やっぱり「こどものおもちゃ」は面白い 過去の名作をマンガアプリで読み返す時間が私の癒やし
仕事や子育てで忙しく、クタクタな毎日。家事の合間や通勤時間、就寝前のひとときなど、ちょっとした“スキマ時間”に、あなたが楽しんでいる「コンテンツ」はなんですか?
ささやかだけど、自分の毎日に欠かせない「スキマ時間コンテンツ」を教えてもらう本シリーズ。第2回は作家・ライターの土門蘭さんに、マンガアプリで昔好きだった作品を読み返す楽しさと、大人になった今だからこそ改めて気付いた「こどものおもちゃ」の面白さを語ってもらいました。
土門蘭さんプロフィール
・作家・ライターとして働きながら、会社員の夫と一緒に中学2年生の長男(13歳)、小学3年生の次男(8歳)を育てる
・著書に歌画集『100年後あなたもわたしもいない日に』(京都文鳥社)、インタビュー集『経営者の孤独。』(ポプラ社)、小説『戦争と五人の女』(京都文鳥社)、エッセイ集『死ぬまで生きる日記』(生きのびるブックス)などがある
私のスキマ時間コンテンツはマンガアプリで読む「こどものおもちゃ」
子どもの頃から、マンガが大好きでした。
初めて購読したマンガ雑誌は『なかよし』。その後は『りぼん』『ちゃお』『マーガレット』『別冊マーガレット』『少年ジャンプ』と移り変わり、大人になってからは単行本派になりましたが、この頃はマンガアプリにハマり今も毎日読んでいます。
仕事や家事がひと段落した時や、ちょっと気分転換したい時。
「5分だけ休もう」と決めてアプリを開いて、お目当てのマンガが更新されていないか回遊します。大抵の場合、1日1話無料で読み進められるようになっているので、それらを順番に読んでいくのが、多忙な毎日の中のささやかな楽しみです。
以前はSNSや友人の間で話題になっている作品を中心に読んでいたのですが、最近は昔好きだったマンガを読み返すのにハマっています。
矢沢あい先生の「ご近所物語」、多田かおる先生の「イタズラなKiss」、美内すずえ先生の「ガラスの仮面」、神尾葉子先生の「花より男子」、清水玲子先生の「輝夜姫」……などなど、子どもの頃大好きだった作品たち。
中でも最近没頭して読み返したのは、小花美穂先生の「こどものおもちゃ」です。
《画像:(C)小花美穂/集英社》
「こどものおもちゃ」(通称「こどちゃ」)の連載が『りぼん』で始まったのは1994年、私が9歳の時でした。
主人公の紗南ちゃんは、芸能界でも活躍している小学生。クラスメートの羽山という問題児の男子と、ケンカをしたり仲良くなったり、お互いを支え合いながら、少しずつ成長していく物語です。
小花先生のことは、前作「せつないね」や「この手をはなさない」から大好きだったのですが、本作は主人公が自分と同じ小学生ということもあり、特にワクワクしたのを覚えています。
しかもストーリーもちょこちょこ入るギャグも、めちゃくちゃ面白い! 一気に大ファンになり、『りぼん』の応募者全員大サービスでは必ず「こどちゃ」グッズに応募するまでになりました。
そんな「こどちゃ」を読み返して改めて気付いたのは、今読んでも色あせない面白さ。次号の『りぼん』が出るまで何度も何度も読み返した(好き過ぎて時には朗読することもあった)ので、セリフもストーリーもほぼ覚えているはずなのに……。
子どもの頃の熱狂を思い出しつつ、大人になった今新しく分かる面白さもあり、アプリで更新されるのを心待ちにする日々が続きました。
子ども時代は、元気で明るい紗南ちゃんに憧れていました。悪ぶっているけど本当は優しい羽山にもキュンとしたりして。でも大人になってから読んでみると、紗南ちゃんがいかに無理していたか、羽山がいかに傷ついていたか、当時分からなかったことが分かるようになっていて、さまざまなシーンで涙が止まりませんでした。
また、幼い頃「こんなファンキーなお母さんがいたらいいな」と思っていた紗南ちゃんのママ・実紗子さんも、いつの間にか同世代(というか年下)になっていて、彼女の苦労や不器用さにも共感できるように。同じ母親として、こういう時子どもにどう接するべきなのか、一緒に悩みながら読む日が来るとはなぁと感慨深かったです。
「こどちゃ」は一見ドタバタコメディなのですが、実は「家族」の難しさ、人の弱さや愚かさを、かなりシリアスに描いている作品です。今読むと、それぞれのキャラクターが未熟さや闇を抱え葛藤している姿に改めて気づいて驚きます。
「ああ、自分も大人になったんだな」と時間の流れを感じるとともに、「いい作品を好きになったね」と子どもの頃の自分を褒めてやりたくなります。そんな時、まるで子どもの頃の自分が顔を出し、今の私と一緒にマンガを読んでいるような気になるのです。
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どうして、昔読んだ作品をわざわざもう一度読み返すのか。
その理由は単純に「作品が面白いから」もありますが、「昔の気持ちを思い出すから」も大きいように思います。
雑誌の発売日を首を長くして待っている時の気持ち、書店で新しい表紙を見つけたワクワク感、没頭しながら読んで笑ったり泣いたりする時間……。
まだ「社会人」でも「妻」でも「母」でもなかった頃、ただの「私」として純粋にドキドキワクワクしていた気持ちを思い出すと、なんだかすごく癒されるのです。
ほんの少しの間、肩書きを全て下ろして、ただの「私」に戻る。
昔好きだったマンガにもう一度触れる時間は、そんな安らぎを私に与えてくれます。
編集:はてな編集部