性能云々より存在がカワイくて仕方がない! 「スピンキャストリール」をツラツラと語る
みなさんは「スピンキャストリール」をご存じだろうか。「クローズドフェイスリール」や「覆面リール」などの呼び方もある、見た目だけでかんたんに説明するとスプールの部分がカバーで覆われているリールで、アメリカ製の子ども向けロッド&リールのコンボなどに採用されている印象が強い。そう、つまりビギナーが操作しやすいリールなのだ。
そんなスピンキャストリールをベテランでも使えるリールにカスタマイズした、私の遍歴ともいえるこだわりの話をお届けしよう。
ベイトロッドで使う上向きスピンキャストリール(写真はDAIWA・スピンキャストST-30)
スピニングロッドで使う下向きスピンキャストリール(写真はクワンタム・エクストラライトXLT3)
ボタンひとつ、もしくはレバー1本でリトリーブ以外の操作ができる!
ではなぜ、ビギナーが操作しやすいのか? それはその構造に理由がある。
ものすごい大まかな言い方になるが、基本的な構造はスピニングリールとよく似ている。ただ、スピニングリールのベールの代わりにカバーの内部には「ローター&ピックアップピン」があり、これらが回転することでラインをスプールに巻き付けていく仕組みだ。
カバーの中に収まっているのが写真のローターで、前方左にある白い突起がピックアップピン。ちなみにゼブコのリールはセラミック製のピックアップピンを使用しているモデルがほとんどで、摩耗しにくいのでPEラインも使える
ピックアップピンは「クラッチボタン」(上向きのベイトロッドで使うタイプ)を押す⇔離す、もしくは「クラッチレバー」(下向きのスピニングロッドで使うタイプ)を引く⇔離すという操作をすることで、飛び出したり引っ込んだりする。つまり、ラインをリリースしたければクラッチを切ってピンを引っ込ませると、ピンに引っかかっていたラインがフリーになるわけである。
親指で押しているのがクラッチボタン。押すとクラッチが切れてピックアップピンが引っ込み、ラインがリリースされる仕組み
人差し指で引いているのがクラッチレバー。引くとクラッチが切れてピックアップピンが引っ込み、ラインがリリースされる仕組み
では、スピニングリールでいうところの、キャスト前に人差し指にラインを引っかける作業はどうするのか? これができないとラインは出ていくが、止めることができない。それを担うのがローターの前面にマウントされている「ラインストッパー(①)」、そして「カバーの内壁(②)」の2つで、クラッチボタンを押したまま、もしくはクラッチレバーを引いたままの状態だと①と②の間にラインが挟まれた状態となるので、ラインを止めることができるのだ。
クラッチボタンを押したまま、またはクラッチレバーを引いたままだとローター前面のラインストッパー(黒いリング状の部分)とカバーの内壁との間にラインが挟まれ、ラインが止まったままの状態になる
ということで、キャストするときはスピニングリールのラインから人差し指を離す要領で、クラッチボタンもしくはクラッチレバーを離してラインをリリースすると、ルアーや仕掛が飛んでいくという、ボタンひとつ、もしくはレバー1本でほとんどの操作ができてしまうから、ビギナーに向いていると言われているのだ。
「シンプル・イズ・ベスト」な存在と思い込み、
リールをスピンキャストオンリーに!
そんなスピンキャストリールを、(今となってはよく理由が分からないのだが)夢中になって…いや、躍起になって(!?)使っていた時期がある。
恐らく今から20年くらい前だと思うが、先述のようにビギナーが操作しやすいという部分を「構造がシンプル」と解釈 (実際にシンプルかどうかは別として)。さらに私個人の何事に対しても判断基準となる「シンプル・イズ・ベスト」の部分が独り歩き(というか暴走?)して、「スピンキャストはベストなリールだ!」となってしまったんだと思う。
谷山商事が当時扱っていた、ZEBCO(ゼブコ)のスピンキャストリール。まともに稼働する個体は写真の5個だった
見た目のカワイさで衝動買いした「33クラシック」
まあ、その辺りの動機やら何やらはどうでもよいとして、確か当時は谷山商事がアメリカのタックルメーカー「ZEBCO(以下ゼブコ)」を取り扱っていたので、本場アメリカで売られているゼブコのスピンキャストリールを釣具店で購入することができたのだ(今はどうなんでしょう…)。
最初に購入したのは「33クラシック」で、ベイトロッドに装着して使う上向きのタイプ。性能云々とかそういう問題ではなく、見た目のコンパクトさ、カワイさにひかれての衝動買いだった気がする(当時5000円前後)。350mlのジュースの缶を半分にブッタ切って円錐形のカップを付けたようなリールで、日本製の超高性能リールとは完全に逆を行くキワモノ的な存在であった。
ゼブコ・33クラシック。写真のモデルは右巻きオンリーだが、これより前の代のモデルはハンドルの左右付け替えが可能だった記憶がある
正面から見た姿はシンプル過ぎて、本当にリールなのか疑いたくなる? 左側面のダイヤルを回してドラグを調節する
クラッチボタンは上から抑えるというより前方に向かって押し出す感じなので、使い続けていると親指第一関節に負担が掛かる…
ただ、実際使おうとしてベイトロッドに装着すると、見た目はコンパクトだったはずなのに使い心地は全然コンパクトじゃない。クラッチボタンを押すときは親指の角度が結構キツイし、背が高い(直径がある)ので、私のような小さな手ではパーミングがしづらい。オールドタックルのようなオフセット型のガングリップならばしっくり来たかもしれないが、当時はFuji製のストレートタイプが主流だっただけに、少々握りにくかったというのが正直なところだ。
パーミングはこんな感じ。ほとんど掌が垂直に立つような形で握るので、無理してパーミングしなくてもよいかもしれない…ギア比が低いのがスピンキャストリール最大の弱点?それとも利点?
そして、これはあらゆるスピンキャストリールの“弱点”ともいえる部分だが、とにかくギア比が低いのである。だいたい3:1~4:1くらいがアベレージで、ハンドル1回転で50cmも巻けないというものがほとんどであった。
ただ、これは子どもなどが使うときにハンドルの巻き感を可能な限り軽くしたいからではないか、と私は解釈している。だから巻きモノルアーを使うときは意識せずともスローリトリーブとなり、速いスピードにはついてこれない低活性のバスが反応しやすい…と、コレも前向きに解釈していたような気がする(実際、冬にバイブレーションでポロポロ釣れた気がする)。
当時の私にとっての“M.A.V.”リールである「44クラシック」
で、あるとき思ったのである。「ベイトタックルをスピンキャストにしたのなら、スピニングタックルもスピンキャストでしょ!」と。そこで導入したのが、またもゼブコのスピンキャストリールなのだが、今回はスピニングタックルに取り付ける“アンダースピン”と呼ばれるクラッチレバーが付いたモデル「44クラシック」だ(やはり当時5000円前後)。
見た目は33クラシックにスピニングリールのような長いリールフットが付いていて、付け根の部分からクラッチレバーが伸びている。
ゼブコ・44クラシック。スピニングロッドに装着するアンダースピンと呼ばれるタイプで、右側面の小さな黒いレバーはリバーススイッチだ
ハンドルの左右付け替えが可能で、コインを使って着脱できるのも嬉しい。左側面のダイヤルは33クラシック同様にドラグ調整用
クラッチレバーが前方にあるので、後方は“絶壁頭”のようにサッパリしたフォルム。クラッチレバーには確か「Feather Touch」と書かれていた記憶が
33クラシックと違い、44クラシックのほうはロッドの握りも難しい部分は何もなく、スピニングリール同様にラクに握り込める
この44クラシックが、当時の私にとっては今風に言うならば「M.A.V.」(※“M.A.V.”に関して詳しくお知りになりたい方は、「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(バンダイナムコフィルムワークス /日本テレビ放送網 製作)」の第1話を参照ください)な存在のリールで、導入後はバスフィッシングのほとんどをコレでこなすようになり(釣れたかどうかは別として…)、おそらく10数台を買いそろえて「当たり個体」や「当たりパーツ」を探し出し、組み上げてはバラし、弱点を可能な限り克服すべくチューニングを施すという「奇行? 愚行? それとも修行?」を繰り返すようになっていった…。
そんなM.A.V.リールの姿が下の写真で、ヤリ尽くした割にはシンプルというか…地味というか。ただ、細かい部分は当時の私なりのこだわりが反映されているので、お目汚しではあると思うが御覧になっていただきたい。
44クラシックの「一軍」モデル。複数台の44クラシックの中から当たりボディ、当たりギア、当たりクラッチレバーなどなどを見つけ出し、あらためて1台に組み直した「無駄遣いの象徴」
ハンドルはゼブコに当時ラインナップされていた「Red Rhino」という上向きスピンキャストリールのダブルハンドルの片方をカットして、短いシングルハンドルとして使用。ライン放出口は少しでも抵抗を減らすべく、SiCリングガイドをエポキシで装着している
残っていた箱の中には、2軍、3軍と思われる44クラシックのパーツがゴチャマゼに入っていた
「ゼブコ編」はここまで。
続編が…ある、かも?(許されるなら)
ここまでがスピンキャストリールの紹介がてらの、私のスピンキャスト歴「ゼブコ編」である。本来ならばこの回だけで終わらせようと思ったのだが、あふれる思いが止まらずにダラダラと書き過ぎてしまった。もし、続編を書かせてもらえる機会があるのなら「アブ・ガルシア編」へと突入しようかと考えている。
果たして、その機会は訪れるのだろうか…。
残念ながら現在は使用していないが、見た目のカワイさは今でもダントツだと個人的には感じる33クラシック&44クラシックなのだ
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レポーター
プロフィール:くどぅちゃん
バイク雑誌→釣り雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライター&編集者に。個人的な趣味としてもバイク&釣りを楽しんでいるが、完全にヘタの横好きで費用対効果がひじょうに悪いのが悩みドコロ…。