「僕にとって“言葉”は“自由”を意味するんだ」ろう者の少年の成長を追う『ぼくの名前はラワン』本予告
ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭ほか、世界の映画祭を席捲、米レビューサイト「Rotten Tomatoes」では100%フレッシュを獲得(2025年11月18日時点)するなど、高い評価を得ている注目のドキュメンタリー『ぼくの名前はラワン』が、2026年1月9日(金)より公開される。このたび、本ビジュアルと本予告が解禁となった。
世界の映画祭が絶賛!
本作は、生まれつき耳がきこえない〈ろう者〉の少年ラワンが、手話を自身の言語として習得し成長していく姿を、ダイナミックで抒情的な映像と壮大な音楽で描写していく珠玉のドキュメンタリー。
イラク領クルディスタンで生まれ、じゅうぶんな教育を受ける環境がなく、言葉を発する術がなかったラワン。そんな彼を案じた両親は、彼が5歳の時に難民としてヨーロッパへ渡ることを決意する。家族は、危険な旅と難民キャンプでの過酷な経験を経てイギリスの都市ダービーへ。ラワンはダービー王立ろう学校へ通えることになり、新しい出会いと学びによって自分の意志で手話を覚えていくが……。幼い頃のトラウマ、家族とのコミュニケーション不全、難民認定のプレッシャー、そしてイギリス政府からの国外退去命令。やっとの思いでダービーに辿り着いたラワンら家族に様々な困難が立ち塞がる。しかし、本作が描くのは困難のなかでも、ひとりの少年が明るい未来に向かって歩んでいく姿。アイデンティティや大切な仲間、自分の居場所を見つけることを祝福する、この希望に満ちた物語は、国境や属性を超え、人々の心に刻まれることだろう。
監督・脚本を務めたのは、これまでSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)やBFIロンドン映画祭などで高い評価を受けてきたエドワード・ラブレース。ラワンのことを知ったラブレース監督は、2019年にラワンと対面。そこでコミュニケーションを求め、殻を破ろうとするラワンに心動かされ、クルド人やろう者のプロデューサーらと撮影チームを組み、4年もの年月をかけてイギリス手話や友情がラワンを成長させていく姿をカメラに収めていった。
本予告は、ふたりの少年が教室でゲームをする場面からスタート。見ているこちらも思わず微笑んでしまうほど可愛らしく、楽しそうだ。そのゲームをしようと誘っているのが、本作の主人公で難民としてイギリスに渡った生まれつき〈ろう者〉でクルド人の少年ラワン。両親や兄の思いも語られる中で、生まれて初めて学んだ「手話」という言語をラワンは自ら選択する。予告の最後には、僕にとって〈言葉〉は〈自由〉を意味するんだ。と本作のキャッチコピーが映し出され、続きが気になる予告となっている。
本ポスタービジュアルには、澄んだ青い空を背景にラワンが満面の笑顔で友人を見ている写真が採用された。監督・脚本を務めたエドワード・ラブレースは、2019年にラワンと対面し、製作過程で監督自身もイギリス手話を習得。4年もの年月をかけて信頼関係を築き、イギリス手話や友情が孤独だったラワンを成長させていく姿をカメラに収めていった。本編には、このポスタービジュアルのように、ラワンら子供たちの良い表情を映すことに成功している点にも注目してほしい。
<コメント>
宇多丸(RHYMESTER)
社会の決めつけるマイノリティ的枠組みに押し込められてきた視野が、「自分のことば」の獲得を通じて爆発的に拡がってゆくプロセスを、まるで我がことのように体感させられる……今の日本でこそ多くの方に観て、考えていただきたい、美しい作品です。
齋藤陽道(写真家)
国境も、音声も、愛も、孤独も、願いも、心も、地球も……すべてが混じりあいながらラワンの手が動く。その手話が滑らかになるにつれ、ラワンの心もまた広がっていくのがわかる。この映画は、ひとりの少年が沈黙から言葉を紡ぎ出すに至る軌跡を見つめている。その視線が問いかける。言葉とは何か。伝えるとは何か。人と人とが触れ合うとは、どういうことなのか。 ラワン。ラワン。映画を見終えたあとは、彼の名前が胸の中でこだまするだろう。
本作は、12月3日(水)に「第20回難民映画祭」(主催:国連UNHCR協会)で特別先行上映された後、2026年1月9日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開。