中野『サッポロラーメン味七』の特みそラーメンは満腹必至!札幌出身の店主が味を極め、親子で盛り上げる
中野駅北口から中野サンモール商店街を抜けて右折した先にある『サッポロラーメン味七(あじしち)』。看板メニューの特みそラーメンは、北海道札幌市出身の店主が試行錯誤を重ね、配合を日々調整している。濃厚なスープには北海道産の特製味噌を使用しており、風味豊かでパンチのある味わいが印象的だ。札幌の老舗製麺会社から取り寄せる、シコシコ食感の麺との相性もいい。
こってりした札幌の味噌ラーメンを東京・中野で
交通手段が豊富で都心へのアクセスがよい上に、駅周辺には複数の商店街があるため暮らしやすい中野エリア。サブカルチャーの発信地としても知られ、複合商業施設「中野ブロードウェイ」は、その象徴的な存在と言える。また居酒屋やラーメン店がひしめく街でもあり、平日・休日を問わず人通りが絶えない。
駅の北口からすぐの中野サンモール商店街を直進し、「中野ブロードウェイ」の手前で右折する。細めの路地を道なりに進んだ先にあるのが、1987年創業の『サッポロラーメン味七』だ。
店主の藪内義弘(やぶうちよしひろ)さんは、北海道札幌市の出身。開業前は会社員だったが、東京へ転勤になったことを機にラーメン屋を志すようになったという。
「昔の東京のラーメンは、ペラペラで味のない中華そばだったんですよ。自分は北海道で生まれ育っているから、こってりしたラーメンが好きで、どうしてこんなに違うんだろうなと思ったんです。じゃあ自分でつくろう、と。当時は札幌味噌ラーメンが東京では珍しかったんですよね」
開業当初は座席数7席、いまの3分の1ほどの小規模な店舗だった。「7席だったら1人でまわせるじゃないですか」と義弘さんは笑う。そこから徐々に店内を拡張していき、2024年の増設を経て現在の形に生まれ変わった。
お昼の営業は、店主の義弘さんと妻の久仁子(くにこ)さんご夫妻が中心。夕方から夜は、義弘さんの息子・信哉(しんや)さんとその妻・亜紀(あき)さんにバトンタッチする。親子2代で連携して働く仲睦まじい姿は見ていて気持ちがいい。
北海道産の素材を生かした特みそラーメンを堪能
店名に「サッポロラーメン」とあるように、イチオシのメニューは特みそラーメン1150円。ということで、さっそく義弘さんに調理してもらう。厨房にお邪魔すると、思いがけずカレーの匂いがしたが、これはメニューにカレーラーメン1000円があるからだった。
特製味噌は北海道のメーカー「福山醸造」のもの。赤味噌、白味噌、麦味噌といった複数の味噌に、ネギやニンニク、ショウガなどがブレンドされている。これをラードや挽き肉、ニンニクと一緒に炒めることで、味噌の風味を引き出しているのだとか。
スープにはゲンコツ(豚の大腿骨)をはじめ、北海道の羅臼(らうす)昆布、煮干しなどを使用。豚骨に加えて海産物もふんだんに使っているため、和風の出汁を思わせる味わいが生まれる。味噌やスープの配合は、義弘さんが「自分で食べておいしいと思うもの」を目指して、日々バランスを変えているそうだ。
麺は開業当初から、札幌の老舗製麺会社「さがみ屋」のものを仕入れている。義弘さんによると「こういうシコシコした麺は、東京にはなかなかないんですよ」とのこと。
1杯あたりの麺が多めなだけでなく、具材のモヤシもたっぷりだ。「いまは若いお客さんが多いから、量を多くして出しています」と義弘さん。+170円で大盛にできるが、並盛でもかなりボリュームがあるのはうれしい。
トッピングは大きなチャーシュー2枚、味玉、メンマ、ネギ、刻んだタマネギ。さらに「いい昆布を使っているから、捨てちゃうのがもったいない」と、細めにカットした羅臼昆布も添えられている。
出来上がった特みそラーメンを席へ運んでもらって実食。まずはスープをひと口すすると、味噌の旨味や甘みが存分に感じられ、豚骨やニンニクのパンチもしっかり効いている。こってり系でありつつ、出汁の風味が上品な余韻を生む、奥深さがたまらない。
この濃厚なスープが、太めの麺に絡む。歯切れがよく、コシがある上にモッチリとした弾力感もあり、箸が止まらなくなる。モヤシやタマネギといった野菜によるシャキシャキ食感もいい。
さらにトッピングのチャーシューや味玉、羅臼昆布が、食欲を加速させていく。スープに浸して味噌の香りとともに味わうと、各具材の旨味がグッと増す。
ちなみに、お好みでニンニクを追加することも可能だ。今回はひとかけらを絞ってから食べたが、食後の予定に影響がなければ、ニンニクをガツンと効かせてもよさそう。
気が付けば、器に口をつけてスープを飲み干していた。お行儀は悪かったかもしれない。でも、もったいなくてスープを残す気になれなかった。スープを含めて完食したときには、満腹感と満足感に包まれていること間違いなし。
地域で愛される店を受け継ぐ息子夫妻の新たな挑戦
『サッポロラーメン味七』がオープンした当時、中野はまだラーメン激戦区ではなかった。「最初はラーメン店なんか中華屋を含めて5、6軒しかなかった」と義弘さんは振り返る。そこで、いまも中野の人気店であり続けられる理由を聞いてみた。
「わからないですよ(笑)。いや、とにかく夢中でしたよね。おかげさまで開業当初からずっと来てくれているお客さんは結構いらっしゃいますし、その当時は若かった方がいまではお孫さんがいるなんてこともあります。最近は『中野ブロードウェイ』目当ての海外の方も増えましたね」
70歳を過ぎた現在も厨房に立ち続ける義弘さん。いまのお気持ちを伺うと、少しはにかみつつ「息子ががんばってくれたらいいな、と思います」と答えてくれた。
息子である信哉さんと亜紀さんご夫妻が、この店に加わったのは2025年から。信哉さんが夜間の営業を始めたのは同年2月で、亜紀さんは9月に入ったばかり。そのため「まだまだ手探り状態」だと亜紀さんは言う。
「私たちが入る前は、お昼だけの営業だったんですよ。だからまだ夜が定着していなくて。昼間の常連さんに『あれ? 夜やってんだ』って言われて『息子夫婦で始めました!』みたいな感じです(笑)」
もともと亜紀さんが居酒屋の店長をしていたことから、夜はお酒の提供をスタート。信哉さんは「お酒を出すと、にぎやかになるので」と手応えを感じているようだ。
ご家族4人で店を切り盛りすることについて「パパとママ(義弘さんと久仁子さん)がすごくやさしくて、超おもしろい」と亜紀さん。抜群のチームワークで、この先もどんどんお店を盛り上げていってほしい。
サッポロラーメン味七(サッポロラーメン あじしち)
住所:東京都中野区中野5-56-13/営業時間:11:30~21:00LO(スープがなくなり次第終了)/定休日:無/アクセス:JR中央線・地下鉄東西線中野駅から徒歩5分
取材・文・撮影=上原 純