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第10回 2025.1.5の開催が迫る「WRESTLE DYNASTY」~AEWと新日本の思惑が絡み合うオカダ・カズチカのマッチメイクを大胆予想~

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第10回 2025.1.5の開催が迫る「WRESTLE DYNASTY」~AEWと新日本の思惑が絡み合うオカダ・カズチカのマッチメイクを大胆予想~

盟友ヤングバックスの試合に不敵な笑みで乱入するオカダ・カズチカ。来年1.5に控える「WRESTLE DYNASTY」での対戦相手は一体誰になるのか?
– 2024年10月30日(現地時間) オハイオ州クリーブランド ウォルスティン・センター

このコラムでは、アメリカプロレスマットであるAEWで活躍する日本人選手について紹介してきたが、今回は来年2025年1月5日に開催が迫る、新日本プロレス(以下、新日本)との合同開催の形ではありながらも、AEWとして初の本格的な日本上陸を果たすこととなったPPV大会「WRESTLE DYNASTY(レッスル・ダイナスティ)」における”レインメーカー”オカダ・カズチカの対戦カードについて、独断と偏見の上、考察してみたい。

■AEWと新日本との間に開かれた「禁断の扉」

AEWと新日本という両団体の蜜月関係は、遡ること2年前の2022年のAEW主催のPPV大会「Forbidden Door~禁断の扉」の開催から本格的にスタートしたといえるだろう。無論、それ以前にもAEWのリングには新日本所属のレスラーが、スポット参戦の形で幾度もあがった経緯があり、両者の間には良好な関係が保たれていた。だが、通常放送ではなく視聴者が別途購入してしか観ることのできないPPV放送を、両団体が全面的に手を携えて開催した大会はこれが初の試みだったのだ。

その名の通り、「禁断の扉」を開けたかのような両団体のトップレスラー同士のマッチメイクの数々は、期待以上の大きな盛り上がりを見せ、好勝負が連発するという記録的な大会となった。なお、皮肉というべきか、開催当時にはまだ新日本の所属選手であったジェイ・ホワイト、ウィル・オスプレイ、そしてオカダ・カズチカというビッグネームがその後AEWへの移籍を果たしたことは、記憶にも新しい。

やや新鮮味が欠けてきている面は若干否めないものの、「禁断の扉」はAEWにおける常連のPPV大会のラインナップとして継続して開催されている。そんな両団体の協力のもと開催されていた大会が、今回は主催する側が新日本、協力する側がAEWというその立場を変えた形式開催されるのが、来年1月5日東京ドームでの「WRESTLE DYNASTY」なのだ。

■オカダ・カズチカによって日本におけるAEWの評価は決まる!?

ちなみに、この原稿を執筆している時点で、「WRESTLE DYNASTY」のおける対戦カードは、前述したザック・セイバー・JrとリコシェのIWGP世界ヘビー級王座戦以外にはまだ発表がなされていない。そんな中、やはり注目したいのは、今年2月に新日本退団を発表し、同年5月にAEWへの電撃的な移籍を果たしたオカダ・カズチカの出場ということになるだろう。もちろん、古巣である新日本との合同興行である以上、”AEWのトップレスラー”としての立場はもちろんのこと、日本のファンにとっての認知度がいまだ高いオカダの名を出場ラインナップに連ねるのは、興行という観点からしてももはや至上命題と言える。

だが、ここで気がかりな点が一つある。すなわち、誰がオカダの対戦相手としてピックアップされるのか、という点だ。

AEWにおいて、オカダが戴冠しているコンチネンタルクラウン王座を大会当日まで保持しているという前提ながら、もちろんそのベルトを賭けたタイトルマッチになるのは必須だ。だが、現在までの同王座を巡る争いではライバルらしいライバルが見当たらず、ストーリーという観点から見ても正直かなりトーンダウンしているように見受けられる。タイトルマッチが時折組まれてはいるものの、当然のようにオカダが勝利して同王座を防衛する流れは、さも当然といった雰囲気で大した興奮もないのが実情だ。

AEWとしても米国内でのPPV大会でもあることから、王座を巡る攻防が今後も繋がっていくような対戦相手が望ましいだろうが、オカダにとっては日本へのいわば凱旋興行的なニュアンスを背負わされることも当然考慮に入れなければならない。つまりは、仮に対戦相手にAEWの所属選手が充てられるなら、米国同様にそれほどのスイングは期待できず、かといって過去にオカダと対戦経験のある新日本の選手が選ばれるようであれば、”名勝負の再燃”のような意味合いが強くなり過ぎ、AEWを日本のファンにアピールするという意味でも、これもあまり得策とは思えない。いわばオカダのマッチメイクについては、こうした”こちらを立てればあちらが立たず”のいわば板挟みの状態にあるように思えるのだ。

オカダが新日本での安定した地位を、かなぐり捨ててまで移籍したAEWという団体の凄さや素晴らしさを、オカダ自らが試合を通して日本のファンに見せつける絶好の機会でありながらも、それが果たして東京ドームに大挙して集まる観衆が納得できる形にまで昇華できるのかという点において、極めて高いハードルのように筆者には思えてならない。ここでもし万が一、引退ファイナルカウントダウンの対戦相手として棚橋弘至の名が挙がるようであれば、それこそ目も当てられない事態だ。

となれば、おのずと最高の対戦相手となりうるのは、現AEWの副社長にして現役最高のレスラーとも称されるケニー・オメガ、ただ一人という結論しか出せそうにない。だが、ケニー自身はマイケル中澤氏にインタビューした当コラムでも詳細したように、憩室炎という重病からの快復の最中であり、いくら彼が超人的であっても1.5当日までにはおよそ満足いくパフォーマンスは出せないように感じられる。その上ケニーは現在、11月4日に起きた新日本所属のゲイヴ・キッドとの因縁含みの乱闘騒ぎに巻き込まれて、まだ噂の域は出ないながらも、出場するのであればゲイヴとの一戦が濃厚だとの見方もある。

とすれば、上記の条件を満たすオカダの対戦相手に足りうるレスラーは一体誰なのか?

■オカダの対戦相手として推したい”二人の男”

ここで筆者としては大胆に予想してみたいと思うのだが、おぼろげながらある二人の日本人選手の名前が浮かんでいる。

まず一人目は、かなりベタといえばベタな予想だが、AEWの現インターナショナル王座のチャンピオンとして君臨する竹下幸之介だ。これまでAEWでもニアミス的な展開はあったものの、なかなか本格的なストーリーとしては発展していないため、「WRESTLE DYNASTY」で両者のダブルタイトルマッチが実現すれば、AEWファンとしても納得できる展開を期待できる上に、日本での凱旋興行という意味でも非常にバリューの高い一戦としてアピールすることができる。

加えて、竹下の実力は既に今年のG1クライマックス初出場を通して、新日本のファンにもかなり強烈なインパクトを残しているだろうことは想像に難くなく、オカダに肩を並べる対戦相手としてまったく遜色のないレスラーと言えるだろう。さらに、この対戦カードの素晴らしいところは、どちらが勝者になってもAEWから王座が流出しないというメリットまであるのだ。どういう結果になっても、本場AEWに戻ってからの流れもスムーズに構成しやすいのは、もっとも捨てがたい点だ。こうした様々な要素を考慮すれば、竹下の抜擢はかなり順当な選択肢と言えなくもない。(※その後、この原稿の配信直前に竹下と新日本・鷹木との対戦が前日1.4大会で行われることが発表された。)

だが、あえてもう一人の候補を期待を込めて挙げるとするなら ――― 。

かつてオカダにはAEWに移籍する以前、新日本で決着をつけきれなかった選手が居たことを思い起こしてしまう。その男は、新日本のG1クライマックスの決勝戦という大舞台で相対しながら、試合中の不慮のアクシデントにより試合続行が不可能となり、ドクターストップという無念の裁定でオカダに敗れるという屈辱を味わったレスラーだ。

その男、すなわち”飯伏幸太”ほど、「WRESTLE DYNASTY」という晴れの舞台に、オカダの対戦相手としてふさわしいレスラーもいないのではないか。しかも、飯伏は現在はAEWの所属選手という点も重要なキーポイントだ。竹下の場合と同様、仮に王座交代劇が起きたとしてもベルトは流出することなくAEWの手元に残り、王者飯伏を中心としたストーリーが展開できるという条件も揃っている。そして何より、かつての新日本所属選手だったレスラーが、AEW所属の日本人選手として東京ドームの舞台で闘い合うという構図こそ、AEWという団体の存在感を日本のファンに強烈に知らしめる最高の機会となるのではないだろうか。

このコラムに前後して、おそらくは対戦カードが出揃うものと思うが、果たして筆者の妄想じみた予想が的中するのか否か。いずれにせよ「WRESTLE DYNASTY」大会の全容の発表を、期待と不安の中固唾を呑んで見守りたい。

岩下 英幸


(いわした・ひでゆき)

AEWインフルエンサー。ゲームクリエイター。1970年、千葉県生まれ。幼い頃からゲームセンターやファミコンに親しみ、それが高じてゲーム業界入り。プロレスを題材に開発した「バーチャル・プロレスリング」シリーズが国内外で高い評価を獲得し、米ゲームエキスポ「E3」では、格闘ゲーム部門の最優秀賞を2年連続で受賞する快挙を達成。現在、奥深いプロレス知識をもとにAEWにまつわる執筆活動中。最新作は2023年製作の「AEW : FIGHT FOREVER」。

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