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「引っ越したくない」ストレスからかチックも出た小2発達グレー息子が「新しい学校が楽しくなってきた」と言うまで

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「引っ越したくない」ストレスからかチックも出た小2発達グレー息子が「新しい学校が楽しくなってきた」と言うまで

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

「引っ越ししたくない」落ち込む姿に……

発達障害グレーゾーンの次男ゆうきは小学2年生。通常学級に在籍しています。発語が遅く、3歳の誕生日頃に話したいスイッチがオン。言葉が出始めたら一気に出ました。小さい頃から不安がとても強く、極度の負けず嫌い。自分の好きな話(恐竜やゲームなど)を一方的に人に話すことが多い男の子です。

ゆうきは同年代のお友だちに慣れるまでにとても時間がかかります。1年生の3学期に入った頃にようやく、クラスのお友だちに慣れてきて、お話をしたり一緒に遊んだりする姿を見かけるようになりました。

しかし、2年生になるタイミングで、夫の仕事の都合により、引っ越しすることに。あらかじめ「引っ越しするかもしれない」と伝えていたのですが、「僕は引っ越ししたくないよ。お友だちと離れるのが嫌だ」と、とてもさみしそうにしていました。

引っ越しが決定後、しばらく落ち込んでいる様子だったので、引っ越し先にある、ゆうきの好きそうな公園や動物園、博物館などをインターネットで一緒に調べてみました。楽しみができて、少し引っ越しすることを受け入れるようになった気がします。

転校先では通常学級?特別支援学級?

転校前は通常学級に在籍していたゆうき。クラスで困りごとがなく過ごせていた訳ではありません。苦手な図工の途中で「僕はできません」と、全くつくろうとしなくなったことが何度かありました。担任の先生やサポートの先生が、ほぼ全部の行程を付き添ってくださり、何とか作品を仕上げられたようです。

ゆうきは1年生の2学期から通級指導教室を利用していました。転校することが決まると、通級指導教室の担当の先生が、転校先の学校に電話をしてくださり、学校の詳しい状況を聞いてくださいました。

転校する学校は1クラスの人数が多く、サポートの先生はいません。ゆうきが授業中に「僕はやりません」となってしまうと、担任の先生は授業を進めていかないといけないので、サポートをするのは難しいだろうとのことでした。

年少の時からゆうきを支援していただいている保育所等訪問支援の方にも相談すると「もしかしたら新しい地域の制度次第では、特別支援学級に在籍した方が、ゆうきくんに合っている可能性があるので、それも含めて市役所などにあらかじめ相談してみてもいいかもしれませんね」とのこと。私もそう思い、引っ越し先の市役所に電話をしてみました。

すると、その地域ではもともと通常学級に在籍していた子は、必ず通常学級に在籍することが決まっているそうです。もしも特別支援学級を希望する場合は、転校したのち、担任の先生に相談し、市に教育相談を申請する流れとのことでした(地域によって制度は異なるようです)。

ということで、転校するタイミングで特別支援学級に在籍するという選択肢はなくなり、ゆうきは通常学級の在籍が決定しました。

チック……そして転校初日に威嚇!?

3月の中頃から、引っ越しが近づくにつれ、ゆうきの身体に変化が。「あ、あ……」や「う……う……」というような声を出したり、歩いている時に急に止まってトントンと足踏みをするチックが出始めたりしたのです。ゆうきは、新学期、行事が続く秋頃、長期で外出することが多い年末年始になると、こういうチックが出てきます。

予想はしていましたが、「新生活を不安に思っているんだなー」と確信。ゆうきは不安な時期が過ぎると自然にチックはなくなっていくので、様子をみることにしました。

そして4月、遂に引っ越し&転校!初日は親が見学することができました。すると、教室で先生がゆうきの紹介を始めた時、ゆうきは恐竜が敵を威嚇する「ガオー」という顔を作り、クラスのみんなを睨み始めたのです。

ゆうきは昔から情緒が不安定になったり緊張したりすると、恐竜になりきるということをします。転校初日だったので、きっと緊張している中で自分の不安をかき消す行動だったと思うのですが、クラスのお友だちはポカンと驚いた様子でした。

4月、5月に、挨拶などでお友だちに話しかけられている様子をみることが何度かありましたが、ゆうきは顔をこわばらせ、無視して友だちの前を通り過ぎました。「今の子は同じクラスのお友だち?」と質問すると「そうだよ」と教えてくれるので、その子を知らないわけではないようでした。

新生活になれ始め、チックもおさまった現在

新生活が始まると「今日はどこで待ち合わせ?学校の後はどこか行くの?」と、しばらくの間は質問が多かったゆうき。何となくの1週間の流れが決まってきた5月後半頃にはそういう質問をしてくることが減ってきました。

そして、「ママ、ボク、新しい学校が楽しくなってきたよ」と言ってきました。その頃は、お友だちが挨拶してくれると、顔はこわばったままですが「バイバイ」と声をだすことも出てきました。声のチックは4月終わり頃になくなり、トントン足踏みをするチックは5月後半くらいになくなりました。

まだまだ新生活は始まったばかり!この先、通級指導教室や保育所等訪問支援の利用、または特別支援学級への転籍……など、地域の制度とゆうきの困りごとを考えながら、担任の先生や病院の先生など、いろいろな方に相談させていただきながら考えていけたらと思っています。

執筆/ゆきみ

(監修:初川先生より)
転校にまつわる次男ゆうきくんの不安に関してのエピソードをありがとうございます。初めてのことや慣れていないことに対して不安が高くなるお子さんは多いですが、転校はその中でもなかなかの変化の大きさなのでゆうきくんの不安もかなり高くなったことだろうと感じます。大人にとっては転勤による転居は仕方ないと割り切ってどうにか納得できることが多いと思いますが、子どもたちにとってはなかなかそう割り切れない思いもあるでしょう。転校に対して、慣れ親しんだ友だちと毎日会える環境ではなくなるけれど、友だちでなくなるわけではないから、これまでのお友だちとこれからできるお友だちとで友だちが二倍になるってことだよと説明することもありますが、そうした理解ができるほどの心持ちになれない場合も多かろうと思います。

チックが出たり、ゆうきくん独特の不安の表し方である“恐竜になりきる”様子があったり。不安な気持ちと戦いつつも、どうにかその場にいて、頑張ろうとしていたことが感じられますね。不安に対しては、慣れていく中で「あぁ大丈夫だった、怖いことはなかった、よかった」を積み重ねていくことで安心を獲得し、不安が低減していきます。ゆうきくんは4月に転入して、5月後半には新しい環境に慣れてきたとのこと、何よりです。新しい環境でのゆうきくんにとっての支援はこれからなのですね。よき支援者と出会い地域のリソースを活用しながら、安心して子育てができるといいなと願います。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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