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ジェームズ・ボンドの愛した時計

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ジェームズ・ボンドの愛した時計

独創的な機械式時計から革新的なデジタルまで、007が愛した時計の数々を紹介しよう。

bychristian baker

 ジェームズ・ボンドが乗り回した素晴らしいクルマのリストは、われわれ男性を虜にする。しかし残念なことに、1963年製のアストンマーティンDB5は、私たちのほとんどにとって、永遠に手の届かない存在だ。しかし、英国で最も有名なスーパースパイの愛用品でも、腕時計なら所有できる可能性ははるかに高まる。

 ボンドが映画の中で嵌めているスポーツ・ウォッチの中で、最も有名で、そして貴重なのは、シリーズの初期の映画で着用された、ロレックス サブマリーナーだ。著者のイアン・フレミングは、実生活でロレックス(正確には1016エクスプローラーI)を愛用しており、その伝説的な作品に同じくスイスの伝説的なメーカーの時計を登場させた。フレミングは著作『カジノ・ロワイヤル』で次のように書いている。

「単なる時計ではだめなのだ。それはロレックスでなければならない。ジェントルマンの時計の選択は、彼のサヴィル・ロウのスーツと同じくらい彼について語っているからだ」と説明した。

 ショーン・コネリーは、登場する作品ごとにサブマリーナーを着けていた。『ドクター・ノオ』(1962年)、『ロシアから愛をこめて』(1963年)、『ゴールドフィンガー』(1964年)、『サンダーボール作戦』(1965年)に見られるRef.6538は、“ジェームズ・ボンド・ロレックス”として知られるようになった。

 ガイガーカウンターを兼ねたブライトリング トップタイムは『サンダーボール作戦』でも使用されていた。オリジナルの小道具として使われた時計は、マーケットで幸運な誰かによって25ポンドで掘り出され、その後10万ポンド以上でオークションにかけられた。

 『女王陛下の007』(1969年)にて、ボンドを演じたオーストラリア人、ジョージ・レーゼンビーは、007として唯一出演した映画で、サブマリーナー(ref.5513)とクロノグラフ(ref.6238)のふたつのロレックスを着用した。

ジョージ・レーゼンビーは、1969年の『女王陛下の007』(1969年)でジェームズ・ボンドとしてステンレススティールのロレックス クロノグラフ(ref.6238)を着用している。

 1970年代にロジャー・ムーアがボンド役を引き継いだとき、彼は最初のふたつの映画『死ぬのは奴らだ』(1973年)と『黄金銃を持つ男』(1974年)でサブマリーナーの伝統を引き継ぎ、同じモデル(実際には、おそらくまったく同じ個体)を着用した。 『死ぬのは奴らだ』は、1980年代における長いムーア時代の皮切りとなり、彼は時折デジタルウォッチ、例えばハミルトン パルサー LEDなども身につけていた。

 ここで忘れないでほしいのは、70年代のデジタル時計は最先端の技術であり、その初期は非常に高価で、当時のステータスシンボルであったということだ。

 ムーアは、『私を愛したスパイ』(1977年)では、ロレックスGMTマスターと共に、超小型のテープによる通信装置を備えたセイコー0674 5009液晶デジタルを身に着けていた。『ムーンレイカー』(1979年)では、さらに別のセイコー、M354メモリーバンクカレンダーが使われた。これはQの部署による改造で、小型爆弾と遠隔起爆装置を備えていた。

 日本のブランドは『ユア・アイズ・オンリー』(1981年)でも採用された。クォーツを動力とする600m防水のセイコー7549-7009ダイバーズ ウォッチは、ボンドと水中で行動をともにし、アナログ/デジタル時計のH357デュオ ディスプレイは、MI6本部からのメッセージを受信した。

 ムーアは、『美しき獲物たち』(1985年)ではフォーマル時にはロレックス デイトジャストを着用し、防水時計が必要とされる場面では、セイコー7A28-7020(史上初のクォーツ・アナログクロノグラフ)に着け替えている。

 セイコーの時代は、ムーアの引退をもって終わった(リッチではない人でも、ボンドウォッチが買える時代も終わった)。

 彼の後を継いだティモシー・ダルトン(批評家からは“ランボンド”と呼ばれる、機関銃を持ち歩くマッチョマン)は、『リビング・デイライツ』(1987年)にて、タグ・ホイヤー プロフェッショナル ナイト ダイブref.980.031をその手首に巻いた。また『消されたライセンス』(1989年)では、ロレックス サブマリーナーを愛用した。

 オメガとの継続的な関係は、ピアース・ブロスナンが007役を引き継いだときに始まった。ハンサムなアイルランド人俳優は、『ゴールデンアイ』(1995年)ref.2541.80、『トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)ref.2531.80、『ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999年)ref.2561.80、『ダイ・アナザー・デイ』(2002年)ref.2531.80と立て続けにオメガ シーマスター プロフェッショナルを着用した。

  次のボンドの後継者、ダニエル・クレイグは、そのままオメガを愛用し続け、『カジノ・ロワイヤル』(2006年)では、シーマスター ダイバー300m(ref.2220.80)とプラネット オーシャン(ref.2900.50.91)を身に着けた。600m防水を誇るシーマスター プラネットオーシャンは、『慰めの報酬』(2008年)と『スカイフォール』(2012年)に登場した。前作『スペクター』(2015年)では、シーマスター アクアテラとシーマスター 300 スペクターが使われた。

 この時計には、グレイ×ブラックのNATOストラップが付けられている(ショーン・コネリーが『ゴールドフィンガー』でサブマリーナーに付けた有名な“細すぎる”グリーン×ブルー×バーガンディのストラップを思わせる)。このボンド・スペシャル エディション シーマスターは、THE RAKEの意見では、これまでクレイグが着用してきたオメガの中で、最もクールな1本だ。 20世紀半ばのスタイルでありながら、中には最新のメカニズムが使われていた。

 非常に磁気に強いムーブメント、時計士ジョージ・ダニエルズによる革新的なコーアクシャル脱進機、ほぼ破壊不可能なセラミックとリキッドメタルのベゼルなどだ。残念ながら小型爆弾や首絞め用チェーン、レーザー光線などは装備されていないが、現代における生活シーンで必要十分、かつスタイリッシュな1本であった。

 そして『ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2020年)でも、ボンドウォッチとして選ばれたのはオメガだった。シーマスター ダイバー300M 007エディションである。ミリタリーとヴィンテージのテイストを持つというこの時計のデザインは、ダニエル・クレイグ自身の意見も反映されているという。42mmのタイムピースの素材はチタンで、ケースとメッシュベルトに使用されている。またストライプ柄のNATOストラップを選ぶこともできる。

 クレイグは今回の映画でボンド役を降りると公言しているが、次のボンド役は誰か、そして愛用の時計が何になるのか・・このシリーズへの興味は尽きない。

上記の時計モデルのいくつかは、007の時計の詳細なデータベースを持つjamesbondwatches.comによって特定された。

ダニエル・クレイグが着用する、オメガ シーマスター アクアテラは、ボンドの海軍士官としてのバックグラウンドを思い起こさせる。

『ノー・タイム・トゥ・ダイ』にて採用された、オメガ シーマスター ダイバー300m 007エディション。ケースとストラップはチタン製でスティールに比べ大幅な軽量化を達成している。ケース径42mm。自動巻き。

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