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提案も契約もリモートでスマートに スウェーデン発のGetAcceptが創る新しい営業の形

TECHBLITZ

紙の書類も、ハンコもいらない時代へ——。会議室での商談が「デジタルセールスルーム」に変わり、契約書へのサインもオンラインで完結する。スウェーデンで創業したスタートアップ、GetAccept(本社:米カリフォルニア州)は、B2B営業の「提案から契約まで」をデジタル空間で一元化するプラットフォームを提供している。見積書や提案書、説明動画、そして電子署名まで全てが一つの画面に集約され、遠く離れた顧客ともスムーズなやり取りが可能だ。今回は、創業者でCEOのSamir Smajic氏に、GetAccept誕生の背景やプロダクトの特徴、そして描く未来について話を聞いた。

<font size=5>目次
デジタルセールスルームは営業をどう変える?
GetAccept創業の背景とビジョン
最大の特徴は「オールインワン」の仕組み
グローバル市場におけるGetAcceptの挑戦

デジタルセールスルームは営業をどう変える?

「退屈な電子メールから世界を救いたい」。GetAcceptのCEOであるSamir Smajic氏は、同社の存在意義をそう表現する。B2B営業において、提案書や契約書のやり取りは依然としてメールに依存している企業が多い。しかし、メールでのコミュニケーションは一方通行になりがちで、相手の反応が見えにくく、複数の関係者との調整も煩雑だ。

 GetAcceptはこうした課題を解決するため、商談に関わるすべての要素を一つの「デジタルセールスルーム(DSR)」に集約した。営業担当者は提案資料や契約書をオンライン上で共有し、顧客の閲覧状況をリアルタイムで把握できる。さらに、電子署名機能により契約締結も同一プラットフォーム内で完結できるのが強みだ。

 Smajic氏は「セールスは本来、双方にとって楽しいものであるべきです」と語る。「誰かが何かを買いたいと思っていて、あなたがそれを提供できるなら、それは両者にとって有益なことです。私たちはその関係をより良くするお手伝いをしています」

Samir SmajicGetAcceptFounder & CEOスウェーデン出身。ルンド工科大学(Lunds Tekniska Högskola)で機械工学を専攻。卒業後の2009年にCRM関連企業にてキャリアをスタートし、顧客企業の課題と向き合う中で製品開発に関心を深める。2015年、それまでの経験をもとに、営業担当者と顧客がより深く関われる仕組みの必要性を感じ、GetAcceptを創業。Y Combinatorの支援を受け、デジタルセールスルームという新たなカテゴリを提唱し、グローバル市場での成長を牽引している。

GetAccept創業の背景とビジョン

 Smajic氏は大学で機械工学を専攻していたが、「計算だけをする仕事は退屈だった」と振り返る。そこでキャリアをCRMコンサルタントに変更。多くの企業の営業課題に触れる中で、製品開発への興味が高まり、営業プロセスの効率化に着目するようになった。その後、製品担当VP(バイス・プレジデント)を務めた経験から、営業プロセスの根本的な課題を解決するためにGetAcceptを立ち上げる。

「多くの営業担当者が依然としてメールでコミュニケーションを取っていますが、それは非常に非効率です。顧客とのエンゲージメントが生まれにくいのです。優秀な営業担当者は、誰といつ話すべきかを理解していますが、それをメールだけで実現するのは限界があります」とSmajic氏は言う。

 その課題を解決するために生まれたのが、顧客と営業担当者がデジタルでも対面のような双方向のコミュニケーションを行える「デジタルセールスルーム」だ。「当初は誰もこの概念を理解してくれませんでしたが、今ではDSRというカテゴリが認知され、GetAcceptはそのリーダーとなっています」と彼は自信を見せる。

 GetAcceptの成長が大きく加速したのは、コロナ禍の到来だった。リモートワークの普及により、対面での商談が難しくなり、オンラインでの営業活動が主流となったのだ。「COVID-19以前は対面で会うのが当たり前でした。しかし、直接会えなくなったことで人々は『新しいやり方が必要だ』と気づきました。私たちのDSRはそのニーズに応える存在になりました」とSmajic氏は振り返る。現在でもハイブリッド型のビジネスが主流となり、GetAcceptの提供するソリューションの需要は増え続けている。

最大の特徴は「オールインワン」の仕組み

 GetAcceptの最大の特徴は、営業機会の発見から契約書への署名までを一貫して管理できる「オールインワン」の仕組みだ。同社のプロダクトは主に「ディールルーム(Deal Room)」と「コントラクトルーム(Contract Room)」という2つのモジュールで構成されている。

 ディールルームは商談初期から提案書作成までをサポートする。営業担当者は資料の共有や顧客とのコラボレーション、関係者の巻き込みなどを行える。一方、コントラクトルームは契約書作成から電子署名までのプロセスを効率化。テンプレート活用による契約書作成の迅速化や、オンライン上での交渉、電子署名の収集などの機能を備えている。

 Smajic氏は競争環境について、「ポイントソリューション(機能ごとに特化したツール)」との違いを強調する。「DocuSignやAdobe Signのような署名ツール、HighspotやShowpadのような提案資料の共有・追跡に特化したサービスとは異なり、GetAcceptは営業プロセス全体をひとつの屋根の下に収めているのが強みだ」と語る。

 この統合されたアプローチは、営業チームの効率化だけでなく、顧客体験の向上にもつながるという。「買い手側からすると、ピッチ資料、提案・見積書、契約書とそれぞれ別のサービスのリンクが送られるのは良い体験とは言えない」とSmajic氏は指摘する。「自動車を買うとき、タイヤは別の店、ドアは別の店、エンジンはまた別の店で買わなければならないとしたら、それは意味がないでしょう。それと同じことですね」

 ユースケースの1つとして、米国のホテル・カジノ運営大手MGMの事例があるという。「MGMは貸しイベントスペースのビジネスに我々のソリューションを活用しています。例えば、ある企業が大型イベントの開催について問い合わせると、MGMは従来のようにPDF資料を送るのではなく、ディールルームを作成し、そこに貸しスペースに関するコンテンツやビデオ、過去の開催事例のプレゼンテーションなどを追加することで、まるで実際にMGMでイベントを開催したかのような体験を提供できます」。この方法によって、MGMは提案の成約率を向上させているという。競合他社との差別化が難しい業界でも、顧客体験を向上させることで受注率を高められることを示す好例だ。

 GetAcceptのもう1つの特徴として、AI技術の積極活用が挙げられる。社内では全従業員に日常業務でのAI活用を奨励しているだけでなく、製品自体にもAIを搭載する取り組みを進めている。「現在リリース予定の機能はコンテンツ生成に関連している。これらのルーム内では多くのコンテンツ—会議、プレゼンテーションなどを作成するが、現在はその多くが手動で行われている」とSmajic氏は説明する。「我々はこれを自動化し、営業担当者が常に『どのケーススタディを提示すべきか』『どのピッチデッキを使うべきか』を考える必要がないようにする」

 具体的には、会議の内容分析、顧客のニーズや課題の把握、これまでの提案データの蓄積などを組み合わせ、営業担当者に最適なコンテンツを自動的に推奨するシステムだ。Smajic氏は「会議後に、GetAcceptがこのお客様にはこのソリューションを提案すべきだとレコメンドし、営業担当者はそれを考える必要なく、直接ルームにコンテンツを作成できる仕組みだ。これによって時間を節約し、適切なソリューションを見つけやすくなる」と続けた。

 インターフェース自体は現在英語のみだが、共有するコンテンツについては日本語を含むあらゆる言語に対応。「PDFやWord文書など、アップロードするものはそのままの形で表示されます。日本語のPDFをアップロードすれば、そのまま日本語で表示される。また、我々の組み込みエディタも日本語文字を扱うことができます」

image : GetAccept Deal Room

グローバル市場におけるGetAcceptの挑戦

 GetAcceptは近年、2桁以上の成長率で事業を拡大している。また最近では収益性も重視するようになり、直近では数カ月間にわたって黒字化を達成したという。「自社でビジネスをコントロールできるよう、常に資金調達に頼る必要がない状態にしたいと考えています。収益性を持った堅実なビジネスとして、2桁以上の成長を続けていくことが目標です」とSmajic氏は語る。

 地域別で見ると、GetAcceptはオンラインでの契約により50カ国以上にわたって顧客を持つが、人的営業リソースを投入している主要市場は欧州と米国だという。「現在は欧州が60〜65%、残りが米国市場です。米国市場は当初積極的に展開していなかったため規模は小さいですが、現在最も急成長している市場です」

 アジア地域については、「タイや日本など一部の顧客はいますが、まだ主要市場ではありません」と説明する。今後は米国での事業拡大に重点を置き、「2年以内に米国市場の比率を現在の35〜40%から50%以上に引き上げることを目指しています」とSmajic氏は目標を語る。

 今後1〜2年間での達成目標として、Smajic氏は3つのマイルストーンを掲げる。「まず、成長と収益性の両立です。2桁成長を続けながら、黒字を継続すること。次に、欧州以外、特に米国での成長を加速すること。そして3つ目は、新しい収益チャネルの確立です。これまで自社営業に依存してきましたが、パートナーによる販売など、販売チャネルを拡大していきたいと考えています」

 日本企業とのパートナーシップの可能性について質問すると、Smajic氏はCRMコンサルタントとの連携が有効だと答えた。「我々の製品はSalesforce、Microsoft Dynamics、HubSpotなどのCRMシステムと連携しています。こうしたツールのコンサルタントが、顧客の課題解決のためにGetAcceptを推奨するというモデルが効果的に機能しています」

 将来展望として、GetAcceptは「B2B営業におけるビジネス標準」になることを目指している。Smajic氏は、「Google」が検索の代名詞となったように、「B2B営業といえばGetAccept」と言われる存在になりたいと語る。CRMではなく、売り手と買い手をつなぐ外部向けのインターフェースとして、すべての営業現場で活用されるツールを目指しているのだ。

 将来的な日本のパートナーやクライアントへのメッセージを求めると、Smajic氏は次のようにコメントした。

「新しい営業プロセス、売り手と買い手の両方にとって改善される営業体験を探求したいなら、DSRを検討してみてください。もちろん、GetAcceptもその選択肢の一つです。これはB2B営業の未来だと考えています。1年前には競合が3社程度だったこの分野も、今では40社以上に増えています。急速に市場が広がっているということは、確かなニーズがある証拠です。次の一歩を踏み出すなら、今がその時かもしれません」

image : GetAccept

従業員数なし

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