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プッチーニが描いた究極の愛と犠牲『トゥーランドット』、世界観を余すところなく描き出すアンドレイ・セルバンの演出に注目~「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25」

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ロイヤル・オペラ《トゥーランドット》

■プッチーニ没後100年の節目に蘇る『トゥーランドット』、重厚な舞台美と音楽が映し出す、アンドレイ・セルバン演出の傑作

英国はロンドンのコヴェント・ガーデン、「ロイヤル・バレエ&オペラ(RBO)」で上演された、ロイヤル・オペラ、ロイヤル・バレエ団による世界最高峰のオペラとバレエを、特別映像を交えて映画館上映する「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。今シーズンも全10作品<バレエ6作品/オペラ4作品>を各1週間限定で全国公開する。ライブでの観劇の魅力とは一味違う、映画館の大スクリーンと迫力ある音響で、日本にいながらにして最高峰のオペラとバレエの公演を堪能できる至極の体験を味わえる。

2025年6月6日(金)からは、プッチーニ没後100年の節目に甦るオペラ『トゥーランドット』(アンドレイ・セルバン演出)が、TOHOシネマズ日本橋ほか全国で1週間限定公開される。本作の見どころを、オペラ・キュレーター、井内美香氏の解説とともに紹介する。

アンドレイ・セルバン演出の『トゥーランドット』は、1984年初演の英国ロイヤル・オペラ最古のプロダクションとして、長年にわたり愛され続けている。初演キャストにはプラシド・ドミンゴ、ギネス・ジョーンズという伝説的歌手が名を連ね、1986年の日本公演でも大きな話題を呼んだ。

井内氏は、セルバン演出の魅力について、「《トゥーランドット》の世界観を余すところなく描き出す点にあります」と語る。本作では、古の中国を彷彿とさせる美術セットと、舞台を囲む木製ギャラリーによって圧倒的な世界観が構築されている。また、ケイト・フラットによる太極拳風の振付や、照明・スモークを駆使した演出がドラマ性を高めており、「音響的にも演劇的にも理想の空間を作り出しています」と高く評価している。さらに、井内氏はシネマ版ならでは特典である関係者インタビューについても触れ、「初演時の振付家ケイト・フラットが演出について語る貴重な映像は必見です」と推薦している。

また、実力派キャストたちのアンサンブルにも注目が集まる。トゥーランドット姫を演じるソンドラ・ラドヴァノフスキーについて、井内氏は「彼女の歌唱は圧巻の一言」と述べており、第2幕のアリアから第3幕にかけて、苦悩と愛情を鮮やかに表現するドラマ性と歌唱力で観客を圧倒している。カラフを演じるソクジョン・ベクについては、「ベクの声は「誰も寝てはならぬ」を歌うためにあるのでは、と思わせる素晴らしさです」と絶賛しており、ラドヴァノフスキーに引けを取らない存在感を見せている。リューを演じるジェマ・サマーフィールドもまた、音楽性豊かな歌唱で観客を魅了している。

また、セルバン演出では特にピン・パン・ポンの3人が特に重要な役割を担っている。井内氏は「音楽的にも重要なパートを受け持つ彼らは、躍動的な動きを見せる一方、故郷を懐かしむ場面などでは、人間味あふれる一面を見せてくれます」と語り、彼らの人間性を描き出す演出の妙にも注目している。

そして、井内氏は『トゥーランドット』の本質的な魅力として、プッチーニが生み出したリューの存在を挙げている。彼女の死後の展開には意見が分かれるが、「セルバン演出の舞台を観ていると、最後に彼が見せるリューの存在が、ドラマの核心をついたものだと納得させられます」と語り、「数多くの葛藤を抱えながら生きる現代の人々こそ、プッチーニの音楽をこの上ない形で表現したこの舞台を、ぜひ体験していただきたいです。」とメッセージを送っている。

劇場とは異なる視点から作品の魅力を再発見できる絶好の機会となる、シネマ版『トゥーランドット』をぜひ劇場でお楽しみください。

※井内美香氏(オペラ・キュレーター)による『トゥーランドット』解説全文は下記↓URLにて閲覧可能です。

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