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「“他人を信じる高齢者”を狙う詐欺師は超悪党!」ステイサムの復讐劇場『ビーキーパー』デヴィッド・エアー監督が語る

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「“他人を信じる高齢者”を狙う詐欺師は超悪党!」ステイサムの復讐劇場『ビーキーパー』デヴィッド・エアー監督が語る

デヴィッド・エアー監督がじっくり語る!『ビーキーパー』制作秘話

ジェイソン・ステイサムの最新作にして、世界中で大ヒット&高評価を得ているアクション映画『ビーキーパー』が2025年1月3日(金)より全国公開となる。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

過去のステイサム出演作のなかでも飛び抜けて最強のステイサムなのでは? との呼び声も高い本作。監督を務めたのは『エンド・オブ・ウォッチ』(2012年)や『フューリー』(2014年)といった硬派なサスペンス劇を手掛け、『スーサイド・スクワッド』(2016年)ではアメコミ界の“ならず者集団”を魅力的に映像化してみせたデヴィッド・エアーだ。

撮影メイキング 『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

リアルな舞台設定に緊迫感を重視した演出で“3K”どころではない過酷な<現場映画>を手掛けてきたエアー監督だが、この『ビーキーパー』はステイサム主演。サグな出自を活かしたアウトロー俳優として頭角を現した初期キャリアから、近年では物理法則を無視したようなド派手アクションなどにも引っ張りだこの、“最強の擬人化”とでも言うべき俳優である。

そんなステイサムとエアー監督の初タッグ作ということで、本作はアクション映画ファン以外からも注目を集めていた。その実態は、オンライン詐欺をきっかけに恩人を失ったワケアリ主人公<養蜂家/ビーキーパー>ことクレイが、復讐を胸に詐欺犯罪の黒幕へとズンズン迫っていく姿を描いたスカッと爽快、しかしバイオレンスも容赦なしの傑作だ。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

このたびエアー監督のインタビューに成功。アクション俳優としてのステイサムの才能、日本のマンガからの影響、世界中で社会問題化する詐欺犯罪への怒りなどなど、どんな質問にもじっくり答える真摯な人間性もうかがえるインタビューとなった。

「『プレデター』や『ダイ・ハード』を映画館で観た記憶は脳裏に刻まれている」

―本作の脚本家カート・ウィマーと監督は『フェイク シティ ある男のルール』(2008年)以来のタッグですが、ステイサムと組むのは本作が初めてになります。本作を監督することになった決め手を教えて下さい。

以前にも組んだことのあるプロデューサー経由で脚本が届いたんだ。ステイサムはその企画にアタッチされていて、どうやら僕とぜひ組みたいと思ってくれていたようで、そんなことで話がまとまった。決め手としては、まず脚本を読んで、今まで手掛けてきた作品とは毛色が違って面白そうだと思ったこと。自分の過去作品はリアルでシリアスなものがほとんどだったけれど、よりポピュラーな映画が作れるかも、ビジュアル的にも工夫しがいのある、楽しいものができるかもしれないと思ったんだ。自分で書いた脚本ではないので、普段ならば思いつかない、選択しないような方向性が示されていた。そんなところが監督として楽しくて、すごく充実した体験になったよ。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

―おっしゃるように監督の過去作は苦い後味を残すリアルなものが多いですよね。本作は80~90年代のシンプルなアクション映画を彷彿させますが、「観客を楽しませる」ことを徹底したのでしょうか?

そうだね、80年代や90年代の映画にインスパイアされている部分は多分にある。自分自身もそういった映画を観て育っているし、『プレデター』とか『ダイ・ハード』なんかを映画館で観た記憶は今でも脳裏に刻まれているよ。何が魅力なのかというと、あの時代のアクション作品は“違う映画言語”なんだ。つまり、ステークス(主人公が賭けているもの)がすごく高い中で、ドラマやアクションが繰り広げられている。でも楽しくて笑えて、狂った楽しいキャラも登場する……という、観客にキャンディをばら撒いているような感じだね。

そのおかげで生々しくて楽しいんだけれど、それは簡単には作れないんだということも分かった。すごくリアリティに根ざしたドラマを描くほうが“まんま”だから、じつは簡単なんだ。だから、よりスケール感のある、うるさくて楽しくてカラフルな作品を撮るとなると、選択肢の幅が広がるぶんかなり賢く選択していかないとならない。そういうところが難しいね。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

「ジェイソンは身体の動きや形というものを熟知している」

―ステイサムは日本でも非常に人気のある俳優なので、ファンは映画の中で彼が何をするのかある程度予想できてしまいがちです。しかし、本作はファンの予想を超えた衝撃を与えてくれます。その「衝撃を与える」ことについては強く意識されましたか?

もともと脚本によるところも大きいんだけれど、本作は“出だしがソフト”だよね。そして感情の物語であって、そこが出発点になっている。だから演出するうえでも、どういうトーンで描くのか、どういう感情を描くのか、という点をかなり意識したよ。今回はクレイ(ステイサム)の恩人であるエロイーズが亡くなるわけだけれど、それは彼にとって相当な喪失感があった。まず、そこを伝えなければならない。そして彼の喪失感があってこそ、最後の展開に満足できる、スカッとさせられることになるんだと思う。

そもそもヒーローの物語は暴力と復讐だけではなく、それプラス心の何かが動かなければならない。その心の何か、あるいは感情に根ざした部分が、うまい具合にストーリーと相互作用し合うことで、観客にとってはすごく満足のいくものになるのかなと思っているよ。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

―本作に登場する「養蜂家」という組織およびコードネームはフィクションかと思いますが、現実社会における何らかのメタファーとしての「養蜂」なのでしょうか?

端的に言うと、システムを外側から守ろうとする隠れた存在である、ということ。現実世界で例えると、それは特殊部隊であったり、ビン・ラディン暗殺に挑んだネイビーシールズのチーム6であったり、とてつもない危険を冒しながら誰も知らないところで暗躍している組織とか……。僕たちが普通に日常生活を送っている中で、誰が何処でどんな決断を下していて、どういった作戦を繰り広げて世の中を守っているのか、我々は知る由もない。そういう存在がいるんじゃないか? と。ただ、今の世の中では政治的な何かが働いているとか、政府機関が関わっているとか、それこそ目に見えないものが作用しているのだろうとも思う。そこは『ビーキーパー』の世界においては、もうちょっとロマンチックに描かれているかな。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

―クレイは身近にあるものを何でも武器にします。アクション指導において、ステイサム自身からもアイデアが出ましたか? ステイサムから現場で学んだこともあるのでしょうか。

ジェイソンはアクションの振り付けを作り上げていくことにも積極的に加担してくれるんだけど、最初はスタントコーディネーターたちと試行錯誤しながら、これを使ってみようか、あれも使おう、なんてアイデアを出しながらオープンにわちゃわちゃとやり合うんだ。その中から自ずと形が見えてくる。

そうして振り付けを作り上げていったんだけど、「銃を携帯しない」という設定は意図的なものだった。おっしゃるように、どう身の回りの物を使っていくのか? というサプライズ要素を意図的に入れている。まあ、銃撃戦なんて我々は見飽きているので(笑)、いかに驚かせるか? ということが一つのキモになったよ。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

ジェイソンは身体の動きや形というものを熟知しているので、そういう意味でアクションはダンスであり、バレエのようなものでもあると思う。ジェイソンは身体のパフォーマンスがどのようにカメラに映るのか、ということをすごく理解しているんだ。たとえばフレーミング内で映える身体の動き、ある被写界深度で撮られた人体がどう映えるのかとか、すごく分かっている。そういうアクションって、たとえばグラフィックノベルならばどういう絵になるだろう? って考えるくらいグラフィカルなもので、そういうことに関してすごく学ぶことは多かった。

グラフィックノベルといえば、日本のマンガも大いに参考になるものだったよ。マンガを読んでいると、すごくスマートかつグラフィカルに人体の動きを捉えていて、そういうものも参考になったね。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

「権力を持つ者が、身を守る術のない人たちに付け込むとどうなるのか?」

―クレイの復讐の理由となる出来事は、私たちの誰もが身近に起こることを恐れている詐欺犯罪です。日本でも大きな問題になっている犯罪なのですが、監督の周囲でもそういった被害を耳にすることがあるのかなと思うくらい、強めの怒りを感じたのですが……。

おっしゃるように、いまの世の中では誰しも被害者を一人くらいは知っているだろうし、実際に被害に遭った人もいるかもしれない。ハッキングだとか、オンラインで買ったものが届かないとか、それこそ口座情報を掴まれて大金を盗み取られたとか、色々あると思う。僕も仕事でかなりコンピューターを使ってきたから、どうやって身を守るべきか熟知しているつもりなんだけど、それでも危うく騙されそうになることはある。僕ですらそうなんだから、あまりPCを使い慣れていない、テクノロジーに疎い高齢世代となれば、その危険度はいくばくかと思うよ。どんな危険にさらされているのだろう、と。

ということで、怒りが湧いてくる。被害者の多くは人を信用する世代で、そこに付け込んでお金を盗むというのは悪党中の悪党だと思う。たとえば銃を突きつけて脅かすのなら一応、面と向かっている犯罪だけど……こういう詐欺犯罪は顔も出ないし、身を隠しながら1000マイルも離れたような場所からやることもできて、そして彼らは消えていくわけだから、なんだかゴーストと戦っているような感じだよ。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

―「人を信用する世代」というお話がありましたが、ジョシュ・ハッチャーソンが演じるデレクはIT社会ならではの無責任な悪人です。彼のような「無意識の悪」に対して現実世界でも危機感を感じますか? そして、それをどのようにデレクに反映したのでしょう。

デレクは、ある意味“最強のヴィラン”だと思う。なぜなら、ものすごく独りよがりでエゴの塊で、自分のことしか考えていない。つまり人脈も特権もあって全てを持っている男が、自分の身を守る術のない無垢な人たちに付け込むということを描いているわけだけれど、デレクの人物像として最も悲劇的なのは、人を人とみなしていないところにあると思う。

本作ではキャラクタースタディというか、そういう人物を掘り下げようとしている。彼を通じて問いかけているのは、例えば自分がしたことの当然の帰結を、なんとしてでも避けようとする他責思考というか、ナルシシズム、独りよがりとは何なのか? ということ。それを彼を通して掘り下げたつもりだよ。我々が人間としてあるべき姿の正反対というか、人を慮ってケアしなければならない、そうすべきであるというのが我々の人間社会だけれど、その真逆だね。

そして権力を持つ者が、身を守る術のない人たちに付け込むとどうなるのか? 世の中の大半の問題は、そういうところから来ていると思う。だから比喩にもなっているんだ。権力者が、あまりにも現実世界と乖離したところで生きているために、知らず知らずのうちに人を利用していたり悪用していたりする。そういった警戒感を皆に持ってほしいという警鐘の物語でもあるんだ。

『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

「ぜひご両親やご祖父母、ご親戚を連れて観に行ってほしい」

―ちょっと変な質問で恐縮ですが……日本の一部の地域では貴重なタンパク源として「蜂の子(クロスズメバチの幼体)」を食べる風習があります。アメリカにもそういった文化はあるのでしょうか?

詳しくはないけれど、他の文化圏でもそういった風習があるということは知っているよ。僕なら喜んで食べてしまうかな。日本の料理は何でも好きだけど、タンパク源というならウェルカムだよ(笑)。

―本作はあまりにも面白いので、シリーズ化してほしいと願うファンもいると思います。その可能性はありますか?

いま企画が進んでいるよ。この後のクレイがどうなっていくか、観られるかもしれないね。

―最後に日本の観客にメッセージをお願いします。

これからご覧いただく日本の皆さんに、ぜひエンジョイしてほしいです。良い映画体験になったらいいなと思っています。ぜひご両親、あるいはご祖父母やご親戚を連れて観に行ってください。どのようにして身を守るべきか、そういうことに対して話し合うきっかけにもなるんじゃないかと思います。そして何よりも楽しんでいただきたいです。

撮影メイキング 『ビーキーパー』© 2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

……これほどサクサクとストーリーが進み、観客が悪人に対してやってほしいことを倍々で全部やってくれる主人公が登場する映画は、かなり久しぶりかもしれない。ハリウッド映画ながら私たちにも身近な犯罪がテーマだから、爽快感も格別だ。監督が言うようにご家族と一緒に鑑賞する……のは各自ご判断いただくとして、ぜひ映画館でステイサム無双を浴びて心のデトックスをしてほしい。

『ビーキーパー』は2025年1月3日(金)より全国公開

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