柔軟な発想でその土地に住まう人々に寄り添うパンを作り続ける【かいじゅう屋】(東京都・江戸川区)
「かいじゅう屋」という名前のパン屋さん、皆さんご存じですか?
一度聞いたら忘れられない、なんだか気になる名前ですよね。
午後のやわらかな日差しが差し込む店内
橋本宣之さん、美香さんご夫妻でお店を営まれています。
2007年、豊島区目白に「かいじゅう屋」をオープン。
週3日だけの営業ながら毎回行列のできる超人気店で、私もその頃から気になっていました。
2017年、立川に移転。
そして2020年、江戸川区江戸川にあるご実家の酒屋を改装し移転オープンされました。
東京メトロ東西線「葛西」駅から ⑤バス乗り場より新小22行きに乗り『江戸川5丁目』で下車。
バス停から徒歩5分でお店に到着。
私は葛西駅から街並みを眺めながらのんびり歩いて25分ほどでした。浦安駅からも20分強で歩けるようですよ。
お店の裏手に3台分駐車場があるので車で動かれる方にはありがたい限り。
都内で駐車場併設はなかなかないですものね。
店内の様子
木の温もりがたっぷり感じられ、手書きの商品名からもご夫婦の優しいお人柄が伝わってきます。
ついつい長居したくなる心地よさです。
平日の15時過ぎでしたので商品は少なめですが、翌朝用の食事パンやおやつに食べたくなるパンが並んでいます。
11時のオープンから順次焼きあがっていき、お昼頃に商品が多く並ぶそう。
美香さんが作る焼き菓子も大人気で、私も友人からプレゼントされた酒かすクッキーの美味しさが忘れられず、この日も楽しみに訪問しました。
こんなに種類があるのですね!
まずは美味しかったパンの感想から
◆かいじゅう屋食ぱん
四つ葉のクローバーを手にした“かいじゅう”の焼印がなんとも愛らしい。
しっかり焼きの香ばしさを感じるクラストにしっとりふんわりのクラム。
余計な甘さがないので毎日食べても飽きのこない美味しさです。
トーストすると表面カリッ、内側はもっちり。
バターを塗ったりチーズトーストにしたら自宅で極上のモーニングを味わえます。
◆まるぱんチーズ(写真右)
ミニ食パン?と思ってカットしたら見た目からは予想もできない量のチーズが!
ゴーダ&モッツァレラ&ステッペンの3種のチーズ入り。
チーズをとろけさせたくてトーストではなくラップしてレンジで20秒温めたら、パンほわっ、チーズとろ〜り。
あまり使いたくない表現ですが、あえての“ヤバい”美味しさです!!
まるぱんの生地は食パンよりふんわりとやわらかく、トーストしてももちろん美味しかったです。
◆3種類のチーズフランスぱん(写真左)
この日は生地に黒ごまを入れたバージョンでした。
ごまの香ばしい風味にチーズの焼けた香ばしさの相乗効果たるや、悶絶ものです!
まるぱんのように温めたらむちっとした食感。
こちらもチーズの量が贅沢すぎる!採算度外視すぎてこちらがお店の心配をしたくなるほどです。
トーストするとフランスパンのカリッとした食感が楽しめて、濃厚なチーズの味を受け止める生地の美味しさも感じられます。
◆チョコチップぱん山型
チョコチップをたっぷりと使い、カカオの濃厚な香りが広がります。
レーズン酵母による軽い酸味とチョコレートのビターな甘さのハーモニーがクセになる美味しさ。
トーストすると外はカリッ、中はむちっ&ほわわんとした食感。
焼くと甘みより酸味が立つので、甘酸っぱいベリーソースをかけたお肉に添えたり、食事パンとしても美味しくいただけると思います。
◆メロンぱん
江戸川に移転して新しく作るようになったものなのだそう。
軽くリベイクするとバターの香り、キャラメルコーンのような甘い香りが漂います。
カリッとしたクッキー生地に包まれた内側のふんわりもっちり加減のコントラストが秀逸で、普段メロンパンはあまり買わない私ですがこれはまた食べてみたいと思わされました。
かいじゅう屋さんってどんなお店?
ご主人の橋本宣之さんは20歳の頃、趣味のパン屋巡りをしているときに富ヶ谷にある「ルヴァン」で今までに食べたことのない自家製酵母の酸味のあるハードなパンに出会い衝撃を受けたのだそう。
すぐに働きたいと申し出たけれど空きがなく、5年ほど待って調布店で働けることになり、5年間の修業期間を経て30歳で目白に「かいじゅう屋」をオープン。
目白時代にはルヴァンのようなハード系のパンが好まれたけれど、立川、江戸川ではそれぞれ好まれるパンが違いやわらかいパンの需要が多くなったことで、ルヴァンで学んだことを少しずつ手放し、「自分のパンを作ろう」と気持ちが変化していったそうです。
製法も生活スタイルに合わせて基本は前日に生地を仕込んで冷蔵庫で低温長時間発酵させて翌朝に焼く形に。
国産小麦を使うことや、レーズンから起こした種を栃木県で無農薬自然栽培をしている上野さんの麦で繋いだ自家製酵母を使うことなど変わらないものもあります。
奥様の美香さんは結婚前に立川(現在は山梨県に移転)の「ゼルコバ」さんで働かれていて、現在は焼き菓子を担当されています。
焼菓子に使う酵母はゼルコバでの修業時代に起こした酵母に後々酒かすで起こした酵母を混ぜたものを使われていて、ご夫婦それぞれで酵母を育てていらっしゃいます。
「かいじゅう屋」という店名から怪獣がお好きなのかと思いお聞きすると、
・怪獣ってみんな知ってはいるけれど実際には存在しないし、思い浮かべる姿も一人一人違う曖昧なもの。そんな曖昧で何物にもとらわれない存在でいられたらいい。
・実家が商売をやっていた頃の屋号が「栃木屋」で、自分がお店を開くのに「ベーカリー」や「ベッカライ」とつけるのもなんか違うように感じ「○○屋」がしっくりときた。
と教えてくださいました。
「こうでなければならない」という考えを移転する土地に合わせて少しずつ手放していき、地域住民のニーズに合ったパンを柔軟な発想から作り出していく橋本シェフと、
お客様との会話を大切にし、お店が「誰かの心を灯す存在であれたら」とおっしゃる美香さん。
街のパン屋さんには美味しいだけでなくコミュニティスペース的存在意義があると思っているので、「かいじゅう屋」さんはまさに私の理想とするお店でした。
ぜひ皆さんもパンの美味しさと温かな雰囲気に癒されに行ってくださいね。
※前日夜に、明日店頭に並ぶパンをホームページで発信されているので参考になさってください。
※毎月第3日曜日に目白で出張販売をされています。Instagramやホームページからご確認ください。
SHOP INFORMATION
【店名】かいじゅう屋
【住所】東京都江戸川区江戸川5-31-3
【電話番号】非公開
【営業時間】11:00~18:00
【定休日】月・木・日 ※毎月第3日曜日は目白にて出張販売
※写真の商品の種類、価格は、2025年1月現在の情報となります。
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗もしくはSNSなどでご確認ください。