なぜ「幻の名作」となったのか？映画史を変えた『シュリ』が4Kで復活！チェ・ミンシクやソン・ガンホら豪華キャストの歩みを振り返る
「映画の世界地図」を書き換えた奇跡的作品
“韓流”の原点にして頂点といえる傑作映画『シュリ』が、このたび『シュリ デジタルリマスター』として4Kデジタルで鮮やかに復活。9月13日（金）より日本全国で順次公開される。
1999年2月13日に韓国で公開された『シュリ』は、あの『タイタニック』を超える621万人を動員し社会現象に。翌年公開された日本でもその完成度の高さがクチコミで評判を集め、当時の韓国映画としては空前の興行収入18億円を突破する大ヒットを記録した。
その後、上映権が宙に浮く事態となったことで劇場上映・配信などが難しくなり、「映画の世界地図を描き換えた奇跡の1作」「韓流の始祖」などと語り継がれながらも観ることが叶わない、<幻の傑作>となっていた。それでも、「是非もう一度観たい」という途切れることのない再上映の熱い声に応えようとカン・ジェギュ監督自身が粘り強い権利交渉を重ねた結果、その努力が実を結び、ついに韓国公開から25周年の記念すべきアニバーサリー・イヤーに劇場で再上映されることとなった。
今や国民的スターとなった“あの超人気俳優”の若手時代に注目！
要人暗殺事件を捜査中の韓国情報部員、ユ・ジュンウォン（ハン・ソッキュ）とイ・ジャンギル（ソン・ガンホ）。犯人と目される北朝鮮の女性工作員を追跡するふたりは、強力な破壊力を持つ液体爆弾を用いてのテロの脅威を知る。ターゲットは南北両首脳――。
韓流の原点とも言える『シュリ』の注目ポイントのひとつは、韓国公開から25年を経て、今や俳優として確固たる地位を確立した出演者たちの豪華競演だ。そして韓国映画ファンには言わずもがなだが、実は“あの超人気俳優”の若手時代の出演作でもある。
カン・ジェギュ監督はデジタルリマスター版の日本公開に寄せて「彼らの25年前の姿を見るのも楽しみのひとつではないでしょうか」と語るが、近年の韓国映画の勢いをそのままなぞるようでもある出演者たち5人のその後の歩みから最新作まで一挙紹介する。
『シュリ』のキャストから現代韓国映画の“強さ”がわかる？
ハン・ソッキュ
主人公の韓国情報部の室長ユ・ジュンウォンを演じたハン・ソッキュは『シュリ』公開当時、あらゆる出演作がヒットし「興行の保証手形」という異名を持っていた大スターで、日本における韓流ブームの立役者のひとりとも言える。その後も『二重スパイ』（02）、『スカーレットレター』（04）、『ベルリンファイル』（13）、『悪の偶像』（19）など息の長い活動が続く。ハングルを生み出した朝鮮王朝の君主を演じた『世宗大王 星を追う者たち』（19）では本作のパク・ムヨン役であるチェ・ミンシクと久々の共演を果たした。
主演ドラマ「こんなに親密な裏切り者」が韓国で10月に放送開始。
キム・ユンジン
ユ・ジュンウォンの婚約者でアクア・ショップを経営するイ・ミョンヒョンを演じたキム・ユンジンは、映画初出演となった本作が大きな成功をおさめ、大ヒット米ドラマ「LOST」シリーズ（04-10） などアメリカでも活躍。アメリカのエージェンシーと初めて契約した韓国人俳優となったという。2001年には日本映画『RUSH！』で哀川翔とダブル主演を果たしたほか、『国際市場で逢いましょう』（14）、『時間回廊の殺人』（17）、主演作『告白、あるいは完璧な弁護』（22）など多くの作品に出演。
11月1日に日本公開となる、動物病院が舞台の物語『DOG DAYS 君といつまでも』にも出演。
チェ・ミンシク
北朝鮮特殊部隊のパク・ムヨンをカリスマ性たっぷりに演じたチェ・ミンシクは、韓国映画として“北朝鮮の人間を初めて魅力的に描いた”ことも高く評価された本作を大きくけん引。その後、主演作『酔画仙』（02）がカンヌ国際映画祭で韓国映画として初めて監督賞を受賞したほか、パク・チャヌク監督作『オールド・ボーイ』（03）で日本でも大ブレイク。『親切なクムジャさん』（05）、『悪魔を見た』（10）、『不思議の国の数学者』（22）など、韓国映画界を代表する名優として活躍中。
今年韓国で大ヒットした主演作『破墓／パミョ』が10月18日に日本公開される。
ソン・ガンホ
ユ・ジュンウォンの相棒捜査官イ・ジャンギルを演じたソン・ガンホは、『シュリ』の翌年に『JSA』（00）に出演し、以降も『殺人の追憶』（03）、『渇き』（09）、『タクシー運転手 約束は海を越えて』（17）、非英語映画として史上初めてアカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』（19）などをはじめ近年の韓国映画を代表する数々の作品に主演。是枝裕和監督作『ベイビー・ブローカー』で2022年にはカンヌ国際映画祭で韓国人俳優として初めて最優秀男優賞を受賞した。
主人公の相棒役という重要なキャスティングに際し、まだ知名度もなかったことから周囲からは懸念の声もあったという。監督はそれに対して「ソン・ガンホさんはチャンスに恵まれればきっと大成する俳優です」と説得し、自信のキャスティングだったことを振り返っている。
今春より初のドラマ主演作「サムシクおじさん」が日本でも配信されている。
ファン・ジョンミン
今年、韓国で歴史的ヒットとなった主演作『ソウルの春』が日本公開中のファン・ジョンミンは、日本では毎年ペースで主演作が公開され、現在もっとも精力的に活躍している人気俳優のひとりだが、実は『シュリ』に端役で出演している。カン・ジェギュ監督によると、『シュリ』はオーディションでのキャスティングだったそう。ジョンミンがどのシーンに出演しているのか、ぜひ映画館でチェックしよう。
カン・ジェギュ監督は本作で当時20代のフレッシュな若手俳優を多く起用しており、今回紹介した5人以外にも、『別れる決心』（22）や『スピリットウォーカー』（21）などのパク・ヨンウが“コネ入社”と散々いじられる新人捜査官のオ・ソンシクを演じているほか、『ファイ 悪魔に育てられた少年』（13）などのチャン・ヒョンソン、『私は王である！』（11）などのキム・スロなどなど多くの俳優が出演。もしかしたら、あなたのお気に入りの俳優も出演しているかも？
『シュリ デジタルリマスター』は2024年9月13日より（金）シネマート新宿ほか全国ロードショー