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【2025参院選】注目の争点と各党の政策を徹底比較 消費税・減税・インボイス制度

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消費税イメージ

2025年の参院選では、物価高が続く中で「誰がどれだけ税を負担するか」が大きな争点の一つです。

本記事では、消費税・所得税・インボイス制度など、選挙で注目される税制に関する主な論点を整理し、主要政党・候補者のスタンスをわかりやすく紹介します。

※本記事は2025年6月時点の情報を基に執筆しており、今後の政策動向により変更される可能性があります。

1. 消費税の議論|据え置きか、減税か

この章では、現行の消費税率10%をめぐる維持派と減税派の構図や与党の方針、野党各党の主張について解説し、今後の消費税政策の動向について考えていきます。
 

現行10%の税率はどうなる?維持派と減税派の構図

現在の消費税率10%をめぐっては、維持を主張する勢力と減税を求める勢力が対立する構図です。財源確保が極めて困難な中、立憲民主党の野田代表は赤字国債に頼らず、未来世代や地方財政に負担をかけない方針を強調していますが、具体的な策はまだ精査段階となっています。

一方で、野党の多くは減税や廃止を訴えており、特に国民民主党は恒久的な5%への引き下げを主張しています。日本維新の会も時限的に食品の消費税撤廃を提案し、共産党やれいわ新選組も減税に賛成の立場です。

さらに、与党内にも減税を求める声が高まっており、公明党は参院選政策で減税実現を掲げ、食料品の消費税率引き下げに言及しています。自民党所属の参院議員の約8割が減税を求め、そのうち7割が食品の税率引き下げを主張している状況です。

しかし、自民党幹部は依然として消費税率の維持を強く主張しており、消費税率引き下げの法案は成立しない可能性が高いと見られています。今後の参院選の結果次第では、減税実施の可能性もわずかに残るものの、現時点では厳しい状況だと考えられます。(2025年4月28日時点の情報に基づく)

 

立憲民主党の「2年間の時限的減税案」

立憲民主党は、来年から1年間、食料品などの軽減税率を0%に引き下げる時限措置を公約に掲げる方針です。状況によっては、最大2年間までの延長も視野に入れています。

この時限的減税は、将来的に導入予定の「給付付き税額控除」までのつなぎとして位置づけられています。野田代表にとって、今回の減税案受け入れは、まさに苦渋の決断だったと言えるでしょう。

民主党政権下に首相として消費税を引き上げた過去を持ち、財政健全性を重視する立場からは、本来、消費税の引き下げには否定的だったはずです。しかし、他の野党が減税や消費税廃止を訴える中で、立憲民主党だけが引き下げに反対し続ければ、野党第1党としての立場が揺らぎかねません。

特に、積極的な減税を掲げる国民民主党に差を付けられることに、強い危機感を抱いたのでしょう。加えて、党内には「減税ポピュリズムに走りたいなら別の党を作れ」と発言した枝野元代表のように、慎重派も根強いようです。

判断を誤れば党の分裂にもつながりかねず、野田代表は党内バランスを維持するためにも極めて難しい判断に迫られたのでしょう。

 

高井たかし氏の「食料品0%」構想の背景と反響

れいわ新選組の高井たかし氏は、衆議院予算委員会の際「消費税廃止」を強く訴えました。消費税を「天下の悪税」と批判し、「大企業優遇で、中小企業、庶民に過酷な税」だと指摘しています。

また、日本の経済が成長しない原因は、消費税増税によるものだと主張し、参院で否決されても内閣不信任案を出すべきだと強気の姿勢を見せました。答弁の長さをめぐって財務大臣や委員長との白熱したやり取りが続き、質疑終了後も発言を続ける姿に議場内は騒然とする場面がありました。(2025年5月13日時点の情報に基づく)

2. 所得税・給付制度に関する見直しの方向性

ここからは、基礎控除の見直しや新たな控除制度の創設、「103万円の壁」引き上げなどの税制改革の現状と課題を整理し、所得税や給付制度の見直しについて解説します。

今後の税負担や、社会保障との連携に関する政党ごとの主張を比較しながら見ていきましょう。
 

定額減税(2024年実施)の評価と今後の議論

令和7年度の与党税制改正大綱では、「持続的な経済成長」や「誰もが豊かさを実感できる国民生活の実現」、さらに「安全保障や地球温暖化対策」など多角的な視点からの税制の構築のための措置が講じられています。

所得税の基礎控除の見直しや新たな控除制度の創設、さらに、スタートアップ投資促進や地方創生、子育て支援の強化など、幅広い分野での税制対応が盛り込まれました。加えて、自公両党と国民民主党は「103万円の壁」の引き上げやガソリン暫定税率の廃止に向けて継続的に協議する姿勢を示しています。

出典:経済成長と豊かさが実感できる税制へ令和7年度与党税制改正大綱を決定 | 政策 | ニュース | 自由民主党
 

累進課税の強化か?フラット化か?政党で異なる主張

令和7年度の与党税制改正大綱では、所得税の基礎控除の見直しや大学生年代の子に対する新たな控除の創設などが盛り込まれていますが、これらの措置は物価上昇や就業調整への対応を目的としたものです。

一方で、自公両党と国民民主党の間では「103万円の壁」を178万円に引き上げる方針で合意しています。税制の在り方については、累進課税の強化を求める声や、税負担のフラット化を求める意見が政党間で異なっており、今後の議論が注目されます。

 

ベーシックインカム・給付付き税額控除の可能性

立憲民主党は、中低所得者の税負担軽減を目的とした「給付付き税額控除」の公約を掲げました。今年の参院選では、軽減税率(食料品など8%)を1年間限り0%に引き下げる時限措置を実施し、最大2年まで延長を認める方針です。

党内では一律の消費税率引き下げや給付付き税額控除を当初から導入することなど複数案が議論されました。野田代表は過去に消費税率引き上げを決断した経験があることから、財政健全性を重視し減税には慎重な姿勢を示しています。(2025年4月28日時点の情報に基づく)

3. インボイス制度と中小事業者への影響

2023年10月に導入されたインボイス制度は、事業者の負担軽減や公平な税制運用の観点から重要なテーマであり、今後の税制改革の方向性を考える上でも注目されるテーマです。

ここからは、インボイス制度が中小事業者や個人事業主に与える影響を整理します。また、制度に対する各政党の立場や政策方針についても比較し、制度に対する議論の動向を解説します。
 

2023年開始のインボイス制度、実施後の現状

2023年10月にスタートしたインボイス制度は、消費税の納税額を正確に把握し、税額控除を適切に行うことを目的としています。国税庁の発表によると2024年8月までに約458万の事業者が登録を済ませています。

しかし、多くの事業者からは、仕入れ先の登録確認やシステム改修に伴う事務負担やコスト増加の声が上がっているようです。実際に東京商工会議所の調査では、82%以上の事業者が事務作業の増加を感じており、約半数がコストの増加を実感しています。

こうした負担軽減を目的に国税庁は2026年までの特例制度を設け、周知活動を積極的に進めています。

 

フリーランス・個人事業主への実務的影響とは?

インボイス制度への登録は任意ですが、年間売上1000万円以下の小規模事業者が登録すると、これまで免除されていた消費税の納付義務が新たに課されることになります。

これまで免税されていた事業者のうち、企業間取引を行う事業者の約73%が登録していますが、登録を見送った事業者からは事務負担や税負担の増加が主な理由として挙げられました。

フリーランスや個人事業主にとっては、新たに納税義務を負うことで経済的な負担が増すことは、非常に大きな影響だといえるでしょう。こうした影響を緩和するために、特定の条件を満たせば納税額の一部を軽減できる特例制度が2026年9月まで設けられています。

 

「廃止」「見直し」「継続」政党ごとの政策比較

まずは、インボイス制度の導入を目前に控えた2023年8月時点においての各政党の対応を紹介します。中小・個人事業主への影響を重く見て、「廃止」や「見直し」を訴える政党が目立ちます。

立憲民主党は、制度そのものの撤廃を目指しており、廃止法案を国会に提出し、反対する有志団体との意見交換も行いながら、制度への異議を示す姿勢です。

国民民主党も導入そのものに否定的な立場を取り、政策の中でインボイス制度を導入しない旨を明示しており、地域単位での意見交換会も開催しています。

日本共産党は「STOP!インボイス対策チーム」を立ち上げ、制度の問題点を訴える活動を展開し、中止を目指した世論を高める活動に取り組んでいます。

れいわ新選組は、消費税そのものとインボイス制度の両方を廃止すべきと主張しており、「STOP!インボイス街宣!」を実施するなど、反対の姿勢です。

社会民主党も制度に反対する立場で、党首自らが集会に出席し、地方議員を通じて中止を求める請願書を作成するなどして、動いています。

参院選を控えた2025年3月時点では、「消費税廃止各界連絡会」に、れいわ新撰組や日本共産党、立憲民主党の議員が出席し、インボイス制度の廃止を求める署名15万1911人分を手渡しました。

また、同月に開催された「3・13重税反対全国統一行動札幌北部集会」にも、日本共産党や社会民主党、立憲民主党らの議員が参加しました。2025年4月時点では国民民主党がインボイス制度の廃止を政策として掲げています。

各党、依然として「廃止」や「見直し」を訴える姿勢が多く見受けられます。

4. 政党別・税制に関するスタンス比較(要約表つき)

消費税をはじめとした減税策に関する各党の方針は、家計の負担軽減や財政健全化という観点から、大きく異なるものです。それぞれの政策の背景や特徴を理解することで、今後の動向を読む手がかりとなるでしょう。

ここからは、政党別の税制に対する基本的なスタンスをまとめて比較します。
 

自民・公明|現行制度維持・慎重改革

自民党の松山参院幹事長は、議員の間に減税を求める声が多いことを森山幹事長に伝えているものの、自民党は一貫して消費税の引き下げに反対する姿勢を維持しています。(2025年4月24日時点の情報に基づく)

公明党内には物価高への対応として食料品の減税を模索する動きがありますが、自民党の強い反対があることから、減税実現の可能性は低いと言えるでしょう。(2025年5月1日時点の情報に基づく)

 

立憲・共産・社民|家計支援重視・減税方針

立憲民主党は、食料品に適用される軽減税率を一時的に0%に引き下げる公約を掲げています。本来は「給付付き税額控除」の導入を目指しつつ、それまでの暫定措置として減税に踏み切る姿勢です。

その背景には、他党の減税方針との違いによる支持低下への危機感と、党内対立の回避があります。共産党や社民党などの野党はすべて、消費税率引き下げもしくは廃止を主張しています。(2025年4月25日時点の情報に基づく)

 

維新・国民|中間層への負担緩和+制度改革

日本維新の会は、食品の消費税を2027年3月まで撤廃する時限的措置を提案し、国民民主党は、消費税を5%に引き下げる恒久措置を訴えています。(2025年4月28日時点の情報に基づく)

両党とも、中間層の家計負担を緩和しつつ、将来的な財政健全化に向けた制度改革の必要性も強調しています。

 

N党・無所属候補|独自提案のインパクトも

N党は、政府支出の無駄を削減することで財源を捻出し、消費税を含む幅広い減税を実現すべきと主張しています。

消費税減税の重要性を強調する一方、実現が難しい場合にはガソリン税など他の減税策に柔軟に協力する姿勢です。また無所属候補についても、減税への強い姿勢が窺われ、今後の動向に注目が集まります。

まとめ

税制は「生活に直結する政策」でありながら、内容が複雑なために理解されにくい分野でもあります。参院選2025では、物価高・格差・中小支援の文脈から税制が再注目されています。自分の立場・職業・家計にとって影響の大きい政策を見極めて、納得のいく1票を投じる材料にしていきましょう。

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