ウルフルズ「ガッツだぜ‼」小室哲哉のアドバイスと伊藤銀次のプロデュースで初の大ヒット
連載【90年代デビューアーティスト ヒット曲列伝】vol.17
ガッツだぜ!! / ウルフルズ
▶︎ 作詞:トータス松本
▶︎ 作曲:トータス松本
▶︎ 編曲:ウルフルズ / 伊藤銀次
▶︎ 発売:1995年12月6日
▶︎ 売上枚数:66.3万枚
1990〜1999年の10年間にデビューし、ヒットを生み出したアーティストの楽曲を当時の時代背景や、ムーブメントとなった事象を深掘りしながら紹介していく連載の第17弾。今回は、ウルフルズ「ガッツだぜ!!」を紹介します。
曲が誕生するきっかけは、小室哲哉の何気ないアドバイスから
この曲は、小室哲哉がMCを務めていた、フジテレビの音楽番組『TK MUSIC CLAMP』にトータス松本が出演した際、当時お気に入りだったtrfの「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」について、 “アレ、本当にいい曲ですよね” と小室哲哉本人に伝えたことをきっかけに誕生しました。
小室哲哉はこの言葉に “君たちにはディスコみたいな音楽、合っていると思うよ” と返し、それがずっと頭から離れなかったトータス松本は、「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」のコード進行に、KC&ザ・サンシャイン・バンドの「ザッツ・ザ・ウェイ」をもじったタイトルをつけた曲のデモを作り、伊藤銀次に渡します。
ロックバンドが、ディスコやってもいいじゃない!
1994年からウルフルズのプロデューサーとして活動し、アレンジだけでなく、曲や詞を書く段階からメンバーとマンツーマンでスタジオに入り、好きなフレーズや、好きな音楽の話を聞きながら制作を進めていた伊藤銀次は、この曲のデモを聴き、瞬時にひらめいたことをメンバーに提案します。
“この曲で、ウルフルズ流のディスコをやろう!”
その提案にメンバーは驚きますが、伊藤銀次には、確信がありました。その理由をラジオのインタビューでこう話しています。
「ウルフルズに初めて会ったとき、トータス君がね、『僕たちバッタもんバンドです』って言うんだよ。『バッタもんのブルース、なんちゃってサーフィンなんですよ!でも、僕らはこれが好きなんですよ』と。面白いことを言うやつらだと思って。それで、『なんちゃってディスコだよ』となった」
1976年に大滝詠一、山下達郎と『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』を発表。その後、デビュー当時の佐野元春をプロデュースし、バラエティ番組『森田一義アワー 笑っていいとも!』のテーマソング「ウキウキWatching」を手掛けるなど、作曲家やアレンジャーとしてだけでなく、ギタリスト、シンガーとしても多彩な音楽活動を経験してきた伊藤銀次と、同じ大阪出身のウルフルズのメンバーとの、洒落の通じあうケミストリーは、この曲でみごとに融合。結果、ウルフルズ初のシングルチャートTOP10入りを果たし、66.3万枚のセールスを記録。バンドを代表する1曲として、今も愛され続けています。
イントロから溢れる “これぞウルフルズ!” というバイブス
トータス松本は、この曲をリリースした当時のことを、雑誌のインタビューでこう話しています。
「(この曲は)世の中が元気ないから元気のある曲を作りたいとかそんな発想じゃなかった。むしろ逆っていうか、俺らが頑張ろうとしているのに世の中の暗いムードは何なんや!って感じ。歌詞は何も言っていないから。じっくり読んでみてほしい。内容は本当にゼロですね。(でも)ガッツだぜって言い切っている。その言葉だけがみんな欲しかったんじゃないですかね」
この曲がリリースされた1995年は、1月に阪神淡路大震災が発生、3月には地下鉄サリン事件が起こるなど、世の中が暗いムードに包まれていました。だから元気が出る歌を… ではなく、心も身体も華やぐディスコ風アレンジで飾った、交じりっ気のない楽しいバンドサウンドで「ガッツだぜ!!」と言いきる。自らを鼓舞し、そのパワーでオーディエンスを巻き込んでいく “これぞウルフルズ!” というバイブスがイントロから溢れるほどに滲み出ていたらこそ、この曲はヒットしたのではないでしょうか。
男は汗かいて ベソかいて GO!
これでいいのだ、これがいいのだ!! 最高。