『ライオン・キング:ムファサ』監督、「前日譚なんてうまくいかない」と断りかけていた ─ 「脚本5ページだけ読む」つもりが止まらず「これはいいぞ」
「『ライオン・キング』の前日譚なんて、うまくいくはずがない」──。若き日のムファサとスカーを描く、超実写版『ライオン・キング:ムファサ』のバリー・ジェンキンス監督も、当初はそのように考えてオファーを断ろうとしていたという。英にて明かした。
本作は、ディズニーの誇る名作アニメーション『ライオン・キング』(1994)に基づく超実写版『ライオン・キング』(2019)から派生した最新作。しかし『ムーンライト』(2016)でアカデミー賞に輝いたジェンキンスがこの映画を手がけるとは、映画ファンや批評家がまるで予想しなかった展開だった。2020年、コロナ禍のさなかにオファーを受けた監督自身もそのように思っていたという。
「エージェントから電話があって、“ディズニーから企画が送られてきています、『ライオン・キング』の前日譚です”と。僕の答えは、“いやいや、それは無理でしょ”でした。まだ脚本すら読んでいなかったんですけどね。」
考えが変わったのは、オファーを断ろうとしたところ、パートナーである『フェアウェル』(2019)のルル・ワン監督から、ひとまず脚本を読むように薦められたことだったという。
「5ページ読もうと思ったんですが、45ページくらい読んで、“えっ、これはいいぞ”と彼女に言い、翌日には読み終わりました。『ライオン・キング』をよく知る人間として、自分が知っていると思い込んでいたこと、登場人物やテーマについて決まりきっていると思っていたことの多さにショックを受けたんです。それらの多くを取り払っていること、自分の作品との共通点がたくさんあったことにも驚かされました。」
本作はシンバが王になるよりもはるか昔、父のムファサ王と、悪役スカー(タカ)の知られざる物語。孤児だったムファサと、純粋無垢な王子タカは、血のつながりを越えて兄弟の絆で結ばれ、冷酷なライオンから群れを守るための旅に出るが、そこで運命を分かつ出来事が……。脚本は、デイジー・リドリー主演の伝記映画『ヤング・ウーマン・アンド・シー』(2024)も高く評価されたジェフ・ナサンソンが執筆した。
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ジェンキンスは、自身がこれまで手がけてきた作品と『ライオン・キング:ムファサ』の共通点は「兄弟の絆、血縁によらない家族、憧れ、コミュニティ、ある意味でのレガシー」だという。「それから登場人物たちによって語られたり、あるいは語られなかったりする、本当に深いもの」。
こうしてオファーを引き受けたジェンキンスだが、大きなインスピレーションを得たのは、オリジナル版『ライオン・キング』でスカー役を演じたジェレミー・アイアンズの演技だったという。
「(オリジナル版は)若い観客のために作られた映画なので、明確な教訓を与えようとする意図があります。非常に二元論的で、善と悪があり、白と黒があるという発想。けれどもジェレミーの演技を聴くと、そこに心の痛みや傷があることがよくわかる。憎しみには歴史と深みがあるということが。そのときに、“前日譚を作るうえで、ここを頼りにすればいいんだ”と思いました。」
若きムファサ役は「地下鉄道~自由への旅路~」(2021)でもジェンキンスとタッグを組んだアーロン・ピエール、タカ/スカー役は『シラノ』(2021)のケルヴィン・ハリソン・Jr.。若きサラビ役をティファニー・ブーン、ライオンのキロス役をマッツ・ミケルセンが演じるほか、前作からシンバ役のドナルド・グローバー、ナラ役をビヨンセ・ノウルズ=カーターが続投する。シンバとナラの娘キアラ役には、ビヨンセの愛娘ブルー・アイビー・カーターが起用された。
映画『ライオン・キング:ムファサ』は2024年12月20日(金)劇場公開。
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