Vol.44 カメラドローンからFPVへ:DJI Avata 2が教えてくれた新たな空の楽しみ方[田路昌也の中国・香港ドローン便り]
ついにDJI Avata 2を手に入れ、カメラドローンからFPVドローンの世界に踏み入れた筆者。スリルと没入感を味わえる新たな飛行スタイルに挑戦した様子を紹介する
FPVの世界への第一歩
これまでMavicシリーズ、そして最近はDJI Mini 4 Proなどいわゆるカメラドローンを飛ばしてきましたが、先日ついにDJI Avata 2を購入してFPVの世界に足を一歩踏み入れました。 今回は、その体験をお話ししたいと思います。
まず、カメラドローンとFPVドローンの違いを簡単に説明します。 カメラドローンは主に空撮を目的とし、安定性と画質を重視します。一方、FPVドローンは操縦者が機体の視点で飛行を楽しむことを主目的とし、俊敏性があり、ゴーグルを使うことによる没入感があります。
実は以前、DJIが最初に出したFPV機である、DJI FPVは発売直後に購入し何度か飛ばしたのですが、あの重量795gでプロペラ剥き出しの機体が時速140km/hで飛ぶ姿を想像するだけで恐怖感が先に立ち、なかなか飛ばす気になれませんでした。勿体無いなぁと思いながらも、コロナで外出しにくいこともあり埃が被った状態で放置していました。
DJI Avata 2との出会い
コロナが落ち着き、外出の機会が増え始めるとドローン仲間も活発に行動を始め、先月のコラムで紹介した友人の田池さん達がドローン、それも自作FPVで、華麗に滑空する映像に見惚れる思いでした。
https://www.drone.jp/column/2024082310020495888.html
山々の谷間を自在に舞い、尾根線を滑るように駆け抜け、まるで鷹のように急降下する。その息をのむような映像は、従来のカメラドローンでは到底捉えられないものでした。 あの躍動感、あの臨場感、あの自由自在な動き—— 頭から離れない映像の余韻に、日々魅了されていました。
そんな日々が続いたある日、ついに理性の糸が切れ「よし、やってみよう!」という衝動と、「大丈夫かな…」という不安が交錯する中、震える指でDJI Avata 2の購入ボタンを押してしまいました。
DJI Avata 2は重量377gと軽量で、プロペラガードも付いています。 最大飛行時間は23分、最高速度は約97.2km/hと、十分なスペックを持っています。もちろんこれまでのドローンと同様にNモード(最高速度約28.8km/h)やSモード(最高速度約57.6km/h)で飛ばせるのも安心感があります。これらの機能が、初心者の私にも安心感を与えてくれました。
シミュレーションでの特訓
DJI Avata 2のレビューを見ていると、ある共通点に気づきました。みなさん口を揃えて「初心者はマニュアルモードで飛ばさないように」と、耳にタコができるほど繰り返し注意しているのです。正直、この厳重警告を聞くたびに、臆病な私の不安は増す一方でした。
しかし、ここで諦めては以前の二の舞。使わずじまいだったDJI FPVの轍は踏みたくありません。そう自分に言い聞かせ、弱気な気持ちを振り払いながら、シミュレーションに挑戦しました。
周りのドローン仲間のアドバイスで、Velociドローンというアプリを入手してトレーニングを開始しました。
Velocidrone公式サイト
Velociドローンは自作FPV機を飛ばすシミュレータです。いきなりマニュアルモードから始めるのは正直躊躇われましたが、「継続は力なり」の精神で、朝昼晩と毎日練習に励みました。
驚いたことに、日々の積み重ねは確実に成果となって現れてきました。最初はまともに飛ばすこともできなかったのに、徐々にコントロールが効くようになり、ある程度は思い通りに飛ばせるようになってきたのです。
この地道な特訓が、実機を飛ばす自信につながっていくことを、心のどこかで感じ始めていました。
運命の日:初めてのマニュアル飛行
そしてついに、その運命の日がやってきました。マカオに隣接する中国の街、珠海。人影もまばらな開発エリアで、先述の田池さんと共にDJI Avata 2を飛ばす機会を得たのです。
心臓の鼓動が早まる中、マニュアルモードへの切り替えを決意しました。まず、万が一の事態に備え、コントローラ左上にあるブレーキボタンの位置を何度も確認します。深呼吸を一つ、そして運命の瞬間を迎えました。
スティックに意識を向け、ゆっくりとボタンをマニュアル位置へ。ゴーグルの中央に表示されるコントローラ調整画面を凝視します。「よし、慎重に合わせよう」と思った瞬間、予想外の展開が。意図せずマニュアルモードに切り替わってしまったのです。心臓が喉元まで飛び出しそうな衝撃でした。
しかし、ここで冷静さを取り戻します。「そうだ、高高度でモードを切り替えたんだ」という記憶が蘇り、少し安堵。「大丈夫だ、落ち着け」と自分に言い聞かせ、震える手でスティックを操作し始めました。
最初はヨタヨタとした飛行。しかし、時間が経つにつれ、少しずつコントロールに慣れていきます。電池のアラートが鳴るまで、必死で操縦を続けました。最後の方では、華麗な低空飛行とまではいきませんでしたが、それでもある程度の高度を保ちながら、思い描いた軌道を描くことができました。
着陸後、全身から力が抜けていくのを感じました。同時に、これまで味わったことのない達成感と興奮が全身を駆け巡りました。初めてのマニュアル飛行は、恐怖と喜びが入り混じる、まさに忘れられない体験となったのです。
スキルアップへの道:高松でのFPVドローン合宿
珠海での初飛行体験に手応えを感じた私は、さらなるスキルアップを目指し、次なる挑戦の場として四国は高松でのFPVドローン合宿を友人たちと計画しました。この合宿で特筆すべきは、飛行場所の許可申請の方法です。今回私たちは、「Flyers」というサービスを利用しました。
Flyers 公式サイト
このサービスの素晴らしさは、その使いやすさにあります。値段が手頃なうえ、飛行場所の選定から警察署への申請手続きまで、面倒な作業を全て代行してくれるのです。ドローン愛好家にとって、このような便利なサービスの存在は、大きな助けとなりますね。
合宿では、すでにFPVのスキルを持った友人たちの華麗な飛行を目の当たりにする機会に恵まれました。彼らの操縦を間近で見ることで、自分の目標とすべき技術レベルが明確になりました。
さらに、自分の操縦方法を彼らに見てもらい、具体的なアドバイスをもらえたことは、非常に貴重な経験となりました。
例えば、スティック操作の繊細さや、風の影響を考慮した飛行ラインの選び方など、実践的なテクニックを学ぶことができました。また、安全面でも、周囲の状況確認の重要性や、バッテリー管理の注意点など、多くの有益なアドバイスを得ることができました。
まだまだよちよち歩きの段階ではありますが、その時に撮影した映像をご覧いただければ、私の成長の軌跡を感じていただけるかもしれません。
この高松での合宿体験は、FPVドローンの世界における自身の位置を再確認し、さらなる成長への意欲を掻き立ててくれる、非常に有意義なものとなりました。
DJI Avata 2が教えてくれた操縦する喜びとFPVの魅力
DJI Avata 2を飛ばして感じるのは、その没入感です。DJI Mini 4 Proは地上から空を見上げる静的で観察的な体験、対するDJI Avata 2は空中から地上を見下ろすような、まるで鳥になったかのような動的で没入的な体験ができます。
カメラドローンには美しい景色や被写体を見つけ記録する楽しみがありますが、FPVには自由に飛行する爽快感とスリルを味わう楽しみがあると感じます。
安全性への配慮
FPV飛行の楽しさは格別ですが、安全面への配慮も忘れてはいけません。初心者の方へのtipsをいくつか紹介します:
必ず人のいない安全な場所で練習するバッテリー残量に常に注意を払う視界が良好な日中に飛行する法律や規制を遵守する(100g以上のDJI Avata 2ではDIPS2.0による機体登録と飛行申請が必要)徐々に難易度を上げていく
今回、Flyers経由で使用した「さぬき市野外音楽広場 テアトロン」は人が誰も入らない広々とした環境で安全に飛ばせましたので、非常にオススメです。
将来に向けて
私の周りのFPVユーザーが墜落、紛失、故障をしながらも、益々沼に深く嵌まり込んでいる理由が今更ながら理解できます。そして私もそこまでは無理だとしても、少しは近づきたいと思っています。
そんな中、DJI Neoが発売されました。これなら近場の空き地や部屋の中でも気軽に飛ばせそうです。FPVドローンの世界はこれからますます発展していくでしょう。操縦技術の向上はもちろん、新しい撮影技法や表現方法の開拓など、可能性は無限大です。
DJI Neo
私自身も、これからは両方の魅力を活かしながら、カメラドローンとFPVドローンを使い分けていきたいと思います。また密かに練習して、いつか皆さんに驚くような腕前を披露できることを夢見ています。
FPVの世界はまだまだ奥が深いですが、その分だけ新しい発見と楽しみがあります。皆さんも、機会があればぜひFPVドローンの世界を体験してみてください。新しい空の楽しみ方が、きっと見つかるはずです。
参考映像:今回同行した友人のFPV飛行映像
taike.nobuさん
Kozawa Nobumichiさん
Facebook:https://www.facebook.com/reel/558163130051781