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【モヤモヤを解決!】関東では何年生、関西では何回生。大学の学年の呼称が違うのはなぜ? #もやもや解決ゼミ

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関東では「大学○年生」といいますが、関西では「○回生」というのはなぜ?

日常に潜む「お悩み・疑問」=「もやもや」を学術的に解決するもやもや解決ゼミ。今回は大学生の「○年生」という呼び方についてです。

大学生読者の皆さんは不思議に思われないでしょうか。関東では「大学○年生」といいますが、関西では「○回生」といいます。なぜこのような呼称の違いが一般的になっているのでしょうか。

今回は、『京都大学大学文書館』西山伸教授にお話を伺いました。西山教授は、『京都大学百年史』『京都大学百二十五年史』を手掛けられ、大学の歴史について造形の深い方です。

【画像】サクラサク!京都大学吉田キャンパスの桜 (pixta)

東京大学と京都大学の差が原因だったのでは?

まず、これはあくまでも私の意見であることをお断りしておきます。「何年生」「何回生」という呼び方の差は、日本における大学のでき方・発展の歴史的経緯に起因するものと考えられます。

東京大学は、1877年に日本で最初につくられた大学で、日本の発展を支える高級官僚を養成するためのものでした。

日本の発展を支える高級官僚を養成する機関であり、明治維新直後の当時は欧米の文明を一刻も早く取り入れる必要がありました。

そのため、大学の講義は一方通行的なもので、丸暗記的な勉強方法となりました。当時は「卒業」は試験制で、1科目でも不合格なら卒業できませんし、不合格になったらその科目だけ再試験を受けるのはなく、全部の科目を再度受けるという、大変厳しいものでした。

京都大学は、1897年、東京大学から20年後に日本で2番目に設立された大学です。このころ、ちょうど東京大学における講義や勉強方法に対する批判が始まっており、東京大学的ではない教育の在り方が求められていたのです。

京都大学の初代総長である木下広次は、その就任式で「京都大学は東大の分校ではない」「東大とは違う特色を出していく」と明確に述べました。

京都大学では、一方通行ではない講義、少人数で対話形式の「ゼミナール」方式を取り入れたり、学生自身の考えを問う論文が課されたりなど、「学府」にふさわしいスタイルを模索しました。

科目の選択制が導入されたのも京都大学が初めてです。必須科目の他に、学生が幅をもって科目を選択できるよう選択科目を設けました。

このような「教育の在り方」による差が、

●学年を非常に重視した――東京大学
●学年という概念が乏しい――京都大学

という差を生んだものと推測できます。東京大学の場合は、大学生になって「何年目」というのが大事であり「学年制」ですが、京都大学では「科目制」「単位制」であり、学年は重視しないというわけです。

実際、明治40年代の京都大学の学内雑誌には、すでに「何回生」という言い方が確認できます。

それぞれの制度で育った研究者は、その後各大学・機関に散ってその制度を広めていきました。関西にはやはり京都大学で育った研究者が多くなったので、関西では何回生という呼称が一般的になったのでしょう。

◇けつろん!

何年生・何回生という呼称の違いは、「東京大学、京都大学の『教育の在り方』の差に端を発しているのではないか」ということでした。西山先生によれば「この違いは今後もなくならないでしょう」とのことです。

◇教えてくれた先生
西山伸 

 Profile

歴史学者。京都大学大学文書館教授。
1963年、兵庫県に生まれる。1987年に京都大学文学部を卒業。1993年、同大学院文学研究科博士課程を単位取得退学。京都大学文学部助手、京都大学大学文書館助教授を経て、2012年から現職。

https://www.kyoto-u.ac.jp/kurenai/202203/kenkyushitsu/index.html

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