福音派とは?「一つの教会ではなく…」大竹まことが専門家に聞く
お笑い芸人の大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜11:30~15:00)。 9月29日の放送は、中央公論新社から発売中の『福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会』を著した立教大学文学部キリスト教学科教授の加藤喜之氏をゲストに招き、本の内容について伺った。
大竹「『福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会』というご本をお出しになりました。これは日本で思っているより、これはアメリカにとってかなり深刻な問題ですか?」
加藤「その“深刻”というのは、たぶん見る側によると思います。オバマ政権以降、力を持っていたリベラルの人たちからするとかなり深刻な問題で、ただ保守派からすると、元々あったアメリカを刷新してくれるという期待になってると思うんですよね」
大竹「ああ、そうですか。でも、アメリカは今、分断は進んでますよね」
加藤「そうですね。2010年代以降、当時はオバマ政権だったんですけれども、その当時から始まっていた、さまざまなキャンセルカルチャーが、一方で左派側に非常に強く分断を率いて、その後、16年にトランプが当選した以降、その争いはずっと続いているので、かなり激しい分断というのが今、生じてるんじゃないかなと思います」
大竹「この人たちは、女性の中絶を基本的に認めなかったり、警察による黒人射殺なんかは構造的な人種差別だと思うんですけども、そうは思っていなかったりしていると。アメリカの分断・対立がどうして起こってきたのかというと、宗教に原因があるんじゃないかと加藤さんは指摘なさってますね」
加藤「唯一ではないんですけども、大きな原因の一つだなと思っています。福音派って最近よくNHKとかでも話されたりとかして、日本人もなんとなくわかってきたと思うんですけども、ただこれは、ここ1~2年の話では全然なくて、1970年代後半から続いてるような、文化戦争と言われるリベラル側と右派の争いの結果なんですよね。なので、まさに50年かけて分断というのがだんだん広がっていって、その中心に福音派というか保守的なプロテスタント信仰を持った人たちがいたというのが一つの見方かなと思います」
大竹「50年かけて分断がじわじわ進んできていると。それは宗教が大きく支配しているんじゃないか。今のトランプ大統領もこの福音派に所属していますよね?」
加藤「そうですね。福音派との関係はかなり密接で、彼はもともと福音派ではなくて、どちらかというと、ニューヨークのエスタブリッシュメントの人が通うような、お金持ちが集まるような教会に行って、そこではいわゆる素朴な信仰とか“回心体験”、つまり自分が罪を犯してイエス・キリストに立ち返らなければいけない、みたいなものは持ってなかったんですけども、2000年あたりから、この本の表紙にも出ているポーラ・ホワイトという福音派、カリスマ派といわれる保守的な人たちと非常に関係が親しくなっていって、その層が一番最初にトランプが選挙をした時に彼を支持したんですね。なので、そういった意味では、彼も今、福音派の一員として政治活動をしているというところもあります」
大竹「アメリカの福音派っていうのは、アメリカの人口のどのぐらいの比率を占めているんですか?」
加藤「最新の研究結果、世論調査だと23%。それは大体あまり変わってなくて4分の1。4人に1人。でもこれは州によって全然違っていて、北東部といわれるボストンとかあるようなところだと非常に少ないんですけども、例えば南部のアラバマとかジョージアとかにいったりすると50%ぐらい。2人に1人がっていう、地域差はすごくあるんですね」
大竹「昔からアメリカで、例えば西部劇なんかで日曜日は子どもたちを連れて教会に行って、っていうのはアメリカの日常みたいに、子どもの頃に見てたんですけど、それは福音派が中心なんですか?それともそうじゃない、プロテスタントとか、いろんな教会にみんな行ってた?」
加藤「福音派っていうのは一つの教会ではなくて、保守的な、そして社会的にも保守的な思想を持つ動き。そして宗教集団なので、だから長老派、メソジストとか聖公会とかいろいろありますけども、その中を通底して福音派っていう動きが一つあるんですね」