【倉敷市】くらしき名玄 〜 元祖セルフうどん店が倉敷に!長年愛されるダシや麺にもこだわりが。話題の「名玄GO」で倉敷を楽しく散策
「セルフうどん店の元祖」といわれる店が、岡山県にあるのを知っていますか。
岡山市中区平井にある「名玄(めいげん)」という店です。その名玄が、倉敷美観地区に二号店を出しました。
それが「くらしき名玄」です。
本店と同じく、セルフ方式でうどんを提供。
自分で麺を湯煎(ゆせん)し、ダシを注ぎ、薬味を載せていきます。
好きなものを取っていくサイドメニューも、天婦羅(てんぷら)やおにぎりなど多彩なラインナップ。選ぶのがとても楽しいです。
くらしき名玄の魅力について、深掘りをしていきましょう。
「セルフうどん店の元祖」の二号店・くらしき名玄
くらしき名玄は岡山市中区平井にあるうどん店「名玄」の二号店として、2023年(令和5年)3月にオープンしました。
場所は倉敷美観地区の本町通り沿いにある、かつての商家を改装した建物「あちの郷」の中。
あちの郷には3店が入居しており、そのひとつがくらしき名玄です。
くらしき名玄が入居する建造物は、かつて商家の離れだった場所。
天井にある梁(はり)などが、趣を感じさせます。
なお名玄の本店は、岡山市中区の平井で1976年(昭和51年)に創業しました。
名玄はセルフうどん店の元祖とされており、創業時よりセルフ方式でうどんを提供。
現在でもセルフうどんの人気店として、連日多くの人が訪れています。
くらしき名玄も本店と同じくセルフ方式です。
店内はテーブル席と座敷があります。
座敷があるのは、子連れや年配者などにとってうれしいポイントではないでしょうか。
また屋外の軒下に木製ベンチが並んでおり、こちらでも飲食が可能。
屋外ベンチで食べる場合に限り、犬の同伴ができます。
くらしき名玄のメニュー
2024年(令和6年)10月時点の情報
くらしき名玄のうどんメニューは「かけうどん」「醤油うどん(温・冷)」「ざるうどん」「ぶっかけうどん(温・冷)」の4種類。
ざるうどんには、通常のざるうどんのほかに、つけ汁がクルミ風味の「くるみうどん」もあります。くるみうどんは、くらしき名玄オリジナルメニューです。
各うどんの量は小(1玉)・中(1.5玉)・大(2玉)があります。
なお、1玉は200gです。
くらしき名玄はトッピングが豊富なのも特徴。
しかも岡山の本店よりも多彩なトッピングの種類がそろっています。
店内には人気のトッピング例が掲示されていますので、参考にしてください。
トッピングにより好みのアレンジができるのが、セルフ方式であるくらしき名玄のポイントのひとつです。
各種天婦羅類、おにぎり・やきとりなども充実しており、どれにしようか悩むのも楽しみのひとつ。
またくらしき名玄ではテイクアウト専用メニューとして、カップ入りのうどん「名玄GO(ゴー)」もあります。
セルフ方式による提供
かけうどんはフルセルフ方式による提供となり、かけうどん以外はセミセルフ方式での提供となります。
フルセルフはうどんの湯煎・ダシ投入から、トッピング・サイドメニューの選択までを自分でやり、セミセルフはトッピング・サイドメニューの選択だけを自分でやる方式です。
まずお盆を取って飲用水(お冷)を注いだあと、かけうどんがほしい場合は提供台に置かれたうどんの入った丼を取ります。
かけうどん以外がほしい場合は、スタッフに声をかけて注文してください。
またうどん提供台の下には、多くのトッピングが並んでいます。お好みでうどんにトッピングしたい具材を選んでください。
かけうどん以外を注文した場合は、スタッフからうどんを受け取ってサイドメニューコーナーへ進んでください。
以下は、かけうどんのときの手順です。
うどんを選んだら横にある湯煎器で、手ザルにうどんを入れ、湯につけて湯煎します。
湯煎時間の目安は10秒前後ですが、時間は好みで調整してください。
湯煎したらシッカリと湯切りをして丼に戻し、湯煎器の横にあるダシの供給器で、丼にダシを注ぎます。
ダシの供給器の次は、サイドメニューコーナーです。
天婦羅などの揚げもの、おにぎり、やきとりといったサイドメニューが陳列されているので、好みで取ってください。
またサイドメニューコーナーには無料のネギや天カスなどのトッピング・薬味がありますので、好みで入れます。
最後にサイドメニューコーナー横にあるレジで、会計します。
支払いがすんだら、好きな席に座って食べましょう。
食べたあとは、レジ横にある返却口へ食器類を返してください。
なお名玄GOの注文は、うどんの提供場所でしてください。
人気・おすすめのメニュー
くらしき名玄の人気メニュー、店のおすすめのメニューを紹介しましょう。
かけうどん
名玄といえば「かけうどん」(小)です。
自分で湯煎し、ダシを入れ、刻みネギ・天カスを入れて完成です。
食べる前から、ダシの心地よい匂いが香ります。太めのうどん麺は、食べごたえがあります。
モッチリとした弾力ある食感と力強いコシがあり、ダシと絡んでおいしいです。
ダシを飲むとやや甘めの味わいで、甘味と適度な塩味とともにダシの豊かな風味が広がります。
本店は甘口・辛口の2種類のダシがありましたが、くらしき名玄は甘口ダシの1種類のみです。
かけうどんのダシ(甘口)は、おもにカツオ・コンブで取り、そこに3種類の醤油を加えているとのこと。
岡山の本店創業時からほぼ変わっていない味わいだそうです。
名玄では、うどんダシで定番とされているイリコを使っていないのが大きな特徴。
これにより名玄独自の上品な風味に仕上がっています。
くらしき名玄はトッピングが豊富で、好きな具材を載せてさまざまなアレンジができるのが魅力です。
かけうどんのアレンジとして人気なのが、牛肉・温泉玉子をトッピングしてできる「肉玉うどん」だそう。
ダシの風味と牛肉煮の甘辛い味わいと牛肉の風味、温泉玉子の黄身のまろやかさが一体となり、なんともいえないクセになる味わいを楽しめます。
ぶっかけうどん(冷)
「ぶっかけうどん」(小)の冷を食べました。
注文後、うどんにツユと刻み海苔がかかった状態で渡されます。自分で刻みネギ・天カス・薬味類を載せてください。
ツユは少なめに入っており、具材を混ぜ合わせて食べていきます。
濃いめの色をしたツユは、かけうどんのダシよりも甘味が強いのが特徴。
麺にツユをシッカリと絡めて食べると、甘いツユの味わいと麺のマリアージュが味わえます。
ぶっかけうどんのトッピングアレンジで人気があるのが、梅シソ・ダイコンおろしのトッピングととり天を載せた「とり梅おろしうどん」です。
冷たいぶっかけうどんでしたので、ヒンヤリとした甘いツユとサッパリとしたダイコンおろしの相性が抜群。
さらに甘酸っぱい梅干しの風味が、サッパリとした味わいにまとめ上げました。
そこにとり天の香ばしさが加わり、食欲をそそります。
天婦羅
くらしき名玄の天婦羅の人気トップ・スリーを選んでみました。
人気1位は「とり」。
さきほど紹介した、ぶっかけうどんにトッピングする「とり梅おろしうどん」のように、うどんのトッピングとして選ぶ人が多いとのことです。
衣はサクッとして香ばしく、鶏肉は大きめサイズ。
天婦羅のなかでも食べごたえがあるのも、人気の理由でしょう。
2位は「エビ」。
エビ天はうどんにトッピングする天婦羅として、よく見かける定番商品です。
名玄でも安定的な人気があるとのこと。
サクッと香ばしい衣と、プリッとしたエビの身の相性は抜群です。
3位は食べごたえがある「ゲソ」。
とても大きく、インパクトがあります。
香ばしいサクッとした衣と、ムチムチとした弾力のある歯ごたえが最高です。
サイドメニューコーナーに専用ハサミがありますので、好みの大きさにカットできます。
なお、ゲソ天と同率3位くらいで「チクワ」も人気があるそう。
名玄GO
「名玄GO」はテイクアウトのみのメニューで、とても人気があります。
コーヒーショップのカップのような容器にうどん1玉と具材が入っており、持ち歩きしやすいのがポイントです。
2023年夏に発売した名玄GOは好評で、当初2種類だったメニューも4種類まで増えています。
名玄GOの種類は、以下のとおり。
・山かけ明太GO(メイン具材:ヤマイモのトロロと明太子)
・肉GO(メイン具材:牛肉のしぐれ煮)
・温玉GO(メイン具材:温泉玉子)
・梅チキGO(メイン具材:梅干しとほぐし蒸し鶏)
名玄GOは本店にもあるメニューですが、くらしき名玄での販売を前提に生まれた商品だそうです。
美観地区は観光地のため、散策する人が多いのが特徴。
その特徴に合った、倉敷ならではの商品はつくれないかと考えて生まれたとのことです。
散策しながら、ベンチなどで一休みしてうどんを食べる。
お気に入りの場所で、名玄GOと写真を撮ってSNSへ投稿する。
そんなコンセプトのテイクアウト専用うどんが、名玄GOです。
倉敷散策のおともに、名玄GOはいかがでしょうか。
元祖セルフうどん店として知られる名玄が新たにオープンさせた、くらしき名玄。
運営する株式会社 名玄の代表取締役・平井秀和(ひらい ひでかず)さんにインタビューしました。
名玄の代表・平井秀和さんへのインタビュー
元祖セルフうどん店として知られる名玄が新たにオープンさせた、くらしき名玄。
運営する株式会社 名玄の代表取締役・平井秀和(ひらい ひでかず)さんにインタビューをしました。
昭和47年に岡山市で開業したセルフうどん店の先駆者
──名玄の創業の経緯について知りたい。
平井(敬称略)──
セルフ方式のうどん店を思いついたのは、先代であり私の父である平井芳和(ひらい よしかず)です。
うどん店を創業するにあたり、開業資金の関係や、競合する多数のうどん店との差別化のために「かけうどん 1杯 100円」という条件を定めました。
当時かけうどん 1杯100円はインパクトが強く、たくさんある競合他店に勝つにはこれで挑むしかないとの思いだったと聞いています。
かけうどん 1杯100円の条件をクリアするために考えついたのが、お客様に提供する工程の一部をお手伝いしてもらうという「フルセルフ方式のうどん店」だったのです。
しかし、ここで思いも寄らぬ壁が立ちはだかりました。
前例がないパターンだったため、保健所が衛生上の観点から許可を出せなかったのです。
問題になったのは、うどんを温める湯煎器でした。
調理スペースと食事スペースは隔絶する必要があり、食事スペースに調理器具である湯煎器を置いてはダメだったのです。
ただ例外もあり、それが焼肉店でした。
焼肉店は食事スペースの各テーブルに調理器具があり、客が自ら肉を焼いて食べます。
父・芳和は「当店の湯煎器は、焼肉店のコンロ・鉄板と同じようなものだ。焼肉店ではお客が肉を焼いて良いのだから、当店のお客がうどんを湯煎する行為も問題ないのではないか」と保健所の担当者に問うたそうです。
すると担当者はこの内容に納得し、保健所は許可を出すに至りました。
上司への説明には苦労したようでしたが……。
こうして1976年(昭和51年)に、平井の県道45号線(岡山玉野線)沿いに名玄がオープンしました。
最初はセルフ方式というものを、お客様へ理解してもらうのに苦労したそうです。しかし、自分で湯煎したり、天婦羅を選んだりする楽しさもあり、とくにお子様には好評だったそうです。
こうして少しずつ常連が増えていき、おかげさまで現在では多くのお客様にご来店いただけるまでになりました。
保健所に許可を得て、大々的にフルセルフ方式のうどん店として開業したのは、画期的なことだったそうです。
ただし「セルフうどん」という名は当時まだなく、当店が考えた言葉ではありません。
のちの時代に使われるようになりました。
新たな層の開拓として倉敷美観地区に二号店を出店
──倉敷美観地区に二号店を出した経緯を教えてほしい。
平井──
もともと現在くらしき名玄が入っている建物には、別の飲食店が営業していました。
しかし。その飲食店が閉業し、跡地を私の知人が購入したのです。そして知人が私に「倉敷美観地区にうどん店を出さないか?」と打診したのでした。
ちょうど私も、支店を出したいという考えがあったのです。
岡山の本店には、おかげさまで広範囲からお客様が訪れます。
岡山市以外の地域にも店があれば、そちらに近い地域のお客様は助かるのではと考えたからです。
倉敷はまさにうってつけの場所でした。
ただし本店は郊外です。
いっぽう倉敷美観地区は郊外ではなく、しかも観光地。
本店は仕事中の昼食や、子連れなどのご家族、ご年配のグループなどのお客様が多いです。
美観地区は観光客、しかも国内外の人が多く、客層がかなり異なると考えられました。またフルセルフ方式のうどん店自体も、知らない人が多いと思われます。
そこでフルセルフ方式のうどん店というものを知っていただく、岡山の本店のアンテナショップ的な意味も持たせることに思い至りました。
国内外の広い地域から人が訪れる美観地区は、アンテナショップとして最適な場所ですよね。
こうして2023年(令和5年)3月、倉敷美観地区に「くらしき名玄」をオープンしたのです。
最初の難関は岡山と倉敷の「水」の違い
──開店にあたり苦労した点は。
平井──
ダシづくりですね。
当初、ダシはくらしき名玄の店内で作る予定でした。しかし何度試しても、本店と味が同じにならないんです。
食材や調味料の分量もまったく同じ。気温や湿度への配慮もしていました。それなのに、なぜかいつも味が違ったのです。
いろいろ探った結果、原因は水にあるとわかりました。
本店の水は旭川の水。
いっぽう倉敷は高梁川の水です。
旭川と高梁川で、こんなにも味に違いが現れるのかと驚くと同時に、とても勉強になりましたね。
味は本店と均一にしたかったので、ダシも本店で倉敷の分も作り、麺とともに配送することにしました。
なお本店ではかけうどんのダシは甘口・辛口の2種類ありますが、倉敷ではダシを甘口の1種類にしています。
地域の味の好みを考えてのことです。
独自のこだわりで味わいを追求する麺
──麺へのこだわりを知りたい。
平井──
くらしき名玄の麺は岡山の本店で一括製造しています。
使用する小麦粉は、国産のもの。
製粉事業者に北海道産・九州産の小麦を、指定した配分でブレンドしてもらい、納入しているんです。
また麺製造の過程で、追加でグルテンやタピオカ粉などを入れません。これにより小麦本来の風味が感じられる麺になるよう、こだわりました。
グルテンやタピオカ粉を入れないことで、モチモチ感やコシがやや弱くなります。それを補うため、真空状態で小麦粉と水を混ぜる機械を導入しました。真空状態で混ぜることで麺に空気が入りこまず、モチモチ感やコシを出せるのです。
麺は不定期に何度もマイナー・チェンジして、ブラッシュアップしています。
折に触れて、よりおいしい麺になるよう追求しているんです。
倉敷ならではの特徴も
──本店とは異なる、倉敷の特徴はある?
平井──
本店はメインのかけうどんのほかにも、カレーうどんや氷うどんなど、多彩なメニューがあります。
倉敷ではメインのかけうどんのほか、醤油・ぶっかけ・ざるの4種類に絞りました。
これに倉敷オリジナルメニューのくるみうどんを加え、基本メニューは5種類です。くるみうどんは一定の根強いファンがいます。
また倉敷といえば「ぶっかけうどん」が名物。
ですから倉敷ではぶっかけうどんが非常によく注文されており、かけうどん・ぶっかけうどんが二枚看板のような状況です。これは本店にはない特徴ですね。
さらに倉敷ではトッピングの種類を豊富に用意しました。本店でもトッピングはありますが、倉敷のほうが多彩です。
いっぽう天婦羅・おにぎりなどのサイドメニューは、倉敷はかなり絞っています。
本店はサイドメニューの豊富さも特徴。ですが倉敷では、本店で人気のある商品をピックアップする形にしました。
というのも郊外にある本店は、しっかりと食事するお客様が多いですが、倉敷は逆であまりたくさん食べないのです。美観地区という観光地にあるため、ちょっとした食事やデザートなど、食べ歩きをされるお客様多いのが理由。
ほかに違うのは接客面ですね。
フルセルフ方式を知らない人も多いので、入店後に戸惑っているような雰囲気を感じたら、すぐにお声がけして店の説明をさせていただいています。
セルフ方式のやり方の説明も掲示し、さらに海外対応のために英語でも説明しています。
海外のお客様はとくにセルフ方式を楽しんでおられ、写真や動画でうれしそうに撮影している光景をよく目にしますね。
あと海外のかたは、天婦羅を非常によく召し上がります。
うどんより天婦羅を山盛りにして食べる人も多いです。
今後の展望
──今後の展望ややってみたいこと、課題点などを教えてほしい。
平井──
課題は人材面が一番です。
店の運営を通じて「飲食店をやってみたい」「うどん店の仕事をしてみたい」と思う人が増えるように営業をしていきたいですね。
やってみたいこととしては、一つはほかにも支店を出したいこと。
二号店となったくらしき名玄は、観光地という立地ですが、本店と同じように郊外の車で行きやすい店も出したいですね。
もう一つは、倉敷店ならではのメニューや企画をしてみたいです。
倉敷という地域性を感じさせるようなメニューですね。たとえば、地域の名産品を大胆に取り入れたようなメニュー。
また地域の人や団体とコラボレーションした企画もおもしろいんじゃないかと思っています。
倉敷という地域に出店した以上、土地の特色や文化を取り入れてみたいですね。
元祖セルフうどん店の二号店・くらしき名玄
倉敷美観地区付近にセルフ方式で提供するうどん店は少ないです。
そのため元祖セルフうどんである名玄の美観地区への出店は、注目といえるでしょう。
自分で湯煎したり、ダシを入れたり、好きなサイドメニューを選んだりできる楽しみがあるのがフルセルフ方式の魅力です。
くらしき名玄で、セルフうどんの魅力に触れてみませんか。