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相模原市の弁護士衣刀信吾さん ミステリー新人賞 「評議室」テーマにリアリティ

タウンニュース

自身の法律事務所で取材に応じた衣刀さん

第28回日本ミステリー文学大賞の新人賞に相模原市で法律事務所を経営する弁護士の衣刀信吾(いとうしんご)さん(本名=伊藤信吾さん)の作品が選ばれた。11月1日に一般財団法人光文文化財団が発表した。

同賞は新しい才能と野心にあふれた新人作家の発掘を目的とするもので、応募総数205編の中から衣刀さんの作品『午前零時の評議室』が選ばれた。作家の辻村深月さんや湊かなえさんらが選考委員を務めた。

作品名にある評議室とは裁判員裁判において議論が行われる場所で、同作品では裁判員に選ばれた主人公の大学生が通常の裁判員裁判とは異なる異例の事態に直面する物語が描かれている。裁判や事件が身近な弁護士だからこそ書けるリアリティのある作品に仕上がり、架空の地名を物語の舞台にしているものの、相模原市民がよく知る場所が登場するという。

きっかけはコロナ禍

「ドキドキ感が好き」――。衣刀さんは幼い頃からミステリー小説を好んで読んでいた。ただ、小説家を志していたわけではなく、コロナ禍で時間に余裕ができた際に書き始めたのが最初だったという。弁護士として数々の文書を作成してきたことから文章を書くことへの抵抗は少なく、インターネットなどで小説の書き方を大まかに調べ、最初に書いた作品が同賞の最終選考に残ったという。

それから3年連続最終選考に残る作品を生み出し、今回初めて新人賞を受賞。「今年は年齢的にも最後のチャンスかもしれないと思っていたのでうれしかった。原稿用紙500枚ぐらいあるので書けただけでも満足」と衣刀さん。集中できる早朝に原稿を書くことが多いといい、午前4時台から原稿に向かうこともあるという。

今年は1月頃に原稿を書き上げ、ゴールデンウィーク明けの締め切り日までおよそ4カ月かけて推敲してきた。

不思議さを追求

作品の中で描かれる事件には、被害者の靴下が片方だけ持ち去られたという謎が出てくるが、衣刀さんは「私が書くのは本格ミステリー。批判や社会的目的はなく、『不思議さ』を考える」と笑顔。日頃から「こんなことあったら不思議だな」ということを思いつくとメモをする習慣があるといい、寝ているときにアイデアを思いつくとその場でスマートフォンを使って原稿を書き進めることもあるという。

「え?そうなるの?と読者を驚かせたいと考えています」。そんな整合性を保ちつつ不思議な展開を考える過程は「胃が痛い」というものの、楽しいところでもあるといい、「弁護士は後始末の仕事。一方で小説は想像力を使ってゼロから作り上げる。使う能力が違うからおもしろい」

「午前零時の評議室」は来年3月中旬頃に出版される予定という。

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