、①を説明して自分のことをアピールしたつもりになって、そこで満足してしまいます。しかし、企業が本来知りたいのは②と③――すなわち“貢献の中身”と“その根拠”なのです。

また、実績が華々しいものである必要はありません。たとえ異なる職種や業界でも、通用するスキルや汎用的な思考力なども「何をしてきたか」という経験の一部として十分に評価されます。重要なのは、それらの経験を 「この企業でどう活かせるのか」という貢献可能性につなげて語る ことです。

それに、未経験な領域でも、意欲や成長姿勢をもとにポテンシャルを示すことは可能です。過去の困難をどう乗り越えてきたか、どんな学びを得てきたか――そうした経験を通じて、「なぜこの会社でも成果を再現できるのか」という裏付けにつなげることができます。
そして、 企業の事業内容や抱える事業課題を高い解像度で理解し、「自身の成長が企業の利益や組織の発展にどう貢献するか」を語ることができれば、本気度と再現性の両面を伝えることができます 。

迎え入れる“採用側”の視点に立つことが、説得力を生む

自分が行きたい企業に対して自分の価値を伝えるには、特別なテクニックは必要ありません。鍵となるのは、「事前準備」と「相手視点で考える力」です。

まずは応募企業の事業内容や職種の役割、営業スタイルや組織体制など、分かる範囲でしっかりと調べておくことです。その上で、「自分はどうフィットし、どのように企業(あるいは事業に)貢献できるか」を明確にしておくこと。それが、応募書類の作成や面接での基本姿勢となります。

もちろん、事前に調べても分からないことはあります。その場合は面接で質問しながら確認すれば良いのです。その場で得た情報をもとに、「そうであれば、私はこのような形で貢献できます」と伝えられるようにしておきましょう。

そのためにも、これまでの経験や強みを“再現性のあるエピソード”として整理しておくことが重要です。面接で「うまく言葉が出てこない」というケースの多くは、企業が求める人物像を明確にせず、自分の経験と照らし合わせて考える“仮説”を持たずに応募していることが一因と考えられます。
選考は、「この人が本当に必要かどうか」を短時間で判断する場です。だからこそ、自分の貢献可能性を、相手が具体的にイメージできる形で提示できるよう、事前の準備が欠かせません。

そのために視点として有効なのが「採用する側の立場で考えること」です。たとえば、もし自分が経営者だったら、どんな人材に来てほしいのか。それが難しければ、同じチームのメンバーとして迎え入れる立場だったら――と想像してみてください。

「この人と一緒に働きたいと思えるか?」「この人が加われば、チームの成果が上がりそうか?」そう思わせられる存在であるかどうかが、最終的には選考を左右します。

そこでは、スキルや経験といった可視化できる要素だけでなく、人間性や信頼感といった可視化しにくい要素も問われてきます。周囲と協力できる姿勢、責任感、前向きな働きぶり――そういった要素も「この人と働きたい」という気持ちにつながります。

だからこそ、日常的に自分の働き方を振り返っておくことが肝要です。「自分が周りにもたらしている価値」を、上司からの評価だけでなく、クライアントや同僚などにもヒアリングしてみる。そうした 多角的なフィードバックをもとに、自身の貢献を言語化しておく ことで、いざというときに自信を持って伝えられるようになります。

この積み重ねは、転職活動の備えとなるだけでなく、日々の仕事の質を高め、キャリアの選択肢を広げる力にもなります。 まずは今の仕事の中にある“価値提供の手応え”を丁寧にすくい上げ、言葉にしてみる こと。それが、転職だけに限らず自分らしいキャリアを築く第一歩になるはずです。

取材・文: 西谷 忠和
編集: 求人ボックスジャーナル編集部

プロフィール

黒田 真行

ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役

1988年、株式会社リクルート入社。「リクナビNEXT」編集長、 リクルートエージェント HRプラットフォーム事業部部長、株式会社リクルートメディカルキャリア取締役を歴任した後、2014年にルーセントドアーズを設立。35歳以上向け転職支援サービス「Career Release40」を運営している。 2019年、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を開始。

代表著書 『35歳からの後悔しない転職ノート』『転職に向いている人 転職してはいけない人』

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