<母の初孫フィーバー>妹の子なのになぜ?「お兄ちゃんにソックリね~」モヤモヤ言動【まんが】
私はカエデ。3人きょうだいの真ん中です。私と妹のユリエは地元で暮らし、兄のヨウイチは遠方に住んでいます。今はそれぞれ結婚して家庭を持っていますが、会えば子どもの頃に戻って話せるような仲の良いきょうだい関係です。さてこのたび、ユリエが男の子を出産しました。実家の両親にとっては初孫で、はたから見ていても嬉しくて大フィーバーしているのがわかります。特に母の喜びようはものすごく、最初は微笑ましく見ていたのですが……。
「初孫フィーバーってやつだねー。ユリエがかわいい子を産んだから嬉しかったんだね」私は笑いながら言いましたが、ユリエはなんだか浮かない顔です。「あれ? 何かあったの?」その反応に引っかかった私は、ユリエに話を聞いてみました。
「ユリエにそっくりね」って言うならわかるけど、なんでお兄ちゃん……? ユリエが戸惑ってしまうのも分かります。あまり気にしないように「きっとお母さんも舞い上がっちゃってるんだよ」とフォローはしておきましたが……。
妹のユリエがオースケを出産すると、両親は初孫に大喜び。「かわいい、かわいい」とそれはもう大はしゃぎだったのだそうです。しかしユリエは、母のある発言に違和感を覚えていたようです。それは「オーちゃんはお兄ちゃんにそっくりね」というもの……。 ユリエにそっくりというのならわかりますが、なぜそこで兄の話が出てくるのでしょう。さすがにユリエも少し嫌な気持ちになったそうです。私も少し気にはかかったものの、今は大きなトラブルになっていないようなので、そっとしておくことにしました。 しかし母のその言動は、オースケが成長するにつれてさらに激しくなっていったのでした。
「失礼だよ」「デリカシーない」思わず注意すると……ヤバい空気
遠方に住んでいる兄が久しぶりに仕事で地元に来たため、私たちは実家に集まりました。すると兄とオースケを見て、母がうっとりしたように言うのです。「本当にお兄ちゃんにソックリよ~!」さすがに兄も戸惑っている様子です。
母はオースケをなかば無理やり兄に抱っこさせると、嬉しそうに手を叩きました。「本当にソックリよ! 親子みたいね!」やたらとはしゃぐ母に、困っている父と兄。ユリエは明らかにムッとしています。私は思わず声をあげました。
遠方に住む兄の出張があり、私たちきょうだいは久しぶりに実家に集まりました。以前と違うのは、ユリエが幼いオースケを連れてきていること。両親はもちろんのこと、兄も私もニコニコしながらかわいらしいオースケを見守っていました。 しかしここでも母からお決まりの「お兄ちゃんにソックリ」発言が……。それだけでは飽き足らず、母は兄にオースケを抱っこさせて「親子みたい」と言い出す始末。周りの反応に気づかずはしゃぎつづける母の様子に私はいたたまれなくなりました。 私が注意すると、母はハッとした顔をして口をつぐみました。そしてその場には気まずい沈黙が流れてしまったのです。
幼い息子にまた会えた気分?「ソックリ」連発していた理由とは
父が取りだしたのは、今ではもうほとんど見ることのないVHSのビデオテープでした。父が再生すると、そこに映し出されたのはまさしくオースケ。そのソックリ加減たるや、オースケ本人が「これは自分だ」と見間違うほど……。さらに。
画面のなかの幼い兄はニコニコしながら、「オーちゃんはねぇ」としゃべっています。小さいころの兄はうまく「ヨウちゃん」と言えなかったそう。ユリエですらソックリである事実を認めると、なんとなくほっこりとした空気になりました。
父が保管していた昔のビデオを見てみたら、そこにはオースケそっくりの子どもが映し出されていました。なんとそれは兄の幼いときの姿。しかも舌足らずに自分を、「オーちゃん」と呼んでいます。母がソックリだと思ったのも無理はないのかもしれません。 しかし母はみんなに不快な思いをさせたことを謝り、今後はもう言わないと約束してくれました。きっと母ならオースケのことを「子どもの頃のヨウイチ」ではなく「孫のオースケ」として愛してくれることでしょう。
【母の気持ち】遠くなる思い出!自分の子育てを孫の姿に重ねた私
私は長男ヨウイチ・長女カエデ・次女ユリエの3人を育てあげました。今やそれぞれが結婚して元気に過ごしてくれているので、親としてはとても幸せです。そんななか次女ユリエが出産。初孫の誕生、私は嬉しくてたまりません。しかも生まれた男の子は、なんと小さいころの長男ヨウイチにそっくりだったのです。「あの日のヨウイチがここにいる……」孫のオースケ君を見るたび、私は喜びと懐かしさでいっぱいになりました。
当然ながら私の育児はとうの昔に終わっていて、幼いわが子にはビデオや写真越しにしか会うことができません。私は嬉しくなって、いつも「お兄ちゃんにソックリね」と言っていました。しかしその言葉は子どもたちを傷つけていたのです。
子どもたちが帰っていったあと、夫と2人で久しぶりに昔のビデオを見ることにしました。古いビデオテープに残された子どもたちの懐かしい姿を見ながら、思い出話が尽きません。夫に優しく子育てをねぎらわれて、少しだけ涙腺が緩みます。
「孫が長男に似ている!」と大はしゃぎしていた私。しかしその言動がユリエやヨウイチを傷つけたことにはまったく気づいていませんでした。カエデから「デリカシーがない!」と注意されて、ようやく自分の言動を見直したのです。考えなしに発言をしていたことを今は反省しています。 けれどそんなふうにしっかりとした考えをもてるようになった子どもたちを、どこか頼もしくも感じました。子どもが小さかったころの思い出は、これからもどんどん過去へと遠ざかっていきます。しかし遠くなっていく分、思い出としてより深くなっていくものなのかもしれません。これからも子どもたちや孫と良い関係を築いていきたいです。