【中学受験】“無限課金レース”は今すぐやめて! カリスマ家庭教師が伝授する「お金をかけずに成績を伸ばす」唯一の方法
教育ジャーナリスト・佐野倫子さんによる中学受験伴走連載、カリスマオンライン家庭教師・小堀正博先生に取材。「家庭教師や塾に頼れないときの勉強法」についてなど(全3回の3回目)。
【▶画像】【自由進度学習・探究学習】名古屋・矢田小学校の「自分で考えて決める授業」教育ジャーナリストの佐野倫子です。中学受験の伴走中、「これ以上、塾や家庭教師に頼れない……」と、焦りや不安を感じたことはありませんか?大人気カリスマ家庭教師・小堀正博先生インタビュー最終回は、「無限の課金を避ける家庭学習の極意」をズバリ質問。親子の不安を解消するマインドセット、そして志望校の合否を超えて子どもを伸ばす「保護者の声かけの極意」を教えてもらいました。
小堀正博(こぼり・まさひろ)
アメリカ合衆国ワシントンD.C.出身。関西学院中学部・高等部を経て、関西学院大学法学部卒業。中学受験生を中心に、小学生から高校生まで全科目に対応。オンラインでの家庭教師として絶大な人気を博す。俳優としても活躍中。高等学校教諭一種免許状(公民)所持。
ひとつの教材を繰り返しやり込む
──中学受験で惜しみなく教育費を投じる様子を「課金レース」などと揶揄する声がある一方で、経済的に塾や家庭教師を続けるのが難しいというご家庭もあります。家庭で実践できる勉強方法について教えてください。
小堀正博先生(以下小堀先生):ゆるぎない基礎力をつけるために大切なのは「復習を徹底する」ことです。私のおすすめはとにかく1つの教材を繰り返すこと。新しい教材を次々に買う必要はありません。
基礎的な段階において、算数や理科、社会は、同じ教材をやり込み、完璧にすることはとても効果的です。
国語だけは例外で、さまざまな文章に触れる経験が必要ですが、それ以外の科目はむしろ教材を「広げすぎない」ほうが伸びると感じています。
──確かに、我が家の場合も、あやふやなまま雑にテキストで演習を終わらせたときが、一番成績が落ちた記憶があります。焦って手を広げすぎず、丁寧に学習をしたほうがいいですね。
小堀先生:私はそう考えています。また、もう一つ大事なのは、成績が思うように上がらないときは勇気をもって演習レベルを下げるのがおすすめです。
苦手な科目は、1学年下の教材を使ってもいいんです。保護者の方はそれを「マイナス」ととらえないでください。易しく感じられる問題こそ、確実にしっかり解けるようになれば、基礎力養成に効果的なため、のちの伸びにつながりますから。
──周囲で最後にお子さんがぐっと伸びたご家庭は、6年生の前期に5年生のテキストを復習した、などの基礎回帰をジャンプ台にしていたパターンでした。そこで「いまさらそんな昔のテキストを……!?」などと思わず、弱点に正面から取り組んだのが勝因ですね。
保護者のサポートの極意は「できているところ」を見つける
──では、たくさんのご家庭を見てきた小堀先生に、効果的な保護者からの声かけについてアドバイスをお願いします。
小堀先生:保護者の方は「できないこと」より「できていること」に必ず注目してください。
例えば、「ここは解けたね! すごいね!」とまず褒めてから、「次はここもできるようになるともっと良いね」と伝える。すると子どもは、「認められた」という実感があるからこそ、次に挑戦することができます。
まず認められることによって挑戦する力が湧いてくるのです。順番と言い方を意識するだけで、効果倍増します。
自己肯定感を育む声かけこそが、学習を継続するエネルギーになります。親御さんの一言は、子どもにとって本当に大きいんですよ!
「中学受験に挑戦」自体が子どもの成功体験
──中学受験には競争という側面があり、残念ながら志望校に合格できないなどで肯定感が下がってしまうケースもあります。それを避けるためにはどうすればいいでしょうか?
小堀先生:これはずっと私が申し上げていることなのですが、中学受験はあくまで通過点です。大事なのは「受験が終わったあと」。そのあとの人生を豊かにするために子どもたちは今、頑張っています。
そう考えれば、中学受験に失敗なんてないと思うのです。頑張ったことや学んだことはひとつも無駄になりません。「受験に挑戦したこと」自体がまず成功体験ですから。「受験できた」ことに自信をもってほしい。
もうひとつ。私は、一度お引き受けした生徒とは、一生の関係性だと思っています。受験後も生徒やご家庭と連絡を取り合うようにもしています。
というのも、中学受験だけを切り取って、「合格・不合格」の結果だけに振りまわされるのではなく、「学ぶこと」が生活の一部として持続してもらえるように。また、受験に限らず困ったときに相談できる関係を続けることで、子どもは安心感を持って日々過ごせると実感しているからです。
中学受験はハードです。模試で思わしくない結果がでることもあるでしょう。第一志望の学校に不合格になることだってある。そんなときに思い出してほしいのは、「中受はゴールなんかじゃない」という当たり前の事実です。
子どもたちにとっては通過点であり、充実した人生を送るための手段のひとつ。必要以上にその結果を恐れたり、悔やんだりすることなく、保護者の方はお子さんを包み込んであげてくださいね。
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たとえ経済的な事情で選択肢が限られても、「基礎を大事に、着実に学びを積み重ねることで未来は必ず開けていく」と小堀先生。
私もつい先日、子どもの成績に悩んで信頼する塾の先生に相談に伺ったのですが、「諦めないでコツコツ努力を最後まで続ければ、必ずその子に合った学校に合格できますよ」とアドバイスをいただきました。
「ここまで成績を上げたいのに、上がらないからダメだ」という思考になっていたことに気づかされたのです。親が勝手に設定した目標に振りまわされて、子どもを見失っていたわけですね。
そして、大切なのは保護者が子どもの努力を認め、伴走し続けること。そのサポートとして、相性のいい家庭教師の先生とタッグを組めれば幸運だと感じました。
小堀先生へのインタビューを通して学んだのは、家庭教師の存在は学習方法だけにとまらず、「人と人との信頼関係こそが子どもを伸ばす」という真理でした。
小堀先生、ありがとうございました。
撮影/日下部真紀
取材・文/佐野倫子
『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)