藤田 玲、木津つばさらが華やかな歌とダンスを披露 Butlers’歌劇『悪魔執事と黒い猫』~薔薇薫る舞踏会編~の稽古場レポートが公開
2024年6月7日(金)よりIMM THEATERにて上演する、Butlers’歌劇『悪魔執事と黒い猫』~薔薇薫る舞踏会編~の稽古場レポートが公開された。
本作は、人気アプリゲーム「悪魔執事と黒い猫」(スタジオわさび)の初舞台化作品で、主様を癒し、忠誠を誓う13人の執事たちと、彼らの使命の物語を、華やかな歌とダンスを散りばめた華麗な歌劇としておくる。
今回、稽古場レポートとともに、回替わりイベント「Welcome to the Devil's Palace~執事による瞑想タイム~」の実施の決定も発表された。“瞑想”は原作のアプリゲーム「悪魔執事と黒い猫」でも人気の機能。執事たちが各公演の開演前に回替わりで、主様と一緒に瞑想を行う。詳細は下記を参照。
稽古場レポート
2024年6月7日(金)~16日(日)まで、東京・IMM THEATER にて上演されるButlers’歌劇『悪魔執事と黒い猫』~薔薇薫る舞踏会編~(通称『あくステ』)。「貴方の現実に寄り添い、メンタルをいやす」ことをコンセプトとしたアプリ「悪魔執事と黒い猫」(通称「あくねこ」)を原作に、華やかな衣裳を身にまとった13人の悪魔執事が主様の力を借りて天使とたたかう物語を描く。多彩なキャスト陣に加え、人の心の憂いを芸術的に描き出す手腕で注目を集める、アレクサンドラ・ラターが演出を担うことも話題となった。
5月某日、全キャストが集結する稽古場を訪ねると、本番で着用するウィッグや衣裳、小道具などの確認作業が行われていた。生地から細部の装飾までこだわり抜かれた衣裳の、着こなしやシルエットはもちろん、振付や殺陣の動きをふまえた安全性と機能性の確認も怠らない。アモン役の宮崎はサスペンダーを気にしながら、薔薇の鞭で背中を叩く動作をラターとともにチェック。ナック役の長塚は、マントを肩にかけた状態での動きを確認していた。幅のある剣を操るバスティン役の今井は、ミヤジ役・川上のアドバイスを受けて、剣を持つ肩の動きを試行錯誤する。
チェックが終わると、豪華な衣裳から一転してカジュアルな服装で稽古が始まるも、ボスキ役の木津は右手に義手を模したグローブ、ナック役の長塚は高いヒールのブーツ、フルーレ役の日暮はハーフパンツを着用し、本番に向けて感覚を養っているようだ。
稽古は振付の変更確認から。振付のIYO-Pが、より一人ひとりが際立つようにとポジションの入れ替えを指示すると、活発に意見を交わしながら細かい修正に対応していく。いよいよ芝居稽古に入るというタイミングで、ラターがキャストを集めた。稽古期間全体で見ると現在は中盤、動きや流れを整理しながら芝居を深めていく段階だ。ラターはあらためて、『あくステ』の世界を魅力的にみせることを大切にしようと話す。そして明るく生きる悪魔執事たちはそれぞれ“闇”を抱えている、そんな彼らが“主様を癒す”というコンセプトを体現するべく、「ここに集まった皆さんの力を信じて、がんばりましょう」としめると、一同から力強い返事と拍手が。カンパニーの空気がピリっと引き締まったところで、芝居稽古がはじまる。プロローグはすでに照明プランが組まれており、キャストは立ち位置と照明の関係、タイミングを細かく確認していく。
続くのは、ベリアンが主様に自己紹介をする一曲。優雅なストリングスの響きとよく合う藤田の柔らかいテノールで、清らかな光景が目の前に広がった。空間が一気に色彩を得て、ラターも「これを待っていた」と言わんばかりに深くうなずく。藤田がしなやかなお辞儀でしめると、はからずも拍手が起こる。その拍手にも柔軟に対応しタイミングを調整して現れた輝馬演じるルカスの、余裕たっぷりだがひかえめな佇まい。あわてて転がり込んできた安藤演じるロノの元気よく豪快な挙動に、ロノを追いかけてきた松島演じるハウレスの、リーダーの矜持と責任感が感じられる張りのある声。主様に名乗りお辞儀をする動作だけで、一人ひとりの個性を瞬時に感じ取ることができる。それぞれがすでに演じるキャラクターの特徴をつかみ、体現しているようだ。
悪魔執事がたたかう天使と、その戦闘がどう描かれるのかも気になるところ。アンサンブルキャストとラター、IYO-P はディスカッションを重ね、天使の動きを追求していく。ロノが天使とたたかうシーンはスピード感、気迫にあふれていた。
その後、黒猫ムー役の伊奈が両手にもふもふのグローブをはめて現れる。舞台上を縦横無尽に駆け回るロノとの追いかけっこはすでに息ぴったりだ。茶目っ気たっぷりに最後のポーズを決めると、スタンバイ中のキャストたちはスタンディングオベーションを贈り、この日一番の大きな拍手が起こった。長時間の稽古にもかかわらず大人顔負けの集中力を見せる伊奈は、このカンパニーの“癒し”にちがいない。
そしてデビルズパレスに住まう悪魔執事が勢ぞろいして歌い踊る、本作のメインテーマともいえるナンバーへ。先ほどまでの明るい雰囲気から一転、パイプオルガンの響きを思わせるイントロがダークな世界へいざなう。短いフレーズからも彼らの個性が感じられる、脚本・作詞を手掛けた三浦 香の技だ。13人の悪魔執事がソロを歌いつなぐなかで、一人ひとりのキャラクター性を象徴するかのようにフォーメーションが切り替わっていく。リズムを刻むアップテンポからバラード調へと緩急のついた楽曲にあわせ、キャストたちの美しい歌唱と華やかなダンスが披露された。
ラターが「舞台装置の転換一つひとつに意味がある」と言った通り、二つ並んだ大きなセットが 90°回転するだけで、自分がデビルズパレスの“なか”に迎え入れられたのだということを体感した。
この日聴くことができた曲は、いずれも『あくステ』の世界観とキャラクターの魅力を豊かに表現しながら曲調は幅広く、何度でも繰り返し聴きたくなる楽曲ばかり。音楽・坂部 剛の手腕がいかんなく発揮されたおよそ20の楽曲が彩る歌劇を、稽古の休憩時間も歌唱・振付の練習に余念がないキャスト陣がどう仕上げてくるのか、期待がふくらむ。
そして新鮮だったのは、「これはあなたの物語」だと世界に引き込まれること。観客も作品の一部なのだと随所で示される演出に、ラターが作品にこめた想いが感じられた。
撮影=大塚浩史(DOUBLE SQUEEZE Inc.) 文=榊 恵美
(C)StudioWasabi/Butlers’歌劇『悪魔執事と黒い猫』製作委員会