【グラマラス・ロック列伝】90年代 “ヴィジュアル系” とは何だったのか? vol.2
リレー連載【グラマラス・ロック列伝】90年代 “ヴィジュアル系” とは何だったのか? vol.2
ヴィジュアル系は音楽のジャンルではない
ヴィジュアル系という言葉から、その外見イメージを共有することは可能だが、音楽性の話になると答えは十人十色だろう。それは、20世紀末までの日本で奏でられた(いわば世界から影響を受けた)全ての音楽がルーツであると言っても過言ではないくらいの広がりを持っている。しかもさらに、その雑食性がそれぞれのジャンルを横断、合体を繰り返し変化を遂げるからより一筋縄ではいかない。そう、ヴィジュアル系とは音楽のジャンルではないのである。
488万枚を売り上げた「REVIEW-BEST OF GLAY」
1990年代後半から2000年代前半、どういった音楽が大きなセールスを記録していたのか。もちろん売上枚数が全てではないが、その時代を表すものがそこにはある。そう、ラジオや雑誌だけでなく、ミュージックビデオ、CMソング、ドラマ/アニメ主題歌、といった表現の選択肢も多岐に渡り、より大きな対象に “魅せる” 機会が増えていった時代だ。
1989年に発売された、X(現:X JAPAN)のメジャー・デビューアルバム『BLUE BLOOD』から8年後、Xのレーベル、エクスタシーレコード出身のGLAYが1997年にリリースした初のベストアルバム『REVIEW-BEST OF GLAY』が488万枚を売り上げ、その年の年間アルバムチャートの1位に輝いた。そして、翌98年のシングル売上ベスト50には、いわゆる “ヴィジュアル系” とされるアーティストがなんと17組もランクイン。
独自性の高さを極めていったヴィジュアル系バンドたち
80年代のバンドブームをルーツに持ち、ポップロック的叙情を取り入れながらボーカルを活かし、歌詞を聴かせるバンドサウンドを志向したGLAY。
よりハードな方向に進み、元来持っていたハードロック/メタルのエッセンスを軸にしながらも、広大な世界観に至るサウンドメイクを実現したL’Arc~en~Ciel。
そして、洋楽の深い森まで手を伸ばし、強靭なリズムとサウンドを融合させ、想像の異世界への扉を開いたLUNA SEA。
歌謡曲やポップスの風味を取り入れ、ボーカルを中心に歌詞を聴かせ、自らをポップアイコンとしたSHAZNA。
一方で、シーンに対しエッジの立った独自のスタンスを取り続ける黒夢はパンキッシュなサウンドやステージで男性ファンを増大させ、他方では、特徴的なヴォーカル、ストレートでフックの効いたメロディがアニメにもマッチしたPENICILLINやSIAM SHADEがスマッシュヒットを放ち、ライブ動員に拍車をかけた。
すべて違うジャンルといえる音楽
この時代をリアルタイムで体験した方にとっては、連続する当たり前の日常風景だったかもしれない。しかし30年近く経った今、例えばZ世代にとって “ヴィジュアル系” というものは、その全貌を捉えきろうとしても果てが霞む地平線を前にした気分── なのではないか。
結局それぞれのアーティストの音楽やヴィジュアルに触れて、その時期に何が起こっていたのかを実感するしかない。すべて違うジャンルといえる音楽、しかし、ひとつの言葉の元に語られるもの、それが “ヴィジュアル系” なのである。ということで、この【グラマラス・ロック列伝】では、ヴィジュアル系というものをあらゆる角度で検証していく。ご期待ください。