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【静岡市美術館の「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」】 「パラダイス・ガラージ」ラリー・レヴァンのライブ音源が聴ける

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の静岡市美術館で11月29日に開幕した「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」を題材に。

会場に足を踏み入れると、地下鉄の音がする。時折聞こえるスティールパンの演奏。左右の壁には、駅構内で黒紙にチョークで絵を描くキース・ヘリングのポートレートが多数。彼の創作の原点とも言える「サブウェイ・ドローイング」は、1980年代ニューヨークのごちゃついた地下から生まれたことが、はっきり示される。

ヒップホップの表現形態「グラフィティ」、ジャクソン・ポロックやアンディ・ウォーホルらポップアートの先達、ゲイカルチャー、クラブカルチャー…。20歳でペンシルバニア州からニューヨークに出てきた若者が、表現のるつぼのような街で自らの作品を進化させていく過程がよく分かる。

秀逸なのは音楽との関わりを示したコーナー。伝説的DJのラリー・レヴァンがプレイしたクラブ「パラダイス・ガラージ」で踊るヘリングのモノクロ写真がいい。自分の作品が飾られた、大半が黒人のフロアで体を揺らすヘリングは、どんな気持ちだっただろう。

ヘリングが手がけたレコードジャケットが並ぶエリアには、1987年9月25日・28日の「パラダイス・ガラージ」最後の夜の音源が流されている。ピアノと四つ打ちビートを刻むレヴァンのライブ音源は、太い線で人物の輪郭を描くヘリングの作品によく似合う。ヘリングの代名詞とも言える「アクションライン」はきっと、音楽のビートそのものなのだろう。

静岡県民としては、エイズの予防啓発に力を入れていた1989年の作品「Ignorance=Fear.Silence=Death」が気になる。目をふさいだ人、耳をふさいだ人、口をふさいだ人が大きく描かれている。徳川家康ゆかりの日光東照宮の「三猿の彫刻」を思わせる。(は)

<DATA>
■静岡市美術館 
住所:静岡市葵区紺屋町17-1 葵タワー3階 
開館:午前10時~午後7時
休館日:月曜(1月13日開館)、12月29日(日)〜1月1日(水)、1月14日(火)
観覧料(当日):一般1500円、高校生・大学生・70歳以上1100円、中学生以下無料
会期:2025年1月19日(日)まで

 

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