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【インタビュー】“アオイヤマダと松本PARCO”―初めての訪問はベビーカーで、最後は自身のパフォーマンスで 伝えたかった想いとは 

ARURA(アルラ)

松本市で40年にわたり愛されてきた『松本PARCO(パルコ)』が、2025年2月28日に惜しまれつつ閉店しました。
1984年に開店し、「東京に行かなくても最新のファッションやカルチャーに出合える場所」として多くの若者を引き付け、街のシンボル的存在だった松本パルコ。その最終日には開店前から行列ができ、店内には別れを惜しむ買い物客で終日賑わっていました。

パルコはあまりにも“なじんだ存在”だった

「私が初めてパルコに来た時、母の押すベビーカーに乗ってやってきたそうです。子どもの頃にパルコの外にあるクリスマスツリーの前で、ダンスの発表会で踊ったのも思い出深いですね。」と語るのは表現者のアオイヤマダさん。
松本市出身のアオイさんは、松本パルコの閉店クリエイティブチームの一員として、フォトグラファー・磯部昭子さん、アートディレクター・清水貴栄さんとともに、ポスタービジュアルの制作等に携わってきました。

アオイヤマダ「一番最初に作ったのがこのポスター(上の写真・アオイさんの左上)なんですけど、第1弾は“残像”のようなブレた写真で、それくらいパルコは自分の中で“なじんだ存在”だったんですね。この機会にあらためて、パルコという存在をしっかり捉えたいという想いがありました。第2弾(アオイさんの右上)で立っているパルコの池にある岩は、意識しないと気が付かない場所にある岩で、“見つめなおす”表現です。最後となった第3弾のポスターは、入り口のドアで撮ると決めていました。」

松本PARCO 閉店第3弾ポスター(松本PARCO公式Instagramより)

アオイヤマダ「ドアに張り付いている写真なんですけど、『入りたい』と『出られない』、どちらの気持ちも表現しました。それと、子どもの頃はドアノブに手が届かず、ガラスのドアを身体で押して入っていった、そんなエピソードも込めています。」

最終日のパフォーマンス『春とパルコと』

松本パルコの最終営業日、パルコの歴代ポスターが張り出された企画展の会場で、アオイヤマダさんと高村月さんによるユニット「アオイツキ」がパフォーマンスを行いました。事前抽選で選ばれた観客が見守る中、踊り語り『春とパルコと』が始まりました。
アオイヤマダさんが「松本パルコ」に、高村月さんが「春」となり、40年の時を越え2人は出合い、松本パルコは「松本春子」となり生きていくというストーリーです。

「ねえ、迎えに来てね。あなたが満開になったら、此処に迎えに来て。そして今度は私も連れてって。約束よ」

あれから、40年。

"はじめまして、ひさしぶり。僕は春。
ここに来るまで長い旅をしてきました。
40年前、あなたと結んだ約束を果たしに来ました。
あなたはパルコ。松本パルコ
お待たせパルコ。松本パルコ"

アオイツキ踊り語りシリーズ『春とパルコと』脚本:高村月 ―アオイヤマダInstagramより引用

「パルコはなくなってしまうけど、思い出は消えない。パルコは春を待っていて、そして、春にかわって、毎年松本に遊びに来る。」そんな思いを込めたパフォーマンス。

お別れだけど、何も消えないし、また会える。そんな愛あふれる「アオイツキ」のパフォーマンスに、喪失感やさみしさで渦巻いていた心が救われた気しました。

「アオイヤマダの踊る姿を見ると、身体がふわっと軽くなる」目の前で起きる“今”を演者と観客が共有するパフォーマンスの中で、彼女の持つイノセントな愛情に触れられた気がして、優しくあたたかい風に吹かれたような感覚がしばらく消えませんでした。

風に吹かれても折れず、しなやかでありたい

最後にアオイさんが今、そしてこれからを生きる上で「大切にしていきたいこと」をお聞きしました。

アオイヤマダ「私が松本市出身ということで、最近は松本が自分にとってどういう存在なのか改めて考える時間も多くなりました。長野県は自然が多くて木や花が身近な存在ですよね。これもそうですけど(指先についた羽のようなモールを風になびかせながら)、風が吹けば木や花は揺れるけれど、折れずにいる。“しなやかだけど折れない強さ”を自分の中に落とし込んでいきたいと思っています。自分の人生にも落とし込んで、しなやかな生き方をしていきたいと、最近は思いますね。」

東京で暮らしながら、ときには松本をはじめ長野県内での活動も行うアオイさん。今回の松本パルコでのパフォーマンスでは、パルコとお別れする悲しみや寂しさを、あたたかい春の風に変えてくれました。
「私たちの時代にはアオイヤマダがいる」そう思える幸せを噛みしめながら、これからも長野県で彼女のパフォーマンスを観る機会があることを願います。

アオイヤマダ
2000年生まれ、長野県松本市出身。表現者。
東京2020オリンピック閉会式ソロパフォーマンスを行う。
舞台KAAT『星の王子さま』、ダムタイプ『2020』に出演。
役者として、ヴィム・ヴェンダース監督『Perfect Days』アヤ役、Netflixシリーズ『First Love 初恋』古森詩役として出演。
KAGUYA BY GUCCI『竹取物語』や、ラフォーレ原宿のメインビジュアルなどに起用される。
MVでは米津玄師、MAN WITH A MISSION、DISH//、Nulbarichや夏木マリなどに出演。自ら楽曲制作も行う。
コロナ禍で始めた昭和歌謡曲にのせて踊った『野菜ダンス』もSNSで話題となった。
ウェブサイト:https://www.aoiyamada.com/
Instagram:https://www.instagram.com/aoiyamada0624/

Photo/Chihiro Matsumoto
Text/Ayako Ide

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