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花も地産地消の時代に アメリカで広がる「スローフラワー」運動

ELEMINIST

産地や製法を確認してから食品を購入するように、地元で栽培された花を選んで買う。そんな地産地消に根付いた花の消費のあり方がアメリカで広まる「スローフラワー」運動だ。

現代の花産業が抱える問題解決に スローフラワーとは

地元の農産物や食文化を尊重し、食の質を重視した「スローフード」の概念は世界中に広まり、日本国内でも耳にする機会は増えているが、いまアメリカで注目されているのは、「スローフラワー運動」だ。スローフラワーとは、農薬や化学肥料を使用せずサステナブルな方法で栽培された地元産の花を消費する活動だ。

現在アメリカで一般的に流通している花の多くは、エクアドルやエチオピアといった赤道付近の国の大規模農場で生産され輸入されたもの。それらの国々ではアメリカに比べて労働力が安価なうえに、環境規制が緩く農薬や化学肥料の使用が容易なため、低コストでの花の栽培を実現している。

しかし、多くの大規模農場での生産に使われている農薬や化学物質は土壌や環境への負荷が高いだけでなく、労働者とその家族に健康被害を及ぼす可能性が指摘されている。

エクアドルの花農園で働く親を持つ子どもたちを対象とした継続的な研究では、注意力や自制心の低下や、視覚と手の協調能力(目で見た情報を手の動きに反映させる力)の低下が確認された。とくに母の日などの繁忙シーズンに向けて農薬が集中的に散布された時期に、こうした影響が顕著に表れるという。

また別の研究では、花を栽培する地域で生まれた子どもたちに先天性異常の発生率が高いことも明らかになっている。そしてこれらの健康リスクは、農場周辺で働く人だけでなく、世界中の人々に及んでいる。

ベルギーでは、輸入された花を扱う花屋の手袋から、皮膚を炎症させるほどの高濃度の農薬成分が検出され、オランダでは同国を象徴する花であるチューリップの生産に大量の抗真菌剤が使われた結果、薬が効かないほどの耐性をもった真菌の発生を促してしまった例もあった。

きっかけはスーパーに並ぶ鮮やかな花束

Foad Roshan on Unsplash

アメリカでスローフラワー運動が広まるきっかけをつくった一人が、シアトルに暮らすジャーナリストのデブラ・プリンジング氏。

雨が多く日の短い冬のシアトルでも、スーパーに行けば夏の花畑から摘んだような鮮やかなブーケが店頭に並ぶその光景に強い違和感を覚えた彼女は、地元の花の生産を支援するために、『50マイルブーケ(The 50 Mile Bouquet)』という本を2012年に執筆。さらに翌年には、スローフードの概念からヒントを得た著書『スローフラワー(Slow Flowers)』を発表した。

デブラ氏は、2014年に消費者が地元の生産者やフローリストにアクセスできる環境づくりを目指し「スローフラワー協会(Slow Flowers Society)」を設立した。現在、その会員数は750人に達している。

「食べ物の産地を意識する人なら、花も農産物の一部だと考えるのは自然なことです」とデブラ氏。スローフラワー運動の目的は「美しさの概念を再定義し、スローフードと同じように、季節のなかで生きることへの価値を見つめ直すこと」だと話している。

コミュニティから広がるスローフラワー

Photos by Lanty on Unsplash

アメリカ北東部に位置するメイン州では、地元の花農家が生産した花を集め、地元のフラワーデザイナーが簡単に仕入れられるようにするプラットフォーム「メイン・フラワー・コレクティブ」が、2023年に設立された。現在41の花農家が参加しており、これによって地域内での花の流通がスムーズに。地元の花農家を支え、地域経済を活性化させる新たなビジネスモデルとして注目されている。

そのほかユタ州では、2018年に18しかなかった花農家の数が、2023年には199軒にまで増加している。消費者がスローフラワー運動に共感することで、小規模な地元の花農家が活躍できる環境が生まれているからだ。アメリカではこのような動きが全国的に広まっている。

日本でも、食の生産地や製法にこだわる人が増えているいま、花の選び方にも同じ意識が広がり、スローフラワーという新たな花の消費スタイルが定着していくことが期待される。

※参考
The Beauty of ‘Slow Flowers’ versus the Pretty Poison of Plants Grown with Dangerous Chemicals|SCIENTIFIC AMERICAN

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