マッチョイズムは「パワハラやモラハラの土壌を生む」という声も 職場の「強さを競う文化」の調査
リクルートマネジメントソリューションズ(東京都港区)は5月19日、職場におけるマッチョイズムの実態調査をまとめたレポートを発表した。
約1000人の正社員を対象に、「仕事最優先」「競争に勝つことが望ましいとされる」「弱みを見せない」「力強さ・スタミナがある」といった、強さを競う文化の影響などを調査。回答者の偏ったイメージ想起を避けるため、マッチョイズムの代わりに「強さを競う文化」という表現が用いられている。
自分の職場で過剰だと感じるのは「仕事を最優先すること」
回答者の7割以上が「強さを競う文化」は社員のストレスや精神的負担を増大させる、と考えている(71.3%)。そこで「強さを競う文化」の特徴のうち、自分の職場において過剰だと感じることを聞いたところ、最多は「仕事を最優先すること」だった。
そして総合職や地域総合職、一般職など、コース別雇用をしている企業で働く人の方が、よりマッチョイズムを感じていることがわかった。4つの構成要素や過剰感において、いずれも平均値より高い。同調査では「総合職なのだから高い成果を出して当然である」「総合職なのだから、弱音を吐いていたらほかの立場の人に示しがつかない」といった声掛けの影響を指摘する。
成長につながる一方、「パワハラやモラハラの土壌を生む」という声も
「強さを競う文化」の影響について、具体的なエピソードを自由記述で答えてもらったところ、よい影響としては「成長」「モチベーション向上」「パフォーマンスの向上」についての意見が挙がった。
全体の過半数は「よい影響はない」という主旨の記述だった、としている。悪い影響としては、「疲弊感」「公平性の低下」「パフォーマンスの低下」のほか、「多様性」の低下に関する意見が寄せられた。
「強さを競う文化」のよい影響
・プレッシャーにさらされることで、メンタルが強くなる。業務への集中力が増す(男性、30歳代、営業)
・ポジティブな言動をすることで、ある程度自分を鼓舞し、仕事で頑張ろうという気になる(男性、40歳代、専門・技術系)
・成果を気にすることで結果的に業績がよくなる(女性、30歳代、接客・サービス)
「強さを競う文化」の悪い影響
・競うことが目的化して、仕事の質が落ちる(男性、30歳代、専門・技術系)
・強さ以外の尺度で物事を見られない従業員が出てくる。パワハラやモラハラの土壌を生む(女性、30歳代、事務)
・業務時間外も仕事のことを考えなければならないという、気が休まらない風潮がある(女性、40歳代管理職、専門・技術系)
・担当の業務によって、結果がわかりづらい人は評価されにくい(女性、50歳代管理職、営業)
柔軟な働き方を促す制度とマッチョイズムの過剰感には有意差なし
回答者が所属する企業のうち、約4割がフレックスタイム制度を設けており、16.8%が副業・兼業を許可している。同調査では、以下のような柔軟な働き方を促す制度があることと、「強さを競う文化」の程度や過剰感に有意差はなかった、としている。
制度割合フレックスタイム制度39.3勤務地を限定できる制度(限定正社員など)17.0法定基準以上の育児休暇制度22.6法定基準以上の短時間勤務制度19.4法定基準以上の子どもの看護休暇15.5育児・介護以外の短時間勤務制度23.6多様な長期休職制度(ボランティア、留学など)11.0副業・兼業の許可16.8分からない・あてはまるものはない36.7
調査担当者は「強さを競う文化」について、一概に批判するものでも礼賛するものでもないとした上で、過剰感につながりやすい「仕事を最優先すること」を要求するような言動を控える、それを重要視する組織風土なのであれば是正するといった対応が求められる、とコメントしている。
職場における「強さを競う文化」に関する調査は、従業員規模50人以上の企業で半年以上働いている20歳から59歳までの正社員933人を対象に、2025年2月17日から20日までの間、インターネット調査で実施。レポートの詳細は同社公式リリースにて確認できる。