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パネルが織りなす色と立体の建築空間~山出美弥さん

TBSラジオ

ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。

山出美弥さん
岡山県出身の研究者。大阪大学で建築学を専攻した後、2014年に大阪大学で博士号を取得。名古屋大学大学院の環境学研究科助教を経て、去年4月から立命館大学政策科学部で准教授を務め、都市計画、街づくり、コミュニティデザイン、そして宇宙研究について研究しています。

出水:2025年大阪関西万博の大阪ヘルスケアパビリオン「Nest to Reborn」2階のタカラベルモントのブースでは、ユニフォームをジュンコさんが、山出さんが空間デザインを担当したそうですね。

JK:初めてお会いした時、紙に立体的に折ったようなものをお持ちだったんですよね。かわいい綺麗な色で折ってあって。あれは何だろうと思って。

山出:宇宙に建築を持っていくときにそのままでは持っていけないので、小さく折りたたんで持っていくという。それが「インフレータブル構造」という実際にある構造なんですが、その原点の折り紙の状態でした。

JK:そうなんですね。いろんな綺麗な色がパラパラとなって、開いてくると平らなんですけど、すごく立体的で不思議な・・・あれをパッと見て「じゃあ私はこういうのを作ろう」と思って、あっという間。早かったでしょ。

山出:先生もう目の前でデザインしてくださって、びっくりしました!

JK:あんな簡単でいいのかなと思ったけど(^^;)あれはメモです。

出水:すごくカラフルな、レインボーカラーに輝いているパネルをいっぱい使っているんですか? ピンクだったり、紫だったり、光によって加減が変わるという・・・

山出:総数1580枚の全て異なる形のデザイン、サイズのアクリルパネルを使っています。光だったり、見え方、場所によって変わりますし、いろんな表情をしております。スタディ模型というのを建築では作るんですが、折りたためるインフレータブル構造から着想を得て、多様性を表現しました。

JK:折りたたんで線を平面化することによって、ちょっと立体という感じがしますね。

出水:山出さんがデザインする上で浮かんだ言葉が「Quantum Leap」。これはどういった意味なんでしょう?

山出:この言葉自体が量子力学の考え方で、同一線上にないジャンプ、飛躍的にジャンプするというイメージです。1970年に黒川紀章さんがデザインしたものから、受け継ぐこともあると思うんですけれども、新たに現代で建築を表現するとなった時に、もっと新しいものを挑戦的なものを!と・・・私の研究の中に「宇宙QOL=Quality of Lifeを宇宙でも発展させよう」というのがあって、今はすごく機能的なところでしか開発が進んでいないと思うんですが、宇宙でも美しいとか、楽しいとか、そういった豊かさも贅沢にとっていいんじゃないか、と・・・

JK:大学で教えていらっしゃいますが、宇宙について子どもたち、学生たちのノリはどうですか。

山出:すごく宇宙建築に興味を持ってくれている学生がたくさんいまして、私はそれにすごく驚いてまして。逆に教えられることが多いです。

JK:まっさらですもんね。想像豊かで自由。誰も見たことないから、答えがないから全く悠々とやっていいですよね! 自由というのがありすぎて今度迷ったりする(^^;)

山出:そうなんです。

JK:ありすぎて結論がないでしょ。何でもOKなんだけど・・・でも挑戦し続けないと形にならないかもしれない。具体的にこうやってパビリオンで実現できましたよね。

出水:実際に足を運ばれた時、出来上がったのを見た時の印象いかがでしたか。

山出:私は我が子を見るような気持ちで・・・見たくないじゃないですけど、緊張するっていうんですか? 子供の発表会見るときって緊張しません? その感覚に非常に近いものがありました。

JK:蓋を開けてみないとね。どうなるかな? 人の反応はどうかな?って。

山出:そうなんです!自分ではカッコいいと思ってても、やっぱり建築は人に受け入れられて「美しいね」って思ってもらえる。人に感動を与えることが大事ですから。

出水:すごく写真映えしそう・・・ってすごく安直な言葉ですけれども、ある種迷路みたいになってるじゃないですか?パネルの間に身を埋めて、写真を撮ったらさっそく綺麗だろうなあ、と。パネル1つ1つの形も、四角とか五角形とかではなくて、全てが異なってますよね?

山出:我々人間も1人1人個性があって、1人1人美しさがあって、それを持ち寄ってコミュニティが形成されてると思うんですよ。そういう多様性を受け入れる空間です、っていうのを表現したかったです。

JK:だから同じ形はないんですね。それも平面かと思ったら、立体になってるんですよ。立体が平面に溶け込んでるみたいな・・・不思議ですよ、この空間。これ実際にはヘルスケアや人間の肉体、命とどういうふうに関係するんですか?

山出:みなさん忙しい日々の中、ふと自分の内面に向き合う時間っていうのが削られていってるんじゃないかと思っていまして、この空間でも自分と向き合う時間を作ってほしいと。それが内面の美で、ゆくゆくはそれが外見に出てくる。もちろん見た目も大事ですけれども、やっぱり心って伝わりますので・・・このブースでゆっくりしてほしいです。

出水:ジュンコさんのユニフォームについてもお聞きしていきましょう。今回もまたエッジが効いていますね!

JK:宇宙に行くための建築を着ている、立体的な建築を着ているイメージです。イレギュラーで、答えがないというか。どっちかというと建築的なんですね。

出水:シルバーと白を基調にして、1枚の布からなる折り紙のようにも見えます。

JK:左右対称じゃなくて、どこからも全くイレギュラー。色は使わなかったんです。ブースに色がたくさんあるので、色がなくても無彩色で存在感がある。

出水:山出さんのデザインと調和するようにデザインしたということですね。ご覧になっていかがですか?

山出:もう一言でカッコいい! 新しいです!

JK:目の前で描いたものね(笑)

山出:会話したのは一言二言でした(^^)「コンセプトはこれとこれとこれです」「はい」という形で。

JK:実際こういうデザイン画というのは、ある意味でメモですからね。とりあえずメモを絵で描いて、作るときにきちっとすればいい。だいたい頭の中でこうしようと決めてたから。

山出:先生はお仕事を毎回パッとデザインが浮かばれるんですか?

JK:やっぱりひらめきってすごく重要で、それも最初が重要! 最初ちっちゃなひらめきからブワーッと広がっていくじゃないですか。小さい点がないと線にならないし、目にならないんですよ。

山出:じゃあ点が生まれない仕事もありますか?

JK:点はある。なぜかというと、出会いは点ですよ。出会って、言葉じゃなくてもなんとなく接点があるじゃないですか。接点も点ですよね! 接する点。

山出:私も人との出会いがデザインのインスピレーションです。出水アナと会った瞬間、こういう建築だなとか、こういうお部屋かなとか、いろいろ想像が浮かびます。

出水:わーすごい! 人が発している何かを読み取るみたいなことなんですか?

山出:そうですね、空気感っていうんですか? その方が持っていらっしゃる雰囲気。

JK:建築ってそうやって来るんですね!

山出:私は、です(^^; )出水アナは本当に柔らかい、今来ていらっしゃるベージュのお色はすごく合うんじゃないかなと思います。なので無垢の素材で、木材で、すごくふわっとしたお家に住まわれているような。

JK:将来決まりましたね!

出水:木材のお家にしましょうか! ジュンコさんはどうでしょう?

山出:先生も、木材のお家に住んでてもマッチすると思います。先生どこでもマッチします(笑)RC、鉄筋コンクリートのお家はもちろん住まわれるでしょうし、自分の空気にされる(笑)

JK:表現がいいですね(^^) ものすごくハードなのも好きです。形がハードじゃなくても、無くてもいいんです。例えば真っ白とか、全然楽しめる! そこを埋めていけばいいわけだから。家具とかダメなんですよ、家具とか飾り物とか邪魔なんです。そういうものがあると、固定観念が動かないから。

山出:邪魔されますよね、自分のイメージが。目に入るものに引っ張られますよね。

JK:できるだけ整理されてて、空間を埋めるのが自分。物で埋めるんじゃなくて、気持ちを埋める。

山出:デザイナーを目指している学生に、ぜひこのお話聞いてもらいたい! 学生さん、コシノ先生のお話を聞きたいと思うんですよ。普段どんな生活されているかとか、どんなものを見てインスピレーションを浮かんでいるかとか。

JK:長年生きておりますので、たくさん経験があります(笑)本当にたくさん経験あると思いますよ、私! でもね、経験って見えないでしょ。この中に詰まっているのをどうやって表現しているかわからないんですよ。写真とか、そういうものしか残ってないでしょ。どこどこの国に行きましたこういうことをしました、こういうことをしましたっていうビデオと写真以外、何の証拠もないんですよ。

出水:ビデオと写真だって証拠じゃないですか!

JK:それしかないってこと。味わえないっていうか。過去じゃないですか。

山出:それを先生はご自身のデザインにフィードバックしているっていうことですよね?

JK:過去は固定したものだから、これを発展させるよりも、これから先の方が自由ですよね。こういう新しい女性の建築家との出会いも初めてです。建築家って全部男だったから。

山出:そうなんですよ。男性社会で。

JK:だからすごい珍しいというか、楽っていうか。競争しているんじゃなくて、一緒にやっている感じ。女性って本当に少ないので貴重です。ぜひこれからですから頑張ってください!

(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)

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