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遺物とVRでたどる伝説のファラオ ― 「ラムセス大王展」(取材レポート)

アイエム[インターネットミュージアム]

エジプトを最も長く治世し、アブシンベル神殿をはじめとする多くの巨大建築物をつくったり、ラムセス2世(ラムセス大王)。古代エジプトの芸術と技術を後世に伝え、エジプト史上最も偉大なファラオといえます。

ラムセス大王の時代にまつわる貴重な遺物180点を展示するほか、最新のバーチャル・リアリティー技術を用いた没入型体験も楽しめる展覧会が、ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo(豊洲)で開催中です。


ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo(豊洲)「ラムセス大王展 ファラオたちの黄金」会場


ラムセス大王は、紀元前1280年頃、父セティ1世の死去に伴い20代半ばで即位しました。戦士でありながら平和の使者や建設者としても知られ、8人以上の妻との間に100人以上の子どもをもうけ、67年間エジプトを統治しました。

生前から神として崇拝され、エジプトに平和と繁栄をもたらす黄金時代を築いたことから、現在では古代エジプトの力と威厳の象徴とされています。


《ラムセス2世の巨像の頭部》新王国時代、第19王朝 エジプト博物館


ラムセス2世は、神々への信仰と感謝を示し、帝国全土にその存在感を発揮するため、精力的に建造物を建設しました。

父セティ1世の神殿を完成させた後、新たな神殿、石碑、彫像を次々に建設。さらにペル・ラムセスを新たな首都に定め、エジプトとヌビア各地に神殿を建立しました。


《雄羊の頭を配した器を捧げるスフィンクスとしてのラムセス2世像》新王国時代、第19王朝 エジプト博物館


ラムセス2世は、ヌビア地方で7つの神殿を築きましたが、なかでも赤い砂岩の崖に刻まれたアブ・シンベルの神殿は、圧倒的な迫力です。

大きい神殿はラムセス2世自身を神として祀ったもので、小さい神殿は豊穣の女神ハトホルと愛妻ネフェルタリに捧げられたものです。


アブ・シンベル神殿の模型


数々の戦いに勝利したラムセス2世は、アブ・シンベル、ルクソール、カルナック、ラムセウム、アビドスの神殿の壁に、カデシュの戦いの物語を刻ませました。

中央の石材には、シリア人、ヌビア人、リビア人を斧で成敗するラムセス2世を表現。残りの2つの石材には、軍司令官に抜擢された将軍ウルヒヤが描かれています。


(左から)《ウルヒヤの墓から出土した彩色された石灰岩製の石材:貯蔵室の備蓄を監督する将軍》新王国時代、第9王朝 サッカラ / 《敵を成敗するラムセス2世》新王国時代、第19王朝 エジプト博物館 / 《ウルヒヤの墓から出土した彩色された石灰岩製の石材:ワニがはびこる運河を渡るエジプト軍》新王国時代、第19王朝 エジプト博物館


古代エジプトでは、神々と特定の動物が結びつけられ、供物として捧げられた動物はミイラにされ、神殿近くの地下墓地に埋葬されました。

今回展示されるているのは、ネコ、ライオンの子、マングース、ワニ、スカラベのミイラ。古代都市メンフィスの廃墟サッカラで近年発見されたもので、考古学者は、この地にまだ1500万体以上の動物のミイラが眠っている可能性があると推測しています。


動物のミイラ


ラムセス2世のミイラは隠し場所に安置されていましたが、王墓は古くに略奪され、何も残されていませんでした。さらに、暴風雨による鉄砲水で墓の壁や天井、床が損傷を受けていました。

彼の遺体を納めていたのが、展覧会の目玉でもある《ラムセス大王の棺》。美しい彫刻が施されたレバノンスギの棺で、優美なカーブを描き、強靭さや慈悲、強い意志と威厳が見事に表現されています。


《ラムセス2世の棺》新王国時代、第19王朝 エジプト博物館


会場最後に鎮座している《ラムセス2世像の上部》は、ラムセス2世の黒色花崗閃緑岩の胸像で、タニスのアムン大神殿で発見されました。

薄い麻布越しの身体表現など、ラムセス2世の治世初期の作風が特徴で、父セティ1世の影響も見られます。


《ラムセス2世像の上部》新王国時代、第19王朝 シャルム・エル・シェイク博物館


展示を出た先にあるのが、バーチャル・リアリティー(VR)でラムセス2世が建設したアブ・シンベル神殿と、ネフェルタリ王妃の墓に焦点を当てたコンテンツを楽しめるエリアです。

VRゴーグルとヘッドフォンを装着する点は一般的なVRと同じですが、特徴的なのは半球状の椅子に座って体験すること。足が浮いた状態で進み、ストーリーに合わせて椅子が回転したり振動したりするため、鑑賞者は楽な姿勢のまま臨場感あふれるプログラムを満喫できます(展覧会とは別料金)。


「ラムセス大王展 VR体験」


壮大な建築物や精緻な工芸品、最新技術による没入型体験を通じて、ラムセス2世の偉業と古代エジプトの魅力を存分に味わえる展覧会です。

彼の時代に築かれた文化や信仰、そして人々の暮らしに思いを馳せながら、ぜひ会場でその歴史を体感してみてください。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2025年3月7日 ]

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