台所から始まる発電 。コーヒーも生ごみも、燃やさずエネルギーに。
今日は、自宅でドリップするコーヒーのお話です。と言っても、主役はコーヒーではなく、淹れ終わったあとの「かす」です。
「コーヒーのかす、下水に流して」と市民に呼びかけている唯一の自治体
普段、ゴミ箱にポイっと捨ててしまう人が多い「コーヒーのかす」について、富山県の黒部市が、「ちょっと変わった呼びかけ」を始めて話題になっています。黒部市役所の柳田 英昭さんに聞きました。
黒部市役所 柳田 英昭さん
「コーヒーかすは下水へ」という呼びかけをしているところです。ご家庭で出される、おうちで飲むときに出てくるコーヒーカス。普通であれば「燃えるゴミ」で出されるかと思うんですが、もうそのままおうちの水道にそのまま流してくださいという呼びかけですね。豆、あのカス自体は非常に小さいものですので、普通に下水に流されても、今まで詰まったっていうお話はないですね。ディスポーザーはついていなくても、そのまま流してもらって大丈夫です。多分、全国で唯一ではないかなと考えております。
コーヒー粕は下水へ(黒部市役所HPより)黒部市以外は流せないので注意!
黒部市では「積極的に流してください」と公式に呼びかけています。
黒部市だけの取り組みなので、ほかの地域の方は以外の方はマネしないでください。
では、この「コーヒーのかす」はその後どうなるのかというと、まず下水管を通って市の下水処理施設に集まります。この施設には、毎日、生活排水などによって出た泥のような「汚泥」が溜まっていますが、ここで「汚泥」と「コーヒーのかす」を混ぜて発酵させるんです。
このとき重要な役割を果たすのが、目に見えない小さな「微生物」。実は、この微生物が汚泥とコーヒーかすをエサにして、「バイオガス」というガスを出します。このバイオガスを燃やすことで「電気」を作ることができる、という仕組みなんです。
コーヒーのかすは、微生物の「大好物」だった!
実際にここで作られた電気は、市内の工場などで使われているということですが、でも、そもそもなぜ、「コーヒーのかす」なのか?その理由について、施設を運営する特別目的会社「黒部Eサービス」の社長、大矢 佳司さんに聞きました。
特別目的会社「黒部Eサービス」社長 大矢 佳司さん
まず「コーヒーかす」は、ガスの量としては、「下水汚泥の約10倍出る」っていうふうに見ています。コーヒーかすって豆ですけども、豆類って結構、「油」が含んでますよね。あれが原料としては有効になってます。
ただ、ドリップした後のジャリジャリのコーヒーかすのまんまですと、微生物がうまく分解できない。それを石臼状の、すりごまを作るような機械ですりつぶしてあげると、食べられるようになるので、メタンガスがいっぱい出ると。
しかも「下水道管を使って集める」ということは、車で運ぶという輸送の手間もコストも、それからガソリンもかからないと、いうことからすると、「これってめっちゃSDGsじゃん!」っていうことを考えて、提案したという。
コーヒーのかすは、微生物にとって「美味しいエサ」。効率よくガスを生み出せるそうです。
ただ、この仕組みが実現した背景には、黒部市ならではの事情もあります。元々富山県内に、大手飲料メーカーの工場があって、コーヒーかすを電気に変える仕組みはできてたこと。さらに、市の下水処理施設には、「かす」をすり潰す特殊な機械も導入されていて、下水管も少し太めに作られていたため、台所から流しても問題がないそうです。
「生ごみ」がマンションを照らす電気に変わる仕組み
「ゴミ捨ての手間もない」、しかも「電気に変わる!」と一石二鳥ですが、調べてみると、黒部市以外にも「ゴミを電気に変える」仕組み、ありました。しかも対象は「コーヒーかす」だけでなく、生ごみなどの「台所のごみ全般」で、さらに驚くことにたった一棟の「マンション」の中で完結するんです。
この技術を開発したのは大手住宅メーカーの大和ハウス工業。詳しいお話を、マンション技術部の瀬口 和彦さんに伺いました。
大和ハウス工業・マンション技術部 瀬口 和彦さん
マンションにですね、設置されているキッチンのディスポーザー=ディスポーザーっていうのは、生ごみの粉砕機ですけれども、を利用して、「生ごみ」からガスを抽出して、小型の発電機で発電するというシステムになっております。
作った電気は、廊下ですとか、エントランスホールですとか、エレベーターとか、いろんな共用部分っていうのがあるんですけれども、そちらの方に作った電気は供給していくということになります。照明器具ですね、「電気」になるということですね。
食べ残しは活用されていませんので、実はもうもったいないことをしていたと、今まで。それをうまく活用することで、「実はエネルギーになりますよ」というのが、今回の仕組みということになりますね。
これはディスポーザーが設置されているマンションが対象なんですが、台所で流した「生ごみ」から「電気」を生み出して、廊下のライトを光らせよう!というもの。
10階建てぐらいのマンションの場合、共用部分で使われる電気の20%程度を、生ごみで作れるようになります。早くて2~3年のうちに、新たに建設される2棟のマンションに導入が決まっているそうです。
「電気代」の節約にもなるということなんですが、これまでは燃やしたり、埋め立てたりするのが当たり前でしたが、こうやって日常の小さなゴミも、貴重なエネルギーになる時代になっています。
(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)