野食を楽しむための基礎知識とは?食べられる野草・山菜を紹介【野草・山菜・きのこ図鑑】
野食を楽しむための基礎知識《1》食べられる野草・山菜
本書では、食べられる野草・山菜、食べて美味しい野草・山菜を紹介する。本書を活用し、“あなた”が野草・山菜を楽しむには?まずは、知っておきたい基本情報を押さえておこう。
本書の野草・山菜
適度な降水と日照に恵まれるわが国には、大都会から深山幽谷までさまざまな環境があり、それぞれに適応したさまざまな植物が生育している。一説によれば日本には7000種類程度の植物が生えており、そのうちの1000種類以上が食用になるという。食べられる野草というのは意外と身近な存在なのだ。
しかしそれを適切に利用するには、まずは正しく同定できなければならない。そのためにはどうしてもある程度の植物学的な知識が求められるが、初心者にとってそれは無視できないハードルとなる。
また、この1000種類には「食べることは可能だが、美味しくないもの」「よく似た食用不適野草があり、間違えるリスクが高いもの」「アクセス容易な環境に生えていないもの」など、利用価値の低いものも数多く含まれている。そういったものまで覚えないと野草を食べてはならないとなれば、ただ「食べてみたい、味を知りたい」という興味から野草を学ぼうとする人の意欲を挫いてしまうかもしれない(筆者自身、美味しくない野草についてはさほど興味はわかない)。
そのため本書では、筆者の独断と偏見により「利用価値があり、同定ミスのリスクが低く、美味しい野草」をセレクトし、掲載した。加えてそれぞれの野草について、出会うために必要な情報と同定する際に見るポイントを簡潔に記載し、さらに調理法まで掲載した。掲載されている野草はすべて筆者が実際に採取し、食べ、これはおすすめできると判断したものである(一部、編集部より掲載してほしいと依頼があり、すったもんだの末にやむなく載せたものもあったような気がする。おそらく当該野草をお読みいただければわかる)。
中には、一般的には食用と思われていないか、あるいは毒草として扱われているにもかかわらずあえて掲載したものもある。古くから毒抜きして食べる文化があったり、海外で食用にされる例があり、それに則って食べてみたところ美味しかった……というものがそれにあたる。
侵略的外来種について
また「侵略的外来種」で食用価値の高いものについては優先的に取り扱うことにした。我々ヒトの採取圧は他の生物にとって脅威となるものであり、その矛先を侵略的外来種に向けることは生態系保全に役立つと考えられるからだ。結果として148種類の、自信を持っておすすめできる有益な食用野草・山菜について掲載することができた。
とはいえ、本書はポケット図鑑であり、画像もひとつの野草につき2枚しか掲載していない。判別ポイントについてももっとも代表的な数点しか記載できていない。従って本書1冊ですべての美味しい食用野草・山菜について学べるというような類のものではないし、イレギュラーな個体を自信を持って同定できるようになることもないだろう。筆者としては本書を「身近にこんなにもたくさんの食べて美味しい野草が生えているんだ」と興味を持ってもらうためのゲートウェイ的な存在として位置付け、その方針に則って執筆した。
もし本書を読んで美味しい野草・山菜に興味が出てきたら、必要に応じてより高度な内容の資料を手に取っていただくのがよいかと思われる。ぜひ、美味しくて楽しい「野草沼」に足を踏み入れてみてほしい。
【出典】『野草・山菜・きのこ図鑑』著:茸本 朗