瀬戸市のまちなかがアートであふれる♪ まち巡りをしながら、国際芸術祭「あいち2025」の魅力に浸る【名古屋市・瀬戸市】
日刊KELLYでは、11月30日(日)まで開催している国際芸術祭「あいち2025」の魅力を4回にわたってお届け!
第3回目は、前回ご紹介した「愛知芸術文化センター」と「愛知県陶磁美術館」を飛び出して、もう1つの会場となっている瀬戸市のまちなかをご紹介。南と北のエリアに分かれて展示されていて、自由に作品と向き合えるのが魅力です。まち巡りも一緒に楽しめば、1日かけてじっくり巡ることができます。開催中にしか見られない貴重な作品ばかりなので、お見逃しなく!
開幕からあっという間に1カ月半が経過し、後半戦に突入した国際芸術祭「あいち2025」。後悔のないよう、最後まで楽しみ尽くしましょう♪
★第1回目 おさんぽ気分でアート巡り♪ 国際芸術祭「あいち2025」で感性を刺激するひとときを【名古屋市・瀬戸市】 の記事はこちら!
Check!
おさんぽ気分でアート巡り♪ 国際芸術祭「あいち2025」で感性を刺激するひとときを【名古屋市・瀬戸市】芸術祭と聞くと、「なんだか難しそう」「敷居が高そう」「初めてだから行きづらいかも…」、そんなイメージを持っている人にこそ、ぜひ訪れてほしいのが、...続きを読む
★第2回目 国際芸術祭「あいち2025」体験レポート!国内外のアーティスト作品をめいっぱい楽しめる2会場を巡ってみた【名古屋市・瀬戸市】の記事はこちら!
Check!
国際芸術祭「あいち2025」体験レポート!国内外のアーティスト作品をめいっぱい楽しめる2会場を巡ってみた【名古屋市・瀬戸市】日刊KELLYでは、11月30日(日)まで開催している国際芸術祭「あいち2025」の魅力を4回にわたってお届け! 第2回目となる今回は、最も多く...続きを読む
瀬戸市ならではのロケーションを活用した“まちなかアート”
今回の芸術祭では、日本を代表する古くからの窯業地である瀬戸市のまちなかも会場となっています。
「瀬戸市に滞在する中で様々な場所や建物を訪れる機会に恵まれ、そのポテンシャルの高さを感じた」と芸術監督のフール・アル・カシミさん。実際に、1000年以上続くやきものの産地としての背景と、このまちならではの歴史的景観に調和した現代美術やパフォーミングアーツが展開されていて、新たな表現の発見が期待できます。
また、美術館などの文化施設ではなく、まちなかに展示されているから、お散歩気分で気軽に足を運べるのもうれしいところです。展示会場は名鉄「尾張瀬戸駅」を挟んで南エリアと北エリアに分かれていて、それぞれに異なる魅力があります。
さっそく、一緒にまち巡りを楽しみましょう♪
まずはインフォメーションセンターの「旧小川陶器店」へ
「尾張瀬戸駅」へ到着したら、まず立ち寄りたいのが、老舗の国内向け陶磁器卸売・小売店だった「旧小川陶器店」。インフォメーションセンターと「ラーニングセンターせと」が設置されています。
国際芸術祭「あいち2025」やまちなか会場に関するさまざまな情報をゲットできることもあり、会場を巡る前にこちらで作戦会議をする人も多いのだとか。
また、実際に作品を鑑賞した人が感想や発見を書き込んだMAPも見ることができます。コメントを読むのはもちろん、自分で書き込むのもOK。常時ボランティアスタッフがいるので、おすすめの場所やルートを聞くこともできます。気軽に声をかけてみましょう!
他にも、芸術祭や参加アーティストに関連する書籍を読むことができるライブラリーや、愛知芸術センターにある「ラーニングセンターへたち」にいる人と電話で交流できる「ふかぼるテレホン」なども設置。さまざまな方法で、芸術祭をより深く楽しむことができます。
旧銭湯や工芸館などが点在する南エリアへ
南エリアでは、「瀬戸市新世紀工芸館」や「瀬戸市美術館」、旧銭湯、元旅館を活用したレンタルスペースなどが展示場所となっています。
編集部注目の作品はこちら!
「尾張瀬戸駅」から徒歩約7分で到着する「瀬戸市新世紀工芸館」。その1階に展示されているのは、パフォーミングアーツでも作品を発表している、振付家・ダンサー・キュレーターである、セルマ&ソフィアン・ウィスィさんの映像作品「ラアルーサ」です。
セルマ&ソフィアン・ウィスィ
《命の連なり》2011
スクリーンには、チュニジア北西部セジュナンの女性陶工にしか作ることができない陶器人形と、陶工たちのポートレートが映し出されます。じっと映像を見ていると、徐々に変わっていく彼女たちの顔。伝統技術が脈々と受け継がれてきた、その歴史を表しているかのようです。
セルマ&ソフィアン・ウィスィ
《ジェスチャーの詩学》2011
もう1つのスクリーンでは、アーティスト自身が作陶の様子を再現したパフォーマンス映像を紹介。女性陶工たちの存在と記憶を宿した人形を作る作陶技術は、ユネスコ無形文化遺産にも登録され、実際の人形も展示されています。
メイサ・アブダラ
《あなたに負けるわけにいかない》2025
2階には、アラブ首長国連邦の作家であるメイサ・アブダラさんの連作絵画が展示されています。「誕生」「ダンス」「死」の3章仕立ての作品で、母親としての葛藤や罪悪感を、生まれてくる赤ちゃんを恐竜として描くことで表現。タイトルからは、自分らしくやっていくという意思表明も感じられます。
地元の人々に親しまれ続け、2021年3月に惜しまれつつ閉業した旧銭湯「旧日本鉱泉」。かつて、瀬戸のまちにはあちこちに銭湯があり、その日の仕事を終えた陶工たちで賑わっていたのだとか。
佐々木類
《忘れじのあわい》2025
こちらでは、ガラスを用いた作品が特徴的な作家・佐々木類さんの作品を鑑賞することができます。一歩足を踏み入れれば、真っ暗な非日常的な空間へ。浴室には、地元の人たちと一緒に採取した植物を閉じ込めたガラスが散りばめられていて、幻想的な空間が広がります。さらに、湯船や桶の中にも作品が。
佐々木類
《忘れじのあわい》2025
植物が美しく浮かび上がる艶やかなガラスが、「日本鉱泉」に堆積した時間や人々の記憶を思わせます。
国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
ミネルバ・クエバス
《子供たち》2025
©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
撮影:城戸保
国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
シェイハ・アル・マズロー
《賽の一振りは決して偶然を排することはない》2025
©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
撮影:城戸保
南エリアでは、他にも「瀬戸市美術館」に展示されているミネルバ・クエバスさんと、シェイハ・アル・マズローさんの作品が鑑賞できます。
さらに、瀬戸信用金庫アートギャラリーでは、「瀬戸リソースバンク」展を開催。本芸術祭のテーマである「灰と薔薇のあいまに」を構成する重要な要素の一つである瀬戸の陶土や窯業原料資料、植生類の標本やパネルを展示中です。
「瀬戸リソースバンク」展
展示場所
瀬戸信用金庫アートギャラリー(瀬戸市東茨町36-11)
開館時間
10:00~17:00
休館日
火曜休館
WRITER MATSUDA次の目的地まで向かいながらまちの景観を眺めていると、より瀬戸市を身近に感じられます。工芸館や美術館だけでなく、会期中にしか入ることのできない旧銭湯も見ることができ、とても貴重な体験でした。幻想的な空間は、時間を忘れて過ごしてしまいそうです。
旧小学校や商店街から新しい息吹を感じる北エリアへ
閉校した小学校や商店街のポップアップショップ、現役の粘土工場などが展示場所となっている北エリア。
「尾張瀬戸駅」から歩いて5分ほど。坂道を登ってたどり着いたのが、茅葺き入母屋造の建物「無風庵」です。瀬戸の陶芸の確立に大きな足跡を残した近代美術工芸家・藤井達吉さんの工房だった建物を、昭和27年に現在の場所に移築。芸術祭の会期中は、沖潤子さんの作品が展示されています。
沖潤子
《anthology》2025
茅葺きの屋根と調和するようにワラで覆われた部屋には、天井から吊るされた赤い布のかたまりが。そこから四方八方に伸びる糸は、足下を埋め尽くす陶土につながっています。「株式会社 加仙鉱山」の粘土を使ったという陶土をよく見ると、寄贈で集められた10万本近くの針が“針供養”のように刺さっています。
沖潤子
《anthology》2025
建物の中に入れば、白い布と赤い糸、針が用意されていて今の気持ちを縫い付けることができるようになっていました。これは、出征する兵士のための弾除けのお守りとして千人の女性が布に一目ずつ赤い糸を縫いつけた“千人針”を彷彿とさせます。ぜひ、今の願いや問いかけ、気持ちを残してみてください。
2020年に地域の学び舎としての役目を終えた「旧瀬戸市立深川小学校」では、彫刻・ドローイング・映像・文学・パフォーマンスを組み合わせた活動で知られているアルゼンチン出身のアドリアン・ビシャル・ロハスさんが作品を発表。1階フロア全体を使った大規模なインスタレーションを展示しています。
アドリアン・ビシャル・ロハス
《地球の詩》2025
学校の面影を残しながらも、古今東西の素材を持ち寄り、壁全体を使って作品を展開。“ありえるかもしれない、私たちが今生きている次元とは違う世界”が描かれています。
アドリアン・ビシャル・ロハス
《地球の詩》2025
特に、注目してほしいのが給食調理室です。壁面に描かれた空間は現実空間と見分けがつかないほど。SFのような世界観に没入できます。
冨安由真
《The Silence (Two Suns)》2025
様々な飲食店が並ぶ銀座通り商店街の「ポップアップショップ」で展示を行っているのが、冨安由真さんです。かつて八百屋だったというこの場所は、マジックミラーが貼られていて中の様子が伺えません。
足を踏み入れれば、「灰と薔薇のあいまに」という芸術祭のテーマを思い起こさせる空間が。3分ほどの周期で移り変わる照明によって、見え方が変わっていきます。
冨安由真
《The Silence (Two Suns)》2025
部屋中に散らばる小さな花が灰のようにも見えますね。これらは、瀬戸の土から陶土や珪砂を精製する過程で生まれる廃棄物を使って作ったのだとか。冨安さんが、世界中の紛争や戦争、対立、そして広島原爆を念頭に置いて制作したインスタレーションです。
ロバート・アンドリュー
《内に潜むもの》 2025
ロバート・アンドリュー
《ブルの言葉》 2025
国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
マイケル・ラコウィッツ
©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
撮影:城戸保
この他にも、北エリアではロバート・アンドリューさん、マイケル・ラコウィッツさんの作品が鑑賞できます。
panpanya
《何物》2025年
そして、2013年春に商業デビューを果たしたpanpanyaさんは、末広町商店街の中にある旧旅館「松千代館」で、瀬戸市のまちなかで見つけた景色やモノを題材にした1冊きりの手製本を展示しています。
さらに、瀬戸市のまちなか会場のさまざまな場所に漫画の一コマが点在。それは、まるで漫画のなかの光景と現実の風景が重なり合っているかのようです。ぜひ、まち巡りをしながら探してみてください♪
WRITER MATSUDA歴史ある建物や旧小学校など、アーティストたちがそれぞれの会場の特色を大切にしながら作品を作り上げていったんだな…と感じることができました。どこの会場でも、その世界観に没入できること間違いなしです!また、まちなかの各所にpanpanyaさんの漫画が点在していという遊び心も、まち巡りをより楽しくしてくれますね。
カルチャーWEBマガジン「LIVERARY」とのコラボレーションショップが登場!
末広町商店街には、期間限定で「LIVERARY Extra Season5(ライブラリー エクストラ シーズン5)」がオープン! 国際芸術祭「あいち2025」と、名古屋を拠点とするカルチャーWEBマガジン「LIVERARY(ライブラリー)」のコラボレーションショップです。
お店のロゴを手がけた平山昌尚さんをはじめ、全国各地のアーティストやクリエイターとのコラボグッズやオリジナルアイテムをセレクトし販売しています。
右から「ワレモノ注意SOCKS」(2980円)、「ワレモノ注意CAP」(4980円)、「ワレモノ注意TOTEBAG」(1980円)など
新たに登場したオリジナルグッズ「ワレモノ注意」シリーズ。陶器の街・瀬戸にちなんで、平山昌尚さんがデザインしました。靴下やバンダナのひび割れデザインは外観のガラスにもあしらわれているので、ぜひチェックしてみて。
さらに、店内外を使ってポップアップや展示企画を実施。約2週間ごとにゲストアーティストやショップを“特集”するため、店内の様子もガラリと変わります。これまで地元のカルチャーを発信してきた「LIVERARY」だからこそ可能にしたアーティストも登場。“特集”の内容については、随時公式SNS(@liverary_extra)で情報を公開しているので、来場前の確認をお忘れなく。
LIVERARY Extra Season5
期間
2025年9月13日(土)〜11月30日(日)
場所
愛知県瀬戸市末広町2-25
営業時間
10:00~17:00(瀬戸市のまちなか会場の開館時間に準じる)
定休日
火曜定休(祝休日の場合は営業、翌日休)
※11月25日(火)は臨時開館
WRITER MATSUDA“変てこなコンビニ”というコンセプトの通り、他ではなかなか出合えないグッズたちが並ぶ店内は、見ているだけでワクワクします。店内外を使った第1段の“特集”では、京都を拠点にするグラフィックデザイナー・三重野龍さんや、京都のギャラリー&ショップ京都「VOU/棒」が登場しました。カルチャー好きにはたまらないラインナップなので、今後の“特集”からも目が離せません!
“ケリー特製MAP”を参考に、自由に巡ろう♪おすすめの休憩場所も必見
景色も含め、瀬戸市のまちなかは1日かけて、じっくり楽しんでほしいエリアです。そして、まち歩きをする時に欠かせないのが休憩場所!
日刊KELLYでは、これまでご紹介してきた瀬戸市の素敵な飲食店も合わせて“特製MAP”を公開中!こちらを参考に、思い思いのルートで自由に巡ってみてください♪
▼ケリー特製MAP
▼おすすめ休憩場所の詳細はこちら!
①「MUMU SOBA」
Check!
商店街に立ち食いの「MUMU SOBA」がオープン! 個性派ワインやビールも【愛知・瀬戸市】愛知県の名鉄「尾張瀬戸駅」から歩いて10分ほどの「せと末広町商店街」。2024年6月24日、立ち並ぶ店の一つに「MUMU SOBA(ムム ソバ)...続きを読む
②ソボカイ食堂
Check!
おいしさ引き出す “ハーブ&スパイス” の贅沢ランチ!「ソボカイ食堂」【瀬戸市】名鉄「尾張瀬戸駅」から徒歩15分、“食事は楽しい”がコンセプトのマルミツポテリが、カフェや食器店、料理教室など、あわせて5店舗をリニューアルオー...続きを読む
③「Little Flower Coffee」
Check!
商店街の憩いスポット「Little Flower Coffee」で、一杯の優しいコーヒーを。【瀬戸市】「せと銀座通り商店街」に、2022年4月9日(土)にオープンした「little flower coffee(リトルフラワーコーヒー)」。誰もに愛...続きを読む
国際芸術祭「あいち2025」
会期
2025年9月13日(土)~11月30日(日)
会場
愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか
時間
各会場によって異なる
チケット
フリーパス/3500円
1DAYパス/2100円
※中学生以下は無料
※パフォーミングアーツについては別途チケットが必要
公式サイト
https://aichitriennale.jp/index.html
Instagram
@aichi_triennale
アクセス
詳しくは公式サイトを要確認(シャトルバスの運行はなし)
撮影/竹内恵美 取材・文/松田支信
※掲載内容は2025年10月時点の情報です
※価格はすべて税込みです