松戸さんぽのおすすめ12スポット。松戸駅周辺から京成松戸線・北総線エリアのきらめく魅力
ベッドタウン。帰って寝るだけの街。そのイメージを嫌悪して「俺らこんな村いやだ」と東京へ飛び出した20代前半の俺。40歳を超えた今だって、地元は平べったく見えている。だからだろうか。ここで我が道を行く人々がきらめいて見えるのは。
【松戸駅エリア】唯一無二の新たな息吹が芽吹き続ける中心街
店と客の趣味全開な新感覚スポーツ用品店『FUJIKURA SPORTS』【松戸】
「自分の好きなコト、やりたくて」と、店主の藤倉久也さん。2017年、実家のスポーツ用品店を妻・琴美さんとアート×ミュージック×ストリートカルチャーをテーマに改装。店内工房で作られる刺繍やシルクスクリーンのグッズが秀逸だ。不定期開催のイベントでは、若手アーティストの展示やライブも。挑戦を後押すオープンマインドが粋すぎる!
10:00~19:00(土は12:00~17:00)、日・月休。
☎047-362-3313
これはきっと世界一のドライフルーツ『アフガンサフラン』【松戸】
店主のバブリさんは故郷の女性たちの仕事を生み出すため、アフガン産ドライフルーツのECを開始。2021年に店舗を開き、じゅうたんの販売も。「せっかく来てくれたんだから」と、差し出されたアンズを頬張れば、爽やかな果実味が口中を包み込む。また、なつめのはちみつは目の覚めるような甘みが直撃するも、後味さっぱり。毎日食べたら健康体になれるやつだ。
11:00~18:00、日休。
☎047-317-6997
ちょっと見たことない中華菓子専門店『SWEET DIARY』【松戸】
「人気の中華菓子なんですよ~」と、店主の張文亜(チョウブンア)さんが胸を張るのは蛋黄酥(ダンファンス)だ。まるっとかわいらしいパイ包みに内包されているのは、あずき餡と塩漬けの卵黄。口に運べば、皮の小麦の芳香、あずきの甘み、卵黄の塩味が絶妙に融合し、後を引く。他にも鳥デンブをまぶした肉松(ロウソン)ケーキやネギ風味の中華クッキーなど、魅力あふれる品々に心惑う。
11:00~19:00、火休。
☎047-706-8863
旅情感あふれる超狭小異国料理カフェ&バー『Roam』【松戸】
店主の西村純一さんが間借りしていた店を引き継ぎ、2025年2月に開業。世界を旅した経験を生かし看板は「異国料理」だ。この日はブリとネギのオープンサンド1300円と彩りにんじんのソテー900円を肴にワイン800円~をクイッ。我孫子の「自然野菜のら」から仕入れた新鮮野菜が、酒に合うこと。すれ違い際に他の客と連携を余儀なくされるド狭さも最高。
営業日時はSNSで告知。
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【京成松戸線エリア】住宅地に潜むこだわり強すぎスポットの数々
スペシャルティより特別なオーガニック専門ロースター『SlowCoffee焙煎所直売』【上本郷】
代表の小澤陽祐さんが「森を豊かにするコーヒー栽培」に興味を持ち、2000年に開業。卸しが主だったが、2020年頃から店舗販売も始めた。エクアドルの森林などで育てられた生豆をフェアトレードで仕入れ、武骨な直火式焙煎機でバチバチと焙煎する。「ちょっとすごいコーヒー」「二十歳のあなたに贈るコーヒー」など、贈答用のパッケージもユニークだ。
10:00~15:30、日休。
☎なし
ベーグル片手にコーヒーはどうよ?『LIVING Coffee and Bagels』【みのり台】
「友達の家で団らんするみたいな、安らげる場所をつくりたくて」と、店主の山本尚幸さん。自身の選んだ豆を自家焙煎し、ドリップ。妻・歩さんのベーグルと二枚看板だ。人気のスカリオンサーモンを口中に運べば、もちふわベーグルの食感に頬がゆるむ。ワケギを混ぜたクリームチーズとサーモンの味わいが、ゆるやかに風味変えるコーヒーと相性バッチリ。
11:00~18:00、水休。
☎なし
腕っこきシェフの技術の結晶を喰らえ『ばーがー時々洋食亭』【八柱】
元フレンチシェフの木村周三さんは「まるでコース料理が詰め込まれたようだ!」と、バーガーの魅力に開眼。妻の麻希さんが「オタク気質」と形容するほどの情熱で、気合いの一品を作り上げた。もっちりバンズの芳香と野菜のみずみずしさ、牛ネック100%のパティからあふれ出る肉汁が融合し口中を直撃! 食欲が止まらねえ。
11:00~14:00・18:00~20:30(木・日は昼のみ)、月休。
☎047-301-8204
組み上げる自転車も、人の輪もオンリーワン!『レトロサイクル・アンドカフェ』【八柱】
希少なデッドストックパーツで唯一無二の自転車を組み上げる。オーダーメイドは2年待ちで店主の髙田ユキヲさんは大忙し……のはずだが、作業場に併設のカフェでコーヒーを飲んでたら「ゆっくりお話ししましょう」と、相手してくれるからニクイ。常連の自転車大好きオジサンたちからもコーヒーをお裾分けしてもらって交流広がる。あれ、ここって自転車屋だよね?
12:00~19:00、土・日のみ営業(雨天休)。
☎なし
美術ってのは楽しむためにあるんだね『チョモランマチョップスティックスギャラリー』【常盤平】
空色鮮やかなギャラリーから漏れる、何やら楽しげな声。「今日は展示が完成して」と、ほほ笑むアーティストユニットのpocopenさんだが、その手には缶ビールが。「大人も子供も、気軽に美術に触れてほしくて」と、代表の功刀眞(くぬぎしん)さん。いや、それにしても大人は酒盛りしてるし、子供は転げまわってるし、なんて自由で陽気なのさ。うーん、僕も一杯酒をちょうだいな!
11:00~20:00、火休。
☎なし
生きるための糧に読み、ふける『本屋 BREAD & ROSES』【常盤平】
「街には本屋が必要だと思うんです」と、店主の鈴木祥司さん。「本との出合いはもちろん、同じ本好きの人と出会える交流の場にもしたい」と、読書会やトークイベントも開いている。書籍はすべて鈴木さんのセレクトで、歴史や人生といったテーマごとに分けられ棚に並ぶ。手に取ってページをめくる間、ぽっかり時間を忘れる。知らず、呼吸が整っていく自分に気づく。
12:00~20:00(日は~18:00)、月・火休。
☎なし
【北総線エリア】牧歌的な田園風景に独創的なチャレンジ精神
畳と芋の架け橋は職人としての目利きです『焼き芋屋さん』【秋山】
創業53年(2025年2月時点)の『渡邊一三畳店』が「ウチの店をもっと知ってもらおう!」と始めたのが、なんと焼き芋屋。「職人として、素材の質にはこだわってます」とは、3代目の渡邊一樹さん。看板商品は、千葉県香取地域産の紅はるかとシルクスイートだ。やっぱり食べるならアツアツでしょ。ホクホクトロトロの口当たりと、こっくり深い甘さ。もう、優勝です。
10:00~17:00、土のみ営業。
☎なし
食べて楽しい、もらってうれしい宝石のようなお菓子『魔法の琥珀糖』【北国分】
琥珀糖(こはくとう)の美しさに魅了され専門店を開いた店主の二瓶あやさん。「最初は占いの館かと思われてたんですよ」と笑うも、催事に出店したり、自販機を設置したりで、次第に人気店に。琥珀糖を口中に含むと外カリカリ中プルプル。じんわり甘みが広がりクセになる。「琥珀糖を松戸の名物にしたいな」と、アツい思いもチラリ。あると思います!
11:00~16:30、水・土のみ営業。
☎なし
たった一つ、居場所を見つければ
記憶に残ってる平成の松戸は、もっと鬱屈(うっくつ)としていた。タバコ臭え西口デッキにはメルヘンな音楽を奏でる仕掛け時計があって、その背景はパチンコ屋と消費者金融の看板で埋め尽くされていた。暴走族はうるせえし、ゲーセンに行けばカツアゲに遭う。そんな地元が大っ嫌いだった。
「サニーランドでしょ。それ」と、笑うのは『SlowCoffee焙煎所直売』の小澤真太郎さん。かつて国道6号沿いにあったアミューズメント施設の話だ。懐かしくて話し込むなんて、まるでいい思い出みたいじゃないか。
「サニーランド」同様、入り浸っていた『ときわ平ボウリングセンター』では『チョモランマチョップスティックスギャラリー』を発見。「展示期間中なのに、完成してないんです〜」と、アーティストのpocopenさんが作業している。グッズ売り場には人名っぽい駅名を擬人化したキーホルダーが。ふと「俺の妄想の『天王洲アイルちゃん』も作って!」と頼み込んでいた。そういや松戸って、こんなに好きなコト話せる街だったかな?
「分かりますよ。好きなコトを声高に言う人は少ない気がします」とは、『FUJIKURA SPORTS』の琴美さん。松戸出身ではないが、俺の松戸像と合致してる。「だからこそ夫の好きなことを後押ししたんです。彼も悶々(もんもん)としてたんで」。リニューアル後は藤倉夫婦の「好き」に共鳴した人々の寄り合い所に。また、「ウチは東京でのポップアップが始まりで、今もその頃のお客さまが来てくれます」とは『LIVING Coffee and Bagels』の山本尚幸さん。『レトロサイクル・アンドカフェ』も、自転車愛深き猛者たちが遠方から訪れる。「好き」に正直な人々の居場所が点在。そんな街になったのか。
また、『焼き芋屋さん』を運営する『渡邊一三畳店』の渡邊一樹さんは「父の仕事する姿に憧れて」と、18歳で跡を継いだ。同じ年の頃の自分を思い返すと赤面の至り。リスペクトを込めてアツアツ焼き芋を噛みしめる。
「海外をいろいろ旅したんですけど」とは『Roam』の西村純一さん。「人々と心を通わせていくと、知らない街も地元のような感覚になるんです」。
そうか、俺にとって松戸は地元ではなかったんだ。嫌いなところばかり気になって、心閉ざしていた。でも今の松戸なら居場所を見つけられる気がする。振り向かずに、真っ直ぐに、これから地元にしていけばいい。
取材・文=どてらい堂(高橋健太) 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2025年3月号より
どてらい堂
熱血物書き
インタビュー記事を得意とするが、街頭調査やルポルタージュなど、体当たりな企画はより嬉々として勤しむ1984年生まれのB型男。主に『散歩の達人』で執筆。漫画・アニメ・格闘技オタクで、少年漫画脳な気質が文章にちらほら。たこ焼きの腕だけはプロ以上。