【レインボーWeek】Xジェンダーのアイドル 今、世界に発信する理由
「恒星宇宙X(クペイサーエックス)」のリーダー・瀬乃悠月(せの ゆづき)さん(30)は、女性の体で生まれ、男女どちらの性自認も持っているXジェンダーです。
「自分が男か女かって言われたら、どっちでも受け入れられる感覚です」
瀬乃さんは性別に関係なく人を好きになるバイセクシュアル(両性愛者)であることも公表して音楽活動をしています。
3人姉妹の長女として生まれ、歌が大好きだった瀬乃さん。初恋は、幼稚園の女性の先生でした。「5才のクリスマスのお願いごとが『男になりたい』だったんです。ユーモアがある家族なので『クリスマスが来たら(男に)なれるよ!』って。でもクリスマスの朝に起きて全部脱いで確認したら、何も変わっていない。そこで初めて、現実を知りました。ショックで2日間くらい、口を利きませんでした」
男性の姿に憧れていた瀬乃さんは、ばっさり髪を切ってボーイッシュな女子高生に。ただ、学生時代は親しい友人にも打ち明けられなかったそう。「女性から好意を抱かれてもお付き合いしちゃいけないんじゃないかと考えたり、好きな“男の子”を作らないと会話に入れないことに違和感を覚えたり」
カミングアウトできたのは、アイドルデビューをした23才の時でした。
「初めて(所属している芸能事務所の)社長と会ったときに、自分の生き方とかスカート履きたくないけどアイドルがしたい!女です!』と言ったときに、一言『面白い』とおっしゃってくれて。それがきっかけで(心が)開けた感じです」
そして活動をしていくうちに、自分の性についてより深く考えるようになりました。
「ホルモン注射をすると、最初に声が変わるのを知って。絶対に声だけは変えたくないという気持ちがあったので(注射は打たなかった)。そこから1つずつ選択肢をなくしていくうちに、今の生き方に落ち着きました。今、自分のことが、この生き方が大好きです」
そこで「同じ悩みを抱える人たちの力になりたい」と、2021年に「恒星宇宙X」を結成し、翌年にXジェンダーの和佐祐李(かずさゆうり)さん(25)をメンバーに迎え、「ジェンダーニュートラル(性に囚われない)」をコンセプトに、ライブや配信を行っています。
和佐さんも、アイドル活動を通じて伝えたい思いがあります。
「公表するのに勇気がいる。やっぱりそれは理解してもらえるか分からなかったので、ずっと言えずにいたんですけど…。同じような人たちも含めて『独りじゃないんだよ』と、この活動を通して言っていけたらいいのかなって思っています」
2人を昔から知るダンス講師のMEGさんは、「めっちゃいいじゃないですか。前向きにやってもらう方が私は全然新しいと思うし、好きだな」
少しずつ周りの理解が増える中、暮らしの中でも瀬乃さんに変化がありました。
「昔はピンクが“女の子の色”で嫌いだったけど、最近着るようになって」
「自分の中で“男にならなきゃ!男になりたい!”という気持ちがなくなった。“自分がかわいいと思ったものを着ていいんだ!”ってなりました」
枠にとらわれない“自分らしい姿”-。
瀬乃さんは「結婚はしたいですね」と言います。
今の日本では、「同性婚」が法律ではまだ認められていませんが、全国470の自治体で「パートナーシップ制度」の導入が広がっています。また、より多くの人にLGBTQ+への関心を持ってもらおうと、福岡でも当事者・支援者たちによる大規模なパレードが毎年行われています。
瀬乃さんは3年前にメインMCとして参加。その活動が後押しとなり、昨年末に、母親にカミングアウトすることを決意しました。
LINEで「自分は女性とお付き合いしたこともあって。たぶん女性を好きになるかもしれないから、今後どうなるか分からないけどパートナーの恋人ができたら紹介したい」と伝えたところ、返ってきた母の言葉は暖かいものでした。
「言ってくれるのを待ってたよ!」
「今はいろいろ選択肢があるから、あなたの形で幸せになったらそれでいいんじゃないかと私は思うよ!」
「選択肢広くて楽しいじゃん!」
「そういう人が現れたら紹介してもらうの楽しみ!」
「やっと、ちゃんと10年、20年先の、目の前のこと以外を考えられるようになった。それが言葉にできるようになった」
「自分たちのセクシャルが“当たり前”になる世界が一番理想。『あなたはあなただよ』と認めてくれる方の声に一番背中を押されます」
母の応援に勇気づけられ、瀬乃さんは胸を張って、今日もステージへと上がります。
瀬乃さんの今後の活動については、こちらをチェック!
X:@seishun_yuzuki
Instagram:https://www.instagram.com/seishun_yuzuki/
※この記事は、夕方の情報番組「シリタカ!」(2024年10月21日放送)でお届けしました。