九州では「アラカブ」と呼ぶ「カサゴ」 <海の美容液>とも言える栄養満点の魚【私の好きなサカナたち】
Webメディア『サカナト』には様々な水生生物好きのライター(執筆者)が所属しています。そんなライターの皆さんが特に好きなサカナ・水生生物について自由闊達に語らう企画「私の好きなサカナたち」。今回はサカナトライター・河野ナミさんによる「私の好きなサカナたち」をお届けします。
九州では「アラカブ」と呼ばれている「カサゴ」。
ゴツゴツした頭に、岩のような模様。その武骨な見た目からは想像できないかもしれませんが、ユニークな見た目に反して、「海の美容液」と言えるほど、美と健康を支える栄養素を秘めたサカナなのです。
アラカブの生態と由来
アラカブは、泳ぎ回らず、岩の隙間やテトラポッドの間、海底の隙間を住処にして外敵から身を守っています。
体の色や模様を周りの岩や海藻そっくりに擬態させ、エビや小魚が油断して近づいた瞬間、大きな口でバクッと丸呑みにしてしまうハンターです。
頭や背ひれなどには硬いトゲがあり、刺されても命に別状はないとされていますが、腫れや痛みが出る場合もあります。万が一の事故を防ぐためにも、アラカブを触る際にはフィッシュグリップの活用や厚手の軍手を着用しましょう。
ちなみにカサゴは、漢字で「笠子」と書きます。名前の由来には諸説あるものの、頭が大きく笠をかぶっているように見えることから名付けられた説があるようです。
アラカブは美容と健康の味方
アラカブは「海の美容液」とも言えるほど、栄養豊富なサカナです。
まず、アラカブはとっても高タンパク・低脂肪な白身魚です。ダイエット中の方や、トレーニングでカラダづくりをしている方にもぴったりの食材と言えるでしょう。
また、消化吸収も良いので、お年寄りやお子様、体力が落ちている時の栄養補給にも最適です。
そして、特に女性に嬉しいのが天然のコラーゲンです。アラカブの皮やヒレの付け根、唇のあたりには、プルプルのコラーゲンがたっぷり含まれています。煮つけや味噌汁にすると、このコラーゲンが汁に溶け出すので一滴残らず飲み干すのがおすすめです。
さらに、カルシウムの吸収を助けて骨を丈夫にするビタミンDや、疲労回復効果が期待できるタウリンも含まれています。まさに、スーパーフィッシュなのです。
捨てるところナシ! アラカブを丸ごと味わおう
そんなアラカブは捨てるところがありません。丸ごと味わえる調理方法を4つご紹介します。
刺身
何といってもいちばんは、アラカブの刺身です。
釣りたてのアラカブは、モチモチした身に、少し甘みとコクのある味が特徴です。冬から春にかけて脂ののる時期はさらに甘みが増していて美味です。
刺身を食べる際には、新鮮なものを使い適切な下処理をしましょう。私は、刺身の中でアラカブがいちばん好きです。
お味噌汁
アラカブの刺身を作ったら、残ったアラ(頭、ひれ、骨)を使ってお味噌汁を作ってみてください。とても良い出汁がでます。
天然コラーゲンがたっぷり出るので、美味しくカラダを温めながら美容にも効果的です。
唐揚げ
少し小さいアラカブが釣れたら、ぜひ唐揚げにしてみてください。
背びれの両側を包丁で深めに切り込み、水気をふき取ったら、塩コショウとかたくり粉をまぶします。
最初は160度の油でじっくり揚げ、一度取り出したら、油の温度を180度にして二度揚げしてください。身はプリっと骨はザクッとして美味です。
煮つけ
アラカブは煮つけもおすすめです。
下処理後のアラカブを鍋に入れ、砂糖、醤油、みりんを加えてからひと煮立ちさせます。ショウガをひとかけら入れ、中火で10分ほど煮つけると完成。しっかりと味がしみこみ、プリっとした身が美味しいです。
骨が多く食べるのに手間がかかりますが、それに勝る美味しさがあり、とりこになります。そして翌日残った煮汁をご飯にかけて食べてください。天然コラーゲンも摂取できます。
カサゴは釣りでよく見かけるけどあまり売ってはいない
美容と健康のために、アラカブをスーパーに探しに行こうとするかもしれませんが、あまりお店では売っていないサカナではあります。
アラカブは、磯釣りでよく上がる魚なので釣り好きの知り合いがいれば、お裾分けをお願いしてみるのも良いでしょう。地域によっては、魚市場や鮮魚店などで手に取ることもありますので、ぜひ探してみてください。
ぜひアラカブを丸ごと味わってくださいね。
(サカナトライター:河野ナミ)