「コンプライアンス違反」倒産、過去最多の300件超 雇調金等の不正受給で倒産に至るケースも急増
東京商工リサーチ(東京都千代田区)は4月4日、2024年度の「コンプライアンス違反」倒産に関する調査結果を公表し、過去最多の317件(前年度比35.4%増)に達したと明かした。前年度の234件から1.3倍増と大幅に増え、初めて300件を超えたとしている。
「コンプライアンス違反」倒産、コロナ禍を経て増勢を強める
倒産の内訳は、税金滞納などの税金関連が172件(前年度38.7%増)、雇用調整助成金などの不正受給が42件(同75.0%増)、粉飾決算が21件(同10.5%増)で、それぞれ増勢が目立った。
同社は、コロナ禍が落ち着いた2023年度以降、コンプライアンス倒産が増えていると分析。経営難などの中小企業の改善が遅れる一方、事業再生が本番を迎える2025年度はさらに倒産が増加する可能性が高まっているという。
コロナ禍前の2017年度の倒産件数は211件で、コロナ禍は資金繰り支援策が奏功して2020年度は93件、2021年度は107件、2022年度は116件と100件前後の低水準で推移した。
しかし、コロナ禍が落ち着いた2023年度は税金関連の倒産が124件、不正受給が24件など、支援策の終了・縮小に伴って、234件と一気に増加。2024年度は公租公課の滞納への徴収が厳格さを増した税金関連が約1.4倍増の172件など、全体で増勢を強め、過去最多の317件に増えたという。
雇調金等の不正受給で倒産に至るケースも急増
また、東京商工リサーチは4月5日、雇用調整助成金等(以下、雇調金等)の不正受給に関するレポートを発表した。
コロナ禍で休業や営業縮小を余儀なくされた事業主に対し、従業員の雇用を維持するための雇調金等の不正受給が相次いで発覚しているという。不正受給額100万円超の悪質な事業所名は、各都道府県労働局が社名を公表している。
同社が2025年2月末までに集計した全国の公表数は1620件。このうち、倒産した企業は2月末までで92社で、不正受給した企業の5.6%を占める。これは2024年の全企業の倒産発生率0.19%の29.4倍と異常に上昇しているという。
倒産に至る経緯は、雇調金等の不正受給発覚がダメ押しするケースが少なくないと同社は分析。不正受給した助成金の返還に加え、延滞金の納付や取引先からの信用失墜などで金融機関の信用も失い、資金繰りに窮する企業が多いとしている。
東京商工リサーチの調査の詳細は同社公式サイトで確認できる。
雇調金等の不正受給についてのレポートは同社公式サイトで確認できる。