世界王者直伝!エリアトラウト勝因になったテクニック!「第4回トラウトエリアワールドチャンピオンシップ」で光った技とは
エリアトラウトの注目度は世界的にも高まり続けている。先日開催された世界大会「第4回トラウトエリアワールドチャンピオンシップ」に出場しチーム総合優勝、個人戦でも準優勝を果たした鈴木将人さんに勝因となった技術を解説してもらった
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写真と文◎編集部
世界大会も開催されるエリアトラウト
トーナメントが盛んなエリアトラウトは、近年、世界大会も開催されるほど国際的な注目を集めている釣りだ。2024年の11月15~16日には、ブルガリア共和国の首都ソフィアから約200㎞北東に位置するヴェリコ・タルノヴォで「第4回トラウトエリアワールドチャンピオンシップ」が開催され、チームジャパンが見事に総合優勝を果たした。チームジャパンの代表選手として同大会に出場したのは、荒川通さん、鈴木将人さん、伊藤雄大さん、土屋綾介さんといった国内トーナメントでも輝かしい実績を持つトップアングラーたち。個人成績では荒川さんが総合優勝、鈴木さんがわずか1ポイント差で準優勝という快挙を成し遂げた。試合中、日本人選手の周囲にはその高度な技術を自分たちのものにしようと多くのギャラリーが集まり人だかりができたという。今回、鈴木さんに大会で実践した釣り方を披露してもらう機会を得た。鈴木さんが勝利を重ねるなかで大きく貢献したのがスプーンとミノーを駆使した釣りだった。この日、鈴木さんが訪れたのは滋賀県・高島市にあるフィッシングパーク高島の泉。湧き水を水源とした透明度の高いエリアで、滋賀県在住の鈴木さんにとってホームのひとつだ。ルアーメーカー勤務で選手としても著名な鈴木さんは、ルアーのテストなどの仕事やロケなども含めると年間150日は高島の泉をはじめとする全国各地のエリアに足を運んでいる。そんな鈴木さんだが、プライベートの釣りでは毎回、苦手な釣りを練習する意識で釣行しているという。「トーナメントで負けるときは、自分の苦手な釣りが効いてしまう状況のときです。そんな試合後は対戦相手の釣りを聞いて、自分の釣りの引き出しにできるよう練習します。最近ではミノーの釣りをしっかりやり込まないと勝てないと痛感して、これを練習してきました。この釣りがブルガリアでも勝因のひとつになりました」ここで言うミノーの釣りとは、トーナメントでも勝利にからむ場面が多い、ミノーの浮上で食わせるパターン。この釣りも後ほど詳しく教えてもらうとして、日本人選手と他国の選手で差がついたのはなんだったのか。
精度の高いレンジ合わせで差がつく
「レンジ合わせが苦手なのかな? と思いました」とは対戦した他国選手に対する鈴木さんの印象。「初日の何試合かは活性の高い魚が残っていて、反応するレンジに入れることさえできれば、スプーンで手返しよく釣っていくことができました。対戦相手はプラグを使っている人が多かったのですが、手返しのぶん13対3で圧倒できた試合もありました。2日目はミノーにシフトしましたが、これもどのくらい潜らせてから浮かせるか、レンジを掴めているかどうかで差がついていました」スプーンのレンジ合わせはカウントダウンで水深を測り、ボトムから巻き上げながらアタリを感じたら再びカウントダウンでボトムをとる、というのが基本となる。つまり、ボトムまで5カウントの場所で、アタリがあった層からボトムまでが3カウントなら、水面から2カウントのレンジで魚が反応していることになる。トーナメントへ出場している手練れであれば、次のキャストでは2カウントのレンジへダイレクトにスプーンを通して一定のレンジを引き続けることもできる。「ただそれには練習が必要です。まず足もとで手持ちのスプーンを泳がせてみて、沈みも浮き上がりもしないスピードを覚えてください。それが難しいうちは、ボトムをとってからの巻き上げを続けてもいいです。はじめは、そのほうが反応のあるレンジを長く通せると思います」スプーンのレンジ合わせはエリアトラウトでは基本となるテクニックとされる。だが、その基本を精度高く実践することがライバルとの差になるということだろう。
浮上系ミノーでもレンジ合わせは重要
大会2日目に多くの試合で勝利に貢献したのが、冒頭にも紹介したミノーの釣り。初日はスプーンをメインに勝ち進んだ鈴木さんが、なぜミノーに手を伸ばしたのか。「初日にミノーで釣果を上げている選手をちらほら見かけていたのですが、それが勝ちにつながり得るパターンになりそうだと確信したのは、2日目の放流を見たからですね。初日と比べて魚のサイズが小さくなってそのぶん尾数が多くなりました。この釣りは魚の密度が高いほど反応がよくなるので」その理由は魚の競争本能でスイッチが入る釣りだからだろう。そんなミノーの釣りでも反応するレンジを的確に探っていくことが重要だった。この釣りはジャークでミノーを潜らせてから浮上で誘う。ジャークを何回加えるかによってねらえるレンジが変わる。ミノーやクランクなどのプラグの釣りで、そのルアーが一定のレンジを泳ぎ続けるよりも強い力でルアーを引いて潜らせていくことを、エリアトラウトの手練れたちは「グリ」と表現する。ミノーの釣りではロッドワークで強めにルアーを引くジャークが「グリ」となる。大会2日目の早い時間帯は7回ジャークして(7グリ)潜らせてからの浮上で反応があり、暖かくなってからは5グリからの浮上で釣れ続けたという。実はこのレンジを探り当てる前は前日にスプーンで釣れていたレンジ(3グリに相当)でようすを見たそうだが、ミノーには反応がなく、さらに深く潜らせたところ釣果につながった格好だ。その理由を鈴木さんはこう考察する。「スプーンは魚を引っ張りやすいルアーで、下のレンジの魚も食い上げてくることがあります。ミノーの浮上による誘いはスプーンに比べてアピール力が弱く、レンジ合わせがジャストでできないと反応させにくい面があります」こういったレンジの微調整もライバルと差が付く一因だったのだろう。
優しいジャークで差がついた
操作面でも海外勢と違いがあったという。「海外の選手はジャークが激しすぎるように感じました。この釣りはイト鳴りなどで魚をスレさせやすいデメリットがあるので、それによってもバイト数に差が出たように思います」ロッドワークによる操作はミノーを潜らせるためのもので、激しく動かして魚の興味を惹こうと意図するものではない。鈴木さんのジャークを見せてもらうと、ミノーが受ける水の抵抗を、ロッドのベリーで優しく受け止める感じのもので、ティップの振れ幅は20㎝あるかどうか。下に向けているティップは水面についているが、水しぶきは上がっていなかった。さてこの日の高島の泉もレイゲンのジャークからの浮上で好反応が見られた。水面下20~30㎝くらいまで浮かせたところでバイトが出たり、水面に浮き切るかどうかまでいかないとバイトに至らなかったりと、時間帯によって変化する反応の仕方がみてとれるのがクリアレイクの面白さだ。これが濁ったレイクでも起きているからレンジ合わせが釣果を伸ばすうえでいかに重要かが理解できる。さらに、浮上のスピードでも反応が変わる。ルアーごとに決まった浮力をもつプラグ。フックを交換したりシールになっているオモリを貼ったりして浮上スピードを調整することがあるが、鈴木さんは浮上時のラインのテンションで浮上スピードを微調整していた。テンションを完全に抜けばルアー本来の浮力で浮上する。一方でテンションを掛けながら浮かせればそのスピードを押さえることができる。エリアトラウトの競技は、日々進化し続けるアングラーたちの技術が集約されている。今回の鈴木さんの解説をヒントに、自分の釣りに磨きをかけてみてほしい。きっと手にできる魚が増えるはずだ。
取材当日のタックル
左・ペピーノ用
ロッド:T-CONNECTION AREA TCA-S55LML-ST(ジャッカル)
リール:ステラC2000S(シマノ)
ライン:スーパートラウトエリアES2 エステル0.25 号(バリバス)
リーダー:トラウトショックリーダー0.6 号(バリバス)
右・TC レイゲン用
ロッド:T-CONNECTION AREA TCA-S61ML(ジャッカル)
リール:ステラC2000S(シマノ)
ライン:RC マイスターエステル0.35 号(ロデオクラフト)
リーダー:トラウトショックリーダー0.8 号(バリバス)
左・リクーゼ0.6g 用
ロッド:T-CONNECTION AREA TCA-S60SUL-E(ジャッカル)
リール:ステラC2000S(シマノ)
ライン:スーパートラウトエリアES2 エステル0.25 号(バリバス)
リーダー:トラウトショックリーダー0.5 号(バリバス)
右・ティアロ用
ロッド:T-CONNECTION AREA TCA-S60UL-E(ジャッカル)
リール:ステラC2000S(シマノ)
ライン:スーパートラウトエリアES2 エステル0.25 号(バリバス)
リーダー:トラウトショックリーダー0.5 号(バリバス)
ミノーはTC レイゲンDRを使用。この日反応がよかったカラーは、上からシルバーカドチップ、CT ペレット2 号、No.6。下はニョロ系クランクのペピーノDRSS でボトムをスローに巻いて使った。写真はブルガリア用に塗ったグローベースのオレンジカラー
この日反応がよかったスプーン。上、ティアロ1.6g。下、リクーゼ0.6g