Yahoo! JAPAN

高輪ゲートウェイシティで JR東日本グループが取り組む CO₂排出量”実質ゼロ”のまちづくり 25年3月に一部が開業・TAKANAWA GATEWAY CITY

鉄道チャンネル

鉄道チャンネル

「TAKANAWA GATEWAY CITY」は、2020年3月にJR山手線の品川~浜松町間に49年ぶりに出来た新駅「高輪ゲートウェイ」の駅前開発として整備される、約10haにもなる新しい街です。2025年3月にTHE LINKPILLAR 1 NORTH/SOUTH(複合棟Ⅰ)のまちびらきを迎え、オフィスや商業施設、文化施設、ホテル、レジデンスなどが整備されます。

街の概要に関してはこちらを:高輪ゲートウェイ駅前の開発進捗 2024年1月版① JR東日本・品川開発プロジェクト「TAKANAWA GATEWAY CITY」

この街はJR東日本グループが取り組む環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」の先導プロジェクトとして、さまざまなサービスで使用するエネルギー全体でCO2排出量「実質ゼロ」を目指す街となります。今回は、この新しいまちづくりの取り組みを紹介します。

JR東日本グループが取り組む新しい街

「TAKANAWA GATEWAY CITY」は、この場所にあった品川車両留置基地を整理してできた広大な土地を活用しています。エリア全体を通してJR東日本グループの考える計画的な街づくりができるため、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」としての新たな取り組みが行われており、2050年までにCO₂排出量『実質ゼロ』を目指す「ゼロカーボン・チャレンジ2050」の実証実験の場として最適の場所といえます。JR東日本は、グループ企業のえきまちエナジークリエイトやジェイアール東日本物流とともに、水素・バイオガス・多様な再生可能エネルギーを活用し、ヒト・街・地球に優しいサステナブルなまちづくりを推進しています。

水素・バイオガス・多様な再生可能エネルギーを活用します

TAKANAWA GATEWAY CITYの中では、ビル屋上等の太陽光発電装置や風力発電装置、さらに太陽熱、下水熱、地中熱、バイオガスなど様々なものを利用して、「再生可能エネルギー」での”創エネ”に取り組みます。

報道説明会での資料より

街の地下には国内最大級の蓄熱槽などが

THE LINKPILLAR 2(複合棟Ⅱ)の地下には、街全体の冷暖房をコントロールする地域冷暖房施設が設けられ、冷暖房のエネルギー削減を目的として国内最大級となる20500㎥の蓄熱槽が導入されます。これは50mプール約8個分になります。蓄熱槽とは、熱エネルギーをためておく水槽で、夜間等の需要の少ない時間に製造した冷熱や温熱をためておき、需要に応じて蓄熱槽から放熱することで熱供給を行い、それを街の空調に活用します。これにより効率の高いエネルギー供給が実現され、CO2削減など環境に優しいだけでなく熱源機械の負荷軽減にもつながります。(下の模型を見ると温熱槽と冷熱槽の2つ蓄熱槽がわかります)

地下に設けられる、街全体をカバーするエネルギー施設の模型

蓄熱槽の水は、災害時には非常用水(一時滞在施設等のトイレ用水や消防用水など)としても使用することができます。

また、建物内エリアをゾーン別に細分化して空調設備を運転制御する「デマンドレスポンス・ゾーン別空調管理システム」を導入することで、快適性と街全体で高度かつ最適なエネルギー利用の両立が実現されます。

水素利活用の取り組み

TAKANAWA GATEWAY CITYは、環境に優しい水素社会の実現を目指して、街を利用するモビリティなど様々な場面で水素利活用に取り組みます。

街の地下には、燃料電池コージェネレーションシステムが導入されます。都市ガス燃料を改質して取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させることで、電気と熱を同時に生成するシステムで、発電効率が高く、省エネ性・環境性に優れています。

また、まちびらきとなる2025年3月には、高輪ゲートウェイ駅に水素燃料電池システムが設置されます。これにより、再生可能エネルギー由来の水素を活用した電気を供給します。将来的には、街の中で再生可能エネルギーにより水素を製造することを検討しているそうです。

集約型館内キャリーと水素を利用したFCトラック

「TAKANAWA GATEWAY CITY」への荷物輸送に関しては、域外からの荷物を一度外部デポに集約した後、FC(燃料電池)トラックを用いて街の中へ配送をする「集約型館内キャリー」の仕組みが整備されます。

外部デポでの荷受け後に一括配送する「集約型館内キャリー」

たくさんの配送業者がそれぞれの建物やフロアに荷物を運ぶ従来の配送方式では、周辺の渋滞や駐車場不足、荷受場所の混雑が予想されますが、「集中案内キャリーシステム」を導入することにより、配送の合理化や車両流入台数削減による周辺渋滞緩和やCO2排出削減などが見込めるといいます。さらに、街内への配送に水素を燃料とするFC(燃料電池)トラックを使用することで、環境にやさしい荷物輸送になるとしています。

ジェイアール東日本物流のFCトラック(高輪ゲートウェイ水素ステーションにて)

2025年3月のまちびらきに向けて、既に2024年6月には外部デポ(小型物流拠点)が、南に6kmほど離れた東京都大田区の平和島に整備されており、街の開業時からFCトラックでのピストン輸送による集約型配送が実現する見込みです。

街で出たゴミも活用!サーキュラーエコノミーを実現

この街での事業活動で発生する廃棄物や資源をリサイクルし街で有効活用する、「サーキュラーエコノミー」の取り組みも行われます。その一環として、THE LINKPILLAR1の中に東日本エリア初の”ビルイン型バイオガス設備”が、2025年3月に設置されます。

街の商業施設にある飲食店等から出る約4t/日の食品残渣(ざんさ)いわゆる生ごみ等を資源として再利用し、それを発酵させてガス化することで、食品廃棄物の約7割の減量を見込みます。ここで生成されたガスを燃料として、ビル内のバイオガスボイラーを使用し、街にできるホテルの給湯の約10%の熱を賄う予定です。

巨大プロジェクト「TAKANAWA GATEWAY CITY」も開業まであと7か月

これらの取り組みほかにも、街の中で排出されたCO₂を回収して街のくらしの中で有効利用することも検討しているそうです。

TAKANAWA GATEWAY CITYには、街や周囲の環境への配慮や地域コミュニテーとの繋がりを構築するためにも、多くの緑地が設けられます。

TAKANAWA GATEWAY CITY内には約2.7haの緑地が設けられます

今回紹介した、創エネや水素利用などのエネルギー施策やサーキュラーエコノミーの導入、そして街の緑を整えることで、TAKANAWA GATEWAY CITYはCO₂排出量「実質ゼロ」でサスティナブルな街の実現を目指しています。

TAKANAWA GATEWAY CITYの目指すまちづくり 報道向け説明会資料より

2025年3月のTHE LINKPILLAR 1 NORTH/SOUTHの先行開業までは、あと7か月に迫っています。建物の外観が出来上がりつつあるのは、近くからご覧になった方はおわかりだと思いますが、街の下や建物内の見えない部分では今回紹介したような街全体のエネルギー循環を機能させるための設備の整備も進んでいます。

JR東日本がグループ力を集約して取り組むこの実験的で新しい街づくりがどのように進むのか、街全体が開業して、多くの人々が集い生活をはじめるまで、今後も見守っていきましょう。

(鎌田啓吾)

【関連記事】

おすすめの記事