視界の先にあるもの。神戸で見つめ直した「本当のプロ意識」|『プロの視界、私の毎日。』アスリートたちのリアルストーリー Vol.3 ヴィッセル神戸 岩波拓也
プロアスリートにとって“見える”という感覚は、プレーの質や判断に大きな影響を与えるものです。Sports for Socialでは、コンタクトレンズ通販『レンズアップル』とともに、アスリートたちの“視界”に迫り、彼らのリアルと、社会とのつながりを伝えていきます。
第3弾は、Jリーグ・ヴィッセル神戸でプレーするディフェンダー・岩波拓也選手。視野の広さと正確なキックを武器に守備陣をけん引してきた彼にとって、「見える」とは何を意味するのか。プロとしての姿勢、コンタクトとの出会い、そして故郷・神戸への想いに迫ります。
サッカーが“日常”だった幼少期
父が社会人サッカーをしていた影響で、物心つくころから週末はサッカー場へ。2歳上の兄がボールを蹴り始めると、自らも自然とサッカーにのめり込みました。
「幼稚園の頃から遊び感覚で始めて、小学1年でチームに入りました。サッカーはもう“あるのが当たり前”の存在でしたね。」
ディフェンダーとしてプロの舞台に立ち続けてきた岩波選手。自信を持って語るのは、ビルドアップに欠かせないキックの技術と、攻守に渡る空中戦の強さです。
「ロングボールや味方に通すパスは、自分の武器として意識しています。それでスタジアムが沸く瞬間が、自分にとってのやりがいです。」
“人と向き合う”プロとしての流儀
プロとして大切にしているのは「毎日の練習を100%でやること」。簡単そうで実は難しいその姿勢を、岩波選手は長年貫いてきました。
「どんな状況でも、ピッチに立ったらサッカーに没頭する。それが自分の軸です。」
また、仲間との関係性にも強いこだわりがあります。友達でも、ただの仕事仲間でもない。ピッチ上ではときに厳しく、ピッチ外では思いやりを忘れずに接する岩波選手だからこそ、多くの仲間が彼を信頼している姿がよく見えます。
「どれだけ仲が良くても、甘えが出たらチームは上を目指せない。だからこそ、今出場機会が少ない自分でも、まわりの選手と積極的にコミュニケーションを取っています。」
“遠く”を見るということ|視野が支える判断力
サッカーの中で「見える」ことの重要性を問うと、岩波選手は即答しました。
「僕のプレースタイルは、遠くを見て判断することがカギ。視野が広くないと、自分の強みが発揮できません。」
サッカーを始めて以来、長年裸眼でプレーしてきた岩波選手。しかしここ数年、ふと顔を上げた時に「遠くが見えづらい」と感じるようになりました。
「看板がぼやけて読めない。ピッチの端にいる相手選手の位置が曖昧に見える。これは、プレーに支障が出てしまうなと思いました。」
そこから初めてコンタクトレンズを装着。視界がクリアになった瞬間、「これだ」と実感した。
「視野が戻ってきた感覚があって、あそこにいるのが見える、っていうのがすごく嬉しかった。今までは普通に見えてたけど、それがなくなる怖さも感じました。」
“裸眼の世界”からの変化。初めてのコンタクト体験
コンタクトに対して「依存してしまうのが怖い」と感じていた岩波選手。しかし、自分の武器である“視野”が損なわれることの方に何倍もの怖さを感じていました。
「視界が戻ったときの感動と、安心感の方が大きかった。やっぱり『見える』って大事なんだなと改めて思いました。」
現在は、練習や試合の際にコンタクトを着け、日常生活ではできる限り目を休めるようにしています。
「午前中はメガネをかけたり、予定がなければ裸眼で過ごしたり。目に負担をかけすぎないように意識しています。」
最近では蒸気で目を温めるアイマスクを使うなど、目のケアにも意識が向くようになっています。
“自分が見えていた景色”を、もう一度取り戻すために
スタジアムのスタンドで応援してくれるファン・サポーターや、見慣れた知人の姿が見えづらくなったとき、岩波選手は“焦り”を感じました。
「前はすぐに見つけられてたんです。でも最近は、それができなくなってきて……。コンタクトを着けたら、また見えるようになったので、ホッとしましたね。(笑)」
コンタクトを通して、ピッチの中だけでなく、自分が大切にしてきた“日常の風景”を取り戻した岩波選手。だからこそ、今はその視界を守ることにも真剣です。
「スマホを見すぎない、目を酷使しない、そういうことも含めて、目のケアを大事にしています。」
これからも「好きなサッカー」を“楽しく”続けるために
「サッカーを仕事にしようと思ったことはないんです。好きだから続けてきたし、これからも楽しんでプレーしたいです。」
岩波選手が描く未来は、派手さよりも誠実さに満ちています。神戸で生まれ育ち、憧れのクラブでプロになった今、「一日でも長くこのクラブで」という強い想いがあります。
「“サッカーが楽しくなくても仕事だからやる”という状態にはしたくない。だからこそ、コンディションも目も整えて、少しでも長くピッチに立ちたいと思っています。」
神戸の街を、スタジアムの風景を、そして仲間のプレーを。“よく見える目”とともに支えながら、岩波拓也選手は今日もプロとしての道を歩んでいくーー。
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