NBAデビュー1年目の河村勇輝!が残したスタッツとは? 激動のシーズンをプレイバック!【バスケ/Bリーグ】
ツーウェイ契約1年目のスタッツ
今シーズン、Bリーグ出身選手としては日本人史上初のNBAデビューを飾った河村勇輝(メンフィス・グリズリーズ)の1年目が終わった。シーズン最終戦となった4月14日のマーベリックス戦では28分間の出場で12得点、5アシスト、5リバウンドとNBAにおけるキャリアハイを記録。全米を熱狂させた「ミラクルノールックパス」も披露するなど渡米2年目となる来シーズンへ向け、最後の最後で確かな手応えも掴んだが、改めて河村勇輝が歩んだ2024‐25シーズンをデータで振り返ってみよう。
NBA挑戦1シーズン目、日本人4人目のNBAデビューを飾り、グリズリーズと下部Gリーグのメンフィス・ハッスルの1クラブでプレーした河村勇輝。大きな一歩を踏み出した今シーズンのスタッツを、昨シーズンBリーグで残した数字と比較してみよう。
河村勇輝スタッツ比較
2023‐24(横浜ビー・コルセアーズ/Bリーグ)
56試合/平均出場時間30.4分/平均得点20.9/平均アシスト8.1/平均リバウンド3.0/フィールドゴール成功率41.6%/3ポイント成功率31.8%
2024‐25(グリズリーズ/NBA)
21試合/平均出場時間3分/平均得点1.1/平均アシスト0.7/平均リバウンド0.3/フィールドゴール成功率36.4%/3ポイント成功率25.0%
2024‐25(ハッスル/Gリーグ)
24試合/平均出場時間31.0分/平均得点12.4/平均アシスト7.8/平均リバウンド2.7/フィールドゴール成功率40.0%/3ポイント成功率41.0%
スタッツを見て分かるように、NBAでのプレーに関して言えばプレータイムも限られ、シュート、アシストなどのスタッツも決して満足いくものではなかった。出番が少ないため、平均得点やアシストが少ないのは致し方ないが、Bリーグ時代と明確な「差」が生まれたのがシュート成功率だ。フィールドゴール成功率36.4%、3ポイント成功率25.0%というスタッツは、ポイントガードというポジションを考えるとかなり心もとない。Bリーグ時代はスピードに加え、高確率のアウトサイドシュートを武器とした河村だったが、少なくともNBAの舞台でそれを誇示することはできなかった。
2023‐24シーズン直前、ワールドカップで翌年のパリ五輪出場を決めたばかりの河村に話を聞いたことがあるが、そのときも明確に「世界との差」を感じたことを語ってくれた。「スピード、パワー、精度」どれをとっても、Bリーグとはレベルの違うNBAという舞台では、さすがの河村もアジャストすることはむずかしかったと言えるだろう。
その一方で、下部組織のGリーグではBリーグ時代とそん色ないスタッツを残したことは大きな収穫だったと言える。もし今シーズン、GリーグでもNBAと同等のスタッツに終わっていたら、河村のアメリカ挑戦は1シーズンで終わっていたかもしれない。ただ、河村はGリーグで明確な「差」を見せつけたことで、プレーのクオリティがすでにNBAのレベルに届くところにあることを証明してみせた。チームの首脳陣もそれは認めたはずで、だからこそシーズン最終戦、マーベリックス戦では28分5秒という今シーズン最長のプレータイムを与えられ、12得点、5アシスト、5リバウンドというキャリアハイのスタッツを残してみせた。
いわば、来シーズンへ向けての「テスト」のようだった最終戦での起用で、河村は「プレータイムさえ与えられれば、一定の結果は残せる」ことを証明してみせたとも言える。この試合はシーズン最終戦であり、グリズリーズとマーベリックスはプレーオフ本戦出場をかけたプレイイン・トーナメントを控えている状況だったことを差し引いても、河村が見せたパフォーマンスは来シーズンへ期待を抱かせるのに十分な出来だった。
今シーズンだけでなく、日本時代からの河村の「変化」を探ってみると、目に見えて変わったのがパワーだろう。現役高校生としてBリーグデビューを果たし、その後大学を中退して本格的に参戦したころから比較しても、その「肉体」が大きく変貌していることがわかる。見た目にわかる二の腕の太さだけでなく、プレーそのものの力強さが増したことで、NBAの猛者たちに対抗するだけのフィジカルを手に入れようと肉体改造に着手していたことは明白だ。
もちろん、本来持っているスピードやテクニックは削がないのは大前提。5月2日には24歳を迎える河村だが、NBAに「定着」することを考えると、決して若くはない。海外の有望な選手は10代後半や20代前半でアメリカにやってくることも多く、バスケットボール選手の「全盛期」も20代後半と言われている。
そう考えると、「渡米から3~5年スパン」ではなく、来シーズン中にはNBA定着を狙うくらいでなければいけない。
下部組織では「違い」を見せ、NBAの舞台に確かな爪痕を残した河村勇輝。渡米2年目の来シーズンこそが、「本当の勝負」になるはずだ。
文・花田雪