【子育て】障害じゃなくても生きづらい…「発達障害グレーゾーンの子どもたち」8タイプの特徴
発達障害未満のグレーゾーンという診断は、「軽いから大丈夫」と安心してしまいがちですが、実はそうではありません。
【漫画で解説】発達障害「グレーゾーン」8タイプの特徴とは?『マンガでわかる発達障害グレーゾーン』より一部紹介
「生きづらさは、障害と判定されるケースに劣らないどころかより強いということも多いのです」と精神科医の岡田尊司先生。
学校や社会では“普通のレベル”が高すぎると感じて自信を失ったり、ある部分では能力が普通の人より高いということもあるので、社会に出てからは過度のプレッシャーを背負ったり、できない部分とのギャップに苦しめられてしまうことも。
「発達障害とまではいえない特性によっても、同じ失敗を繰り返し、人生がうまくいかないということが多々あります。そうならないためにも、特性についての正しい理解が人生をより良い方向に変えていくために不可欠です」と先生。
グレーゾーンには特性ごとに8種に分類されます。今回は、岡田先生監修の『マンガでわかる発達障害グレーゾーン』(漫画:松本耳子)からお伝えします。
1:こだわり症・執着症〜グレーゾーンに多い「とらわれ」
ある一つの行動パターンにとらわれ、それが邪魔されたり、想定外のことが起きたりすると強いストレスを感じたり、パニックになったり。そうしたASD(自閉スペクトラム症)の特性のほかに、もう一つ「固着」と呼ばれる別のタイプもあります。
『固着』は幼少期などに何らかの強い興奮や印象を受けることで生じるとされる執着現象です。ネガティブな体験は、いわゆるトラウマで、軽度のトラウマであっても、グレーゾーンの場合はそのトラウマにとらわれ続け、心的エネルギーをすり減らしてしまう場合もあります。
前に進むためには、過去をひきずるのではなくトラウマや過去の不充足感を解消し、とらわれを解除する必要があるのです出典(マンガでわかる発達障害グレーゾーン)
承認欲求や自己顕示性など、その人を知らず知らず突き動かしている不充足感や憧れ。
これらも度を過ぎればとらわれで、そのおおもとには満たされなかった欲求が隠れていることがあります。
2:空気が読めないタイプ〜社会的コミュニケーション障害
社会的コミュニケーション能力とは「人に慣れ親しむ能力」のこと。ここに障害があるという人は、それなりに社交的で、友人と意気投合したり、一緒に楽しんだりするけれども、微妙なニュアンスが伝わらなかったりします。
子どもの場合は、『中学生になっても一緒に遊ぶ友達がいない』『話すときにあまり目を合わせない』『一方的にしゃべったり場違いな発言や行動をしてしまう』『冗談や皮肉を真面目に受け取ってしまう』など。
どの症状も軽度にしか当てはまらない場合、または一部の症状が当てはまるという場合にグレーゾーンと判定されます。
3:イメージできないタイプ〜「知覚統合」が低い場合
知覚統合とはイメージで考える能力のことで、この能力が低いと「数学や物理の成績が悪くなる」、状況を客観的に見て判断するのが苦手なため、自分の感情や主観で思い込みやすく「円滑なコミュニケーションがとれない」ということが起こります。
先生のクリニックでも、対人関係の悩みを抱える人は知覚統合が低い人がかなりの割合を占めているとのこと。
知覚統合は鍛えられる能力です。幼いうちからブロック玩具やパズルに親しむことも有効ですし、将棋や囲碁は、知覚統合の戦いといえるので、詰め将棋の問題を解いたりすることも、知覚統合を鍛えるのによいでしょう
出典(マンガでわかる発達障害グレーゾーン)
4:共感するのが苦手なタイプ~「知覚統合」が強すぎる場合
知覚統合が弱いタイプの人もいれば、世のなかには、まったく逆で知覚統合が突出して強いタイプの人もいます。
知覚統合は変化や未来を予測し、損害を避け、有利な選択をする能力でもあり、ものごとを客観的に達観して、冷静な判断をする能力にも通じています。ただ、知覚統合が優れている人でも、客観視ばかりで共感が不足すると、いかにも他人ごとという冷ややかな態度が見えたり、突き放した姿勢で優しさが欠けてしまうのです
出典(マンガでわかる発達障害グレーゾーン)
知覚統合が強すぎることで、社会的には問題がなくてもプライベートな人間関係で問題を抱えやすくなってしまいます。
5:ひといちばい過敏なタイプ〜HSPと不安型愛着スタイル
大きな音が苦手といったASDタイプの神経的な過敏さのほかに、相手の気持ちを汲み取りすぎて疲れたり、他人の不機嫌が苦手で気を使ってしまうなど、心理的な過敏さを持つHSPタイプも存在します。
HSPの判断基準は確定されていませんが、医学的概念としては不安型愛着スタイルと呼ばれるものにほぼ相当すると考えられています。
安定しない境遇で育った場合、子どもたちは周囲の人たちの顔色に敏感にならざるを得ず、それを読み取り、機嫌を取るという戦略で生き延びようとします。その結果、人の顔色に敏感な特性を身に付けてしまうと推察されます
出典(マンガでわかる発達障害グレーゾーン)
対処法としては、薬物療法のほかマインドフルネスやポジティブ心理学によるアプローチも有効です。
6:生活が混乱しやすいタイプ〜ADHDと疑似ADHD
近年、増加しているのが、遺伝型のADHDではなく、精神疾患や愛着障害から引き起こされている疑似ADHDというものです。
子どもの頃の不安定な養育環境が愛着障害を引き起こし、それがADHDに似た状態をもたらすことがあります。そうした要因がない人と比べると、ADHDを発症するリスクは数倍に達します
出典(マンガでわかる発達障害グレーゾーン)
思い切りよく大きな買い物をして何年もローンに縛られたり、間違ったパートナーを選んでしまい、不幸を背負ってしまうことも。
そうしたことを防ぐためには意思決定やプランニング能力を高めることです。これらの能力を高めるために科学的に効果が実証されているものにマインドフルネスがあり、瞑想なども有効です。
マインドフルネスは1番良い選択をするというよりも、最悪を避ける決断ができるようになるとされています。
7:動きがぎこちないタイプ〜発達性協調運動障害
発達性協調運動障害(DCD)とは、年齢から期待されるよりも、左右の手足を組み合わせて行う協調運動の進歩が遅いこと。小学校の1クラスに2〜3人ぐらいの割合で見られます。
ASDやADHDでも運動の不器用さを伴っていることが多いことから、協調運動は、単なる器用さだけでなく、社会性の能力やスキルにも関係していることが指摘されています。
DCDは、早い段階から発達の課題に気づく大きなサインです。発達の課題を改善していく手がかりとなり、バロメーターともなるということです。トレーニングの機会を増やすことで、克服されるだけでなく、社会的なスキルの改善につながることも期待できます
出典(マンガでわかる発達障害グレーゾーン)
球技や体操、水泳などは協調運動の改善に有効ですし、ピアノは左右の脳の統合を促します。
8:勉強が苦手なタイプ〜学習障害と境界知能
グレーゾーンでよく見られる学習障害と境界知能。知的障害に早期に気づいて、支援が受けられれば、障害があっても、その子のペースで発達していけます。
しかし、知的障害を抱えていることを発見されないまま、普通学級で無理を強いられてしまったり、境界知能のケースが問題になりやすいといえます
出典(マンガでわかる発達障害グレーゾーン)
一方で学習障害では、座学はまったくダメでも、実技の授業はピカイチというように、言語理解やワーキングメモリが低く、逆に処理速度が早いというパターンを示しやすいです。
この場合は本人の特性に合った技能や職業に出会えたら、社会に出てから活躍するケースも多いもの。
ワーキングメモリは様々な方法で鍛えることができます。百マス計算など単純な計算を繰り返すことから始め、文章の暗唱や聞き取りながら書き取るディクテーション、聞き取った文章を繰り返すリピーティングも効果的です。
*
「子どものグレーゾーンは様子見してはいけません」と岡田先生。
今の困りごとが将来のどんな問題につながるのか。軽度の課題であっても、できるだけ早くから療育やトレーニングを行うことが重要です。それによって社会生活の困り感が全く違うものになっていきます。
監修:岡田尊司
精神科医、作家。医学博士。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒。京都大学大学院医学研究科修了。長年、京都医療少年院に勤務した後、岡田クリニック開業。現在、岡田クリニック院長。日本心理教育センター顧問。『愛着障害』(光文社)、『母という病』(ポプラ社)、『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』『発達障害「グレーゾーン」生き方レッスン』(ともにSBクリエイティブ)など著書多数。
漫画:松本耳子
大阪芸術大学美術学科卒業。1998年、大学在学中に漫画家デビュー。漫画雑誌の連載や実話系4コマなどで活躍しつつ、毒親に育てられた壮絶な経験を明るく描いたコミックエッセイも執筆。著書に『毒親育ち』(扶桑社)、『毒親こじらせ家族』(竹書房)、『マンガでわかる愛着障害』『マンガでわかるパーソナリティ障害』(以上、岡田尊司[監修]、光文社)などがある。自身がグレーゾーンで、1男1女の母。
(ハピママ*/庄司 真紀)