広川町に誕生した世代を超える交流拠点『まち子のおやつ』『まち子のおにわ』伝統と食で紡ぐ地域の未来(福岡・広川町)【まち歩き】
福岡県八女郡広川町。久留米絣や八女茶で知られるこの町に、伝統と新しさが交わる交流拠点が誕生している。広川町産業展示会館は、1階に伝統工芸品「久留米絣」を扱う『ひろかわ藍彩市場』、新館には地元農産物を使ったスイーツが楽しめる『HIROKAWA里カフェ まち子のおやつ』、そして子どもたちが思いっきり遊べる公園『まち子のおにわ』を擁し、親子連れからシニア世代まで幅広い層に愛される場所となっている。
■伝統と新しさが交わる場所
広川インターから車で約3分。田園風景の中に現れる建物が、広川町産業展示会館だ。この建物の1階には、広川町商工会が直営する『ひろかわ藍彩市場』がある。
『ひろかわ藍彩市場』は、広川町を代表する伝統工芸品「久留米絣(かすり)」の反物から洋服、小物まで、豊富な品揃えで展示販売する特産品販売所だ。久留米絣は江戸時代後期から続く伝統的な織物で、広川町はその製造の中心地として知られている。一年中久留米絣に出会える店として、地元の織元が手がけた様々な商品を試着・購入できるのが魅力だ。さらに、八女茶やお菓子、川瀬焼や竹細工など、地元の特産品も幅広く取り扱っている。
「地方創生事業を活用し、すでに観光スポットとして特産品を販売していた『ひろかわ藍彩市場』の増築・機能拡大として、2018年に新館『まち子のおやつ』をオープンしました。“食”を通じて、より人が集まる観光拠点施設を目指して作られたんです」と、施設を統括する木下店長は語る。
新館には地元農産物を使用したスイーツを提供するカフェ店舗が入居し、屋外ではイベントも開催できるようステージやトイレ、駐車場が整備されている。伝統工芸品を扱う本館と、食を楽しむ新館。そして子どもたちの遊び場。単なる商業施設ではなく、町の活性化を図る総合的な交流拠点として設計されたのだ。
■幻のいちごを使ったスイーツが話題に
現在、施設内でテナント運営しているのは『旬果屋』と『todoke!』の2店舗。今回紹介するのが、2024年9月にオープンしたフルーツスイーツ専門店『旬果屋』だ。
旬果屋では、冬から春にかけて広川町の石川農園が開発した「綾美姫(あやみひめ)」という希少なフレッシュのいちごを使ったスイーツを提供している。生産者が世界でたった1人という幻のいちごを使ったフルーツサンドや大福、アサイーボウル、タルトなどが人気だ。新鮮なフルーツの美味しさを最大限に引き出したスイーツは、「フルーツサンド」(税込550円)から、「フルーツ大福」(税込360円)からと手頃な価格で楽しめるのも魅力となっている。「アサイーボウル(大サイズ)」(税込1,480円)はボリュームたっぷりにフルーツを堪能できる。
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■『旬果屋』(『HIROKAWA里カフェ まち子のおやつ』内)
営業時間: 月・水・木・曜1:30〜17:00、金・土曜11:30-20:00
定休日: 火曜、ほか不定休あり(詳しくはInstagramをご確認ください)
Instagram: @syunkaya_b
https://www.instagram.com/syunkaya_b/
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■ふるさと納税を活用して作られた子どもたちの遊び場
『まち子のおやつ』に隣接する『まち子のおにわ』は、2020年5月にオープンした約2,200平方メートルの公園だ。この公園の成り立ちには、広川町の子どもたちへの深い想いが込められている。
「ふるさと納税『広川町ふるさとづくり寄附金』と企業版ふるさと納税を活用して整備しました。『子どもたちの健全育成を助け、生きる力を育む遊びの場』というコンセプトで作られたんです」と木下店長。
公園には、トランポリンやサイバーホイール、ボールプールなど、貸出可能な移動遊具が配置されている。特筆すべきは、町民ボランティアで結成された「こども遊び場実行委員会」が主催する「ハコボックスプロジェクト」だ。年6回実施されるこのイベントでは、移動遊具を用いた様々な催しが行われ、町内外から多くの親子連れが訪れる。
広川インターから車で3分、西鉄バス建設学校前バス停から徒歩10分というアクセスの良さも手伝って、週末には多くの家族で賑わう。
■全世代が楽しめる憩いの場を目指して
『まち子のおやつ』と『まち子のおにわ』の組み合わせにより、施設は幅広い世代に利用されている。カフェでゆっくりコーヒーを楽しむシニア世代、フルーツサンドを頬張る若者たち、公園で遊ぶ子どもたちを見守る親世代——。世代を超えた人々の笑顔が、この場所にはある。
施設では定期的にイベントも開催される。11月29日・30日には「古着フェスティバル」、12月5日・6日には「古布市」が予定されており、広川町の伝統産業である久留米絣とのつながりも感じさせる。
「これからも全世代が楽しめる憩いの場を提供していきたい。地域内外の方々に愛される施設を目指して取り組んでいきます」と語る木下店長の言葉には、地域への深い愛情と確かな展望が込められていた。
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【今後のイベント予定】
・古着フェスティバル: 11月29日(金)・30日(土)9:00〜17:00
・古布市: 12月5日(木)9:00〜16:00、6日(金)9:00〜15:00
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■伝統と革新が共存する地域づくりのモデル
『まち子のおやつ』と『まち子のおにわ』、そして『ひろかわ藍彩市場』。これらは単なる商業施設や公園ではない。地方創生とふるさと納税という新しい仕組みを活用し、地域住民が主体となって作り上げた交流の場だ。江戸時代から続く伝統工芸品と、地元の新鮮な農産物。世代を超えた人々の笑顔。そして、子どもたちが育む生きる力。
行政の支援と民間の創意工夫、そして地域住民のボランティア活動が組み合わさり、持続可能な地域づくりのモデルケースとなっている。
広川町を訪れた際は、ぜひこの場所で地域の温かさに触れてほしい。伝統の久留米絣に袖を通し、地元の果物を使ったスイーツに舌鼓を打ち、子どもたちの笑顔に癒される。そんなひとときが、ここにはある。
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■『広川町産業展示会館 ひろかわ藍彩市場』『『まち子のおやつ』』
住所: 福岡県八女郡広川町日吉1164-6
電話: 0943-32-5555
営業時間: 10:00〜16:00
定休日: 毎週火曜(火曜が祝日の際は水曜が休業になる場合あり)
ホームページ: http://www.aisaiichiba.com/
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