ティップランエギング入門解説 【タックル・エギ・釣り方・イカの持ち帰り方を解説】
9月に入ってにわかに盛り上がりを見せているアオリイカ。日本海の遊漁船でも、マイカよりアオリイカの釣果情報が目立つようになってきた。そこで今回は大人気のティップランエギングについて、基礎から紹介してみたい。
アオリイカシーズン到来
オフショアエギングの代名詞ともいえるほど人気のティップラン。かつては浅場で船を流して、陸っぱりと同じようにキャスティングでアオリイカを狙っていたが、手つかずの深場を攻められるので、一気に釣果が伸びて人気に火がついた。
そう、この釣法はキャスティングでは手を出せなかった水深20m以深を、重い専用のエギを使って攻略することができる。したがってタックルやエギが、陸っぱりやイカダで使うものとはガラッと変わる。
ティップランとは
前述の通り、深場を攻めるティップランは船をドテラ流しにして、船が流れる逆方向に釣り座を取り、真下にエギを落とす。ドテラ流しとは、船を風や潮に任せて横向きに流す流し方。船はアングラーの背中方向に流れることになる。
したがって真下にエギを落とすと、アングラーの背中方向に船が流れるわけだから、ラインは前方に払い出されることになる。そしてこの釣りの絶対条件として、ボトムを確実に取ることが挙げられる。でないと船が常に流れているので、延々とラインが出続けてしまうことになるのだ。
この釣りのメリットは前述の通り深場を攻めることができることと、広範囲を探れること。船が流れ続ける限り、そのトレースライン全てを探れるのだ。
その名の通り、ロッドティップ(穂先)でアタリを取る。キャスティングでは手に伝わる違和感やラインの動きでアタリを取るのだが、ティップランはティップの動きだけでアタリを取るのが特徴だ。
タックル
ロッドは必ず専用のものを用意しよう。TR仕様となっているものを選べば問題ない。専用ロッドの特徴は、やはりその繊細なティップ。ここでアタリを取るので、非常に細くセンシティブに作られている。
ティップの部分だけカーボンソリッド素材というロッドが多いようだが、メーカーによってはさらに高感度のメタル素材を使われていることもある。
そしてアワせたときに深い場所にいるアオリイカにしっかりカンナが刺さるよう、強いバットパワーが必要となる。そして重量級のエギをシャクるので、しっかりグリップとひじに当てられるようグリップエンドは長めに作られている。
長さは7ft台が多いが、最近では6ft未満のショートロッドも増えてきた。狭い船上で取り回しがいいし、長いロッドよりも感度が上がる。そしてシャクったときのアングラーへの負担も少ない。ショートロッドのデメリットとしては、タメが利かないのでバラシが多いこと。
リールは陸っぱりと同じく、2500番クラスのスピニングリール。ハイギアかパワーギアかは好みによるところが大きいが、個人的には回収が早いハイギアが使いやすいと思っている。
ラインはPEライン0.6号。現在は8本組みが主流になっており、イト鳴りが少なく使いやすいものが多い。長さは150m以上巻いておこう。リーダーは擦れに強いフロロカーボンライン2号を1.5~2mほど取る。
エギ
エギはティップラン専用エギ。通常の3.5号のエギは20~23gが多いが、専用エギは軽くても30g。大きさは3.5号をメイン。今では3号や2.5号サイズの小さな専用エギも発売されているが、小さなエギ=小型イカが基本図式となる。あまり小さなエギは、アピール不足の面からもお勧めできない。
カラーは基本のピンク系、オレンジ系の他、オリーブやブラウンなどのナチュラル系、そして三重県方面で欠かせないのが、パープル系だ。
また風が強くて船の流れるスピードが速い場合、底取りが難しくなる。そんなときのために、ウェイトアップシンカーも用意しておこう。重さは10~50gまで。例えば船長からエギのウェイト60gで……と言われた場合、エギ30g+シンカー30gとなる。これは風や潮の強さで使い分けるので、さまざまな重さのシンカーをそろえておきたい。
その他に用意するもの
まず膨張式ライフジャケットは必須。必ず桜マークのついたものを装着しよう。帽子と偏光グラスも必要だ。特に帽子は頭の安全を考えれば、必ずかぶっておきたい。
足元はサンダルであれば、グリップ機能の高い滑りにくいものを履こう。釣具店に行けば、船上用のサンダルを売っている。少し値は張るが、安全面を考えれば妥協するところではない。
そして手ふきタオル数枚、クーラーボックスなど。エギやリーダー、スナップなどはケースに入れて、ドカットやバケットマウスに入れて船に持ち込む。
釣り方
実釣だが、まずエギを真下に落とし確実にボトムを取る。これをしっかり行うには、出ていくラインの動きに集中すること。放出されるラインが一瞬止まったり、出る速度が遅くなったりすれば着底の合図だ。
着底を確認したら、素早くリールのベールを返し、細かくストロークの短いシャクリを3~8回入れる。そしてピタッとステイ。このステイさせてから、5秒以内にアタリが出ることが圧倒的に多い。
注意したいのが、シャクリからステイに移る際に、不自然にエギをフォールさせてしまうこと。シャクリを入れた瞬間は、ティップは最上点にあるがここで止める。ここでスッとティップを下げると、エギが最後に沈み込んでイカが警戒心を抱いてしまう。
注意すべきは、シャクリを入れるときのティップのスタート点と最上点。できるだけティップを下げた状態からシャクると、最上点にきたときにちょうど見やすい位置になるように調整するのだ。
これが最上点が自分の目線より高いと、どうしてもステイに移行するときにティップを下げてしまう。こうなるとエギが不自然に沈み込んで、ヒット率がガクンと落ちてしまう。
アタリ&取り込み
アタリの出方はさまざま。ティップがクイッと引き込まれたり、コツンとたたかれたり、フワフワ揺れたり。中でも特徴的なのが曲がり込んでいるティップのテンションが抜けて、フワッと戻るアタリ。これはイカがエギを抱いて手前に泳いでくるため、テンションが抜けてティップの曲がりが戻ってしまう。
アタリが出れば即アワセが基本。ズシッと乗ったら強引に巻かず、一定の速度でリールを巻き取る。ポンピングはNG。エギのカンナはカエシがないので、テンションが抜けるとバレてしまうためだ。
もしアタリが出て掛からなくても、再度底まで落とし込んで同じ回数シャクり上げてくる。カンナに触っていなければ、再び抱いてくることもある。
取り込みはサイズが良ければ、船長にタモ入れしてもらう。抜き上げられそうなら、リーダーを持ってそっと抜き上げよう。イカは刺激を与えないようそっとバケツかイケスに入れる。もしスミを吐かれてデッキが汚れてしまったら、バケツの海水で乾く前に洗い流そう。乾くとスミの汚れは取れなくなる。
持ち帰り
釣ったアオリイカはジッパー付きの袋に入れ、しっかり冷やして持ち帰ろう。注意したいのは、氷に直接当てないこと。冷やしすぎるとイカが白くなるし、真水がイカの表面に触れると浸透圧の関係でブヨブヨになってしまう。
マイカやスルメイカも同じで、よくトレイにきれいに並べてクーラーに収納しているシーンを見たことがあるかと思う。あのトレイも効率よく冷やし、なおかつ氷が溶けた水に当たらない工夫なのだ。もちろんアオリイカも同じようにトレイに並べてもいいが、そこまでは……という人はジッパー付きの袋で十分だ。
<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース版』2024年月日号に掲載された記事を再編集したものになります。