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伊勢湾エリアのテンヤタチウオ釣り入門 【タックル・仕掛け・エサ・釣り方を徹底解説】

TSURINEWS

このサイズがくれば満足(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)

今年もタチウオの季節がやって来た。輝く美しい白銀の魚体に、触れなば切らんばかりの鋭い歯。そしてその細長い魚体から想像もつかない豪引と、恐ろしい顔からは想像もつかない繊細な食味。伊勢湾ではすでにシーズンインしたが、今年も人気なのがテンヤタチウオ釣法だ。シンプルながらも、驚くほど高いゲーム性に魅了されたアングラーは数知れず。今回はそんなテンヤタチウオについて紹介したい。

伊勢湾界隈のタチウオシーズン

伊勢湾のタチウオは、7月上旬からちらほら姿が見え始め、徐々に数が増えて8月に入れば本格シーズンを迎える。年によりバラつきはあるが、そのまま11月半ばまで釣れ続けることが多い。

これまで伊勢湾でタチウオを釣る釣法は、テンビン吹き流しかジギングだった。かつてドラゴン王国と言われた伊勢湾だが、一時期の勢いはなくなったものの、ここ数年指6本以上のドラゴンといわれる大型タチウオの出現率が上がっている。

輝きを放つタチウオ(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

その出現率が高いのがシーズン初期。数は出ないものの、くればデカイというパターンだ。数こそ1人5~6匹だが、半分以上が指5本以上なってことも多い。

その後は指3本前後の小型が増えてきて、ドラゴンが食う前に小型が食ってしまう……という状況に入ってくる。こうなると型より数釣りがメインとなり、アタリの数が激増する。そう、テンヤタチウオ釣法を習得するには、絶好のシーズンとなるのだ。

テンヤ釣法とは

テンヤタチウオは大阪湾で古くから人気のある釣法。それがその仕掛けのシンプルさ、ゲーム性の高さ、大型のヒット率が高さで各地に人気が飛び火し、それぞれの海域で楽しまれている。

ここでテンヤ釣法について説明しよう。使うのは、タチウオテンヤと呼ばれるオモリと巨大なハリが一体化したもの。これにイワシを丸ごと1匹付けてワイヤーで縛って固定する。

テンヤ(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

ルアーフィッシングで使うジグヘッドに形は似ているが、決定的に違うのがハリの向き。ジグヘッドは上向きにハリが付いているが、テンヤは下向き。

テンヤに縛りつけたイワシを、タチウオは下から食いに来る。テンヤは止めたとき、水平姿勢になる。このテンヤに下から食いにきた瞬間を逃さずアワセを入れ、巨大なハリでタチウオの顔周辺に掛ける。そのためハリは必ず下向きなのだ。

口の外側からフッキングするのが正解(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

よく勘違いされている人に「でっかいハリ使うね~。それでタチウオの口に入るの?」と聞かれるが、テンヤは口にハリを入れて掛ける釣りではなく、外側から掛けるスレの釣りなのだ。

タックル

釣法の説明を読んで、フグのカットウ釣りに似ていると思われた人も多いかもしれない。そう、仕掛けやオモリの重さこそ違えど、カットウ釣りに通じるものは多い。タックルもそうだ。

テンヤタチウオの仕掛け(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

カットウでは9対1という極端な先調子のサオを使うが、これはしっかり掛けバリをフグのボディに掛けるバットパワーが必要なためだ。テンヤタチウオも同じ。タチウオの硬い顔周りにハリを貫通させるので、バットパワーのあるサオがお勧め。

テンヤ人気を受けて各メーカーから専用ザオが多く出ているので、予算と好みで選べばいいが、お勧めは8対2調子で、長さが2mまでのもの。

バットパワーのあるものを(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

リールは電動を使う人が多いが、手巻きでも十分可能。ポイントの水深が100m前後までと、比較的深いので電動を使いたくなるが、小技が効きにくいのが難点。空振りが多いテンヤタチウオでは、アワせて掛からなかった場合次の一手が重要となる。わずか50cm上げる、下げる、その場でシェイクなど、手巻きの利点は多い。

ジギング用のハイギアベイトリールなら、シマノ300番クラスのものを使いたい。

ミチイトはPEライン1.5~2号。初めての人は2号がお勧め。必ず300mは巻いておく。これはタチウオの歯で、高切れすることがあるから。200mしか巻いてなくて100m出したところで切れてしまったら、残りのイトでは心もとない。

これでリーダーとしてフロロカーボンライン6~8号を3mほど接続する。この先にスナップ付きスイベルを結んでおく。このスナップにテンヤをセットすれば完了だ。

テンヤ

肝心のテンヤについてだが、これも各メーカーから多種多様なテンヤが販売されている。重さは伊勢湾の場合、50~60号がメインで、60号を使う場面が多い。リーダーやミチイトを切られることもあるので、必ず4~5個は用意しておこう。

50~60号を用意(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

ヘッドのカラーについてだが、筆者的には正直あまり食いに関係がないように思う。強いていえば、曇りや雨などローライトのときはグローが入っているカラーが目立つかも……という程度。こちらは好みで選べばいいと思う。

エサ

エサは冷凍イワシがメイン。エサ店で購入するなら、3~4パックは必要だ。事前にスーパーでイワシを売っていれば30匹ほど購入しておき、タッパーで塩にうずめておく。2~3日ごとに抜けた水分と塩を捨てて、新しく塩をたっぷり振りかけておく。

しっかり塩で締める(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

しっかり塩で締めて身を硬くしておかないと、すぐに身が崩れてしまう。1週間ほど締めたら、ジッパー付きの袋に10匹ずつ小分けにして、冷凍しておく。目安だが、1回の釣行で使うイワシの数は、30匹ほどあれば足りるだろう。

また他にサンマを3枚に下ろしたものを、テンヤにぐるぐる巻きつけるという付け方もある。このサンマの場合も、しっかり塩で締めておく。

ちなみにエサ用、飲料用に小さめのクーラーを用意しておくと便利だ。

エサの付け方

エサの付け方だが、イワシをテンヤ上部の固定用のハリに腹からまっすぐ差す。付属のワイヤーをイワシの頭部から尻尾の方にかけて巻きつけ、尻ビレ辺りまで巻いたら、折り返して頭部へ巻きつける。最後はテンヤのアイに巻いて終わり。

注意点としては、テンヤの軸に対してイワシがまっすぐになるようにすること。イワシが傾いたりズレたりすると、誘い上げたりただ巻きの途中でぐるぐる回転してしまう。こうなればまずアタリは出なくなる。

アタリを見極める

さて、いよいよ実釣だ。できれば釣行前夜に2~3個のテンヤにイワシをセットしておくと、現場に着いてスナップにテンヤを付けるだけなので、すぐに釣りを開始しやすい。

船長の「水深〇m、底から〇mまで探って」という指示が出たら、早速テンヤを投下。底に着いたらまず3mほどただ巻きしてから誘いに入る。誘いはチョンチョンよ小刻みにシャクリを2~3回入れて止める。あるいはゆっくりただ巻きして2~3秒ステイ。これの繰り返しだ。

食い散らかされたイワシではアタリは出ない(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

手巻きリールでカウンターがないときは、PEラインの色を見て船長の指示するタナまで探ってくる。

アタリはふわっと触るようなものから、コツンとつつくようなものまでさまざま。問題はアワセのタイミング。最初にぶつかる壁がここだ。

コツコツとつつくようなアタリはスルーしてそのまま誘い続け、ゴツッと押さえ込むようなアタリでアワせるのが正解。ただあくまでこれは教科書通りのアワせ方で、いきなりゴンッと押さえ込んで掛かっていたり、コツコツが延々と続いて上げたらエサがほとんどなくなっていた……なんてこともある。

アワセを確実に

最初は掛からなくて悶絶すると思う。大いに悩むと思う。だが、何匹か釣っていくうちに、アワセのタイミングが分かってくる。

大事なのはアタリがなくなったとき。さっきまでアタってたのに、止まった……というときは必ず上げてエサをチェックしよう。イワシがズレていたりボロボロにされたりしたら、すぐに交換だ。

これからは数釣りの季節(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

ひとついえるのは持ち上げるアタリは、大型が多い。イカメタルとしたことがある人は分かると思うが、テンションが抜けて穂先が持ち上がるのはイカならスッテ、タチウオならテンヤをくわえて上方へ泳ぐから。ミチイトのテンションが抜けるので、穂先が持ち上がるのだ。これは必ず即アワセしよう。

アワセは思い切り振り上げるのではなく、テンヤをずらす程度で十分。ただし、スピードは必要だ。もったり動かしていては掛からない。素早くコンパクトに、そしてショートにキレのあるアワセを入れよう。

一定に巻き上げる

ヒットした後のファイトだが、ポンピングはご法度。サオをやや下に向け、一定のスピードでテンションを緩めないように巻き上げる。相手がドラゴンなら、途中で何度も激しく引き込む。そのときはいったん巻く手を止め、引きにじっと耐える。

ポンピングはご法度(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

タチウオは細長い体を器用にくねらせ、バックして泳ぐ。これが引きとして伝わるのだが、青物のように長続きしない。少し耐えれば引きが弱まるので、テンションが抜けないように素早く巻き上げを再開する。

リーダーを持って抜き上げる(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

取り込みは魚が見えたら、いったんサオを置きリーダーをつかんで抜き上げる。ドラゴンサイズなら船長がタモですくってくれるか、ギャフで引き上げてくれる。

バーブレスの勧め

巨大なテンヤのハリには、もれなくカエシが付いている。このカエシをぜひつぶして使ってみてほしい。驚くほどフッキング率が上昇する。さらに人や服に刺さってもすぐに抜けるし、いいことづくめなのだ。

「バラシが増える……」と言う人がいるが、ヒット後のラインテンションを抜かないことを心がければ、ほとんどバラすことはない。ぜひ一度試してみてほしい。

魚を絞める

釣り上げたタチウオは必ずフィッシュグリップで、頭の少し下ぐらいをしっかりホールドして持つ。写真撮影はこの状態がお勧め。ヒレに鋭いトゲはないが、10号のイトを一瞬でかみ切る恐ろしい歯を持っている。少し触れただけで、人間の皮膚などいとも簡単に切り裂いてしまう。

フィッシュグリップ(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

グリップでつかみ、エラブタの下からハサミを入れてエラを切り、海水を入れたバケツに突っ込んで血抜きする。この時期は海水温が高いので、ある程度血が抜けたら、すぐにクーラーに移そう。クーラーには氷は多めに準備しておくこと。

エラの付け根を切る(提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

最後に

釣ったタチウオは、どう料理しても美味。大きいものは皮目をあぶった刺し身、塩焼き、煮つけ、小さめのものは3枚に下ろして天ぷらや唐揚げがお勧めだ。獰猛な顔つきから想像もつかない繊細は味に驚くことだろう。

<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>

この記事は『週刊つりニュース中部版』2024年8月30日号に掲載された記事を再編集したものになります。

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