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cali≠gari 『TOUR 17』ファイナル公演に見た、卓越した技量と個性的なプレイが不思議と噛み合う無二のバランス感覚

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cali≠gari

TOUR 17 -FINAL-
2024.9.7 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

最新アルバム『17』を引っ提げ、6月22日の柏PALOOZA公演を皮切りに全国のライブハウスを回ってきた『cali≠gari TOUR 17』。作品のリリースのみならず、さまざまな企画を立ち上げて突き進んできたcali≠gariの結成30周年イヤーが、9月7日のLINE CUBE SHIBUYA公演でファイナルを迎えた。

桜井青(Gt)、石井秀仁(Vo)、村井研次郎(Ba)の3人に加え、ステージ上に現れたのは本ツアーのボトムを支え続けたササブチヒロシ(Dr)と、ホールライブでは馴染みの秦野猛行(Key)、yukarie(Sax)という面々。音出しのようにさり気なくフェイドインしたノイズが無軌道に音量を上げていくなか、天井に整然と並んでいた蛍光灯のような照明が足場の一部を外されたかの如くガクンとぶら下がり、白い光線を横から縦へと変化させていく。

そんな淡々とした崩壊に気を取られたのも束の間、視覚的な破壊を音で凌駕するかの如く繰り出されたのは、『17』のオープニングでもある「サタデーナイトスペシャル」だ。楽器陣が巻き起こすノーウェイブなカオスのなか、拡声器を手に真っ赤なソファーにゆったりと腰を下ろす石井。その静と動の対比も異様な興奮を増長している。

そうした攻撃性を「反ッ吐」のスピーディーなバンドアンサンブルで引き継ぐと、秦野とyukarieは一旦退場。タイトルコールのように降りてきた巨大な「17」を背に、4人は「ゴーストバスターズのテーマ」風のキャッチーなフレーズが耳に焼き付く「化ヶ楽ッ多」へ。ツアーの初日からコール&レスポンスを沸き起こした同曲の昂揚感が、会場の緊張感を明るく解きほぐしていく。

そこから村井の高速タッピングで突入したのは「トカゲのロミオ」。不穏なイントロからポップに急転するカタルシスで翻弄すると、暴力的なシャッフルビートで切迫感を煽る「白い黒」、ニヒルなブギーとセンチメンタルな歌心を交互に差し出す「恣」と立て続け、滑らかに「トゥナイトゥナイ ヤヤヤ」へと移行していく。今回は幾何学的なギターリフに貫かれたトランシーなアレンジだが、『12』に収録されたこのバージョンがステージ上で披露されるのは珍しい。そんな感慨に浸っていると、音像は「暗い空、雨音」へ接続。エレクトロニックな靄が、会場を柔和な、それでいてエモーショナルな恍惚で包み込む。

その余韻を仄暗く塗り替えたのは、9月11日に『17』の補完盤としてリリースされる『17.5』収録の「香る終焉に3のアーキタイプ」。キュアーを彷彿とさせるニューウェイヴィーなギターサウンドが耳を惹くポップソングで、このタイプのcali≠gari曲は意外と珍しいのでは……などと考えていると、むせび泣くようなサックスの音色が。そこに地響きのようなバスドラとアコギが重なることで立ち上がるのは、「そのまんま、KISS」のムーディーな音世界だ。そのアダルトな空気感を継承するのは、ファンクラブ限定の配布音源「隠されたもの」。管楽器も含めたアンサンブルでよりサンバ感を強めているが、浮足立つリズムとは裏腹に、どこか背徳感すら滲ませた妖しいグルーヴが何ともcali≠gariらしい。そして前半を締め括るのは、やはり『17.5』の書き下ろし曲である「ダ バ ダ」。ジャジーな転換をアクセントとしつつ、往年のレビューを想起させる明るさをもったナンバーでひとつの大団円を迎えると、本日初めてのMCタイムに。

舞台袖へ消えた石井をよそにメンバー紹介を終えた桜井は、村井のバースデーライブ以降の約3ヵ月を振り返っていく。「私たちは夏に(ツアーを)やっていいバンドじゃないんですよ。わかるでしょ? (体力的に)しんどくなってきたでしょ?」と客席に同意を求め、「次はやるなら秋から春の間にしましょ」と提案する桜井。一方の村井は、「これ、いつもはこんなに大きくないですよね?」──と、セットに掲げてある「17」の大きさが気になる様子だ。桜井も「気づいた? ちょっとデカいよね。なんか怖いっていうか、迫ってくるっていうか(笑)」と訝しんでいるところに石井が戻り、後半のステージがスタートする。

連作のような立ち位置のヤンキーロック「ミッドナイト!ミッドナイト!ミッドナイト!」「ナイナイ!セブンティーン」によって、ミラーボール煌めく80'sのダンスフロアへいきなりタイムスリップする場内。そこから一息に90'sへ飛び、会場を埋め尽くしたジュリ扇がカラフルに舞う「マッキーナ」でボルテージが最高潮まで高まると、今度はフリーキーなセッションが勃発する。ブリブリのベースラインが先導する「乱調」、都会的な装いのグルーヴロック「東京アーバン夜光虫」と繋がり、本編のラストを担ったのは『17』と同様の2曲だ。疾走感あふれるギターロックに叙情を忍ばせた「月に吼えるまでもなく」、黄昏時の風景にこらえきれないメランコリーを映した歌謡ロック「沈む夕陽は誰かを照らす」──大きな喪失感と染み入るような感傷をあとにして、メンバーは舞台から去っていく。残った秦野が奏でる最後の一音が儚く響き渡った瞬間、会場からは大きな拍手が送られていた。

そしてアンコール。「ここから先は打ち上げです!」という桜井の宣言に続いた告知では、「たったいま決まった」という今後のスケジュールを発表。村井の「ロンドンに行きたいかー!?」という懐かしの某クイズ番組のような雄叫びで幕開けたポップチューン「龍動輪舞曲」では、ユニゾンコーラスや観客のクラップが絡み合って軽やかな躍動感を醸造。そこから原曲に忠実……というか、石井のボーカリゼーション(特にがなり方)も含めて途轍もなく尾崎豊な「十七歳の地図」のカバーを披露すると、言葉もサウンドもハードコア極まりない「バカ!バカ!バカ!バカ!」「クソバカゴミゲロ」で狂騒のエンディング。ある種の爽快さを振り撒いて、全23曲を終了した。

最新アルバム『17』のリリースツアーの最終日であり、『17』の補完盤となる『17.5』を体現した初のステージであり、バンドの結成30周年イヤーを締め括るライブでもあったこの日の公演。サポートを交えた6人編成+エンジニアの白石によるフルラインナップでの演奏は言わずもがな、この日のcali≠gariは、ボーカルとギター、そしてリズム隊のみの音数を絞ったアンサンブルもいたくカッコ良かった。MCが少なめだったこともあってか、卓越した技量と個性的なプレイが不思議と噛み合う無二のバランス感覚が、ストイックなパフォーマンスを通じてより際立っていたように思う。

桜井の言葉どおりなら次の大規模なツアーは来年の秋以降になるのかもしれないが、直近だと9月11日に『新宿LOFT歌舞伎町移転25周年記念/cali≠gari 三十一周年記念公演「17.5」』と銘打った31年目の初ワンマンを、さらには12月7日に石井秀仁のバースデーライブ『ジュウスィー☆ナイツ2024ですよ。』を、2025年2~3月には大阪/東京で開催される2デイズ公演を予定。とりわけ東阪の各2デイズは『30=6+7+8+9』ということで、バンドの活動休止前/復活時の作品となる『第6実験室』『第7実験室』『8』『9 ─踏─編』『9 スクールゾーン編』からの楽曲を中心に組まれるそう。31年目もまだまだアクティブな3人に、引き続き注目したい。

取材・文=土田真弓 撮影=マツモトユウ

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