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<今さら聞けないスタートアップ>静岡県が新年度から支援強化を表明。ベンチャーとの違い、浜松市や県内の状況を改めておさらい!

アットエス

一次産業×スタートアップで地域課題を解決。地方の強みを活かしたビジネスモデルとは

静岡県はこのほど、革新的なビジネスを生み出すスタートアップ企業を支援するため、新年度から「スタートアップ先進県」に向けた取り組み強化する方針を示しました。一般財団法人静岡経済研究所特任研究員の阪口瀬理奈さんに、スタートアップの定義や県内の状況についてSBSアナウンサー青木隆太が聞きました。

青木:そもそも「スタートアップ」とはどのように定義されるのでしょうか?

阪口:スタートアップという言葉はいろいろな使われ方をしています。経済産業省では「新しいビジネスモデルを考えて、新たな市場を開拓し、社会に新しい価値を提供したり、社会に貢献することによって、事業の価値を短期間で飛躍的に高めて、株式上場や事業売却を目指すような企業や組織のこと」と定義しています。

しかし実際には、創業間もないベンチャー企業などを含めて「スタートアップ」と呼ぶことがあり、組織や個人によって使い方が変わるので少しその辺りは気にしてください。

青木:スタートアップとベンチャー企業の違いについては、よく議論になりますね。

阪口:一般的に、スタートアップの特徴は「急成長を目指していること」「先進的なアイデアを持っていること」が挙げられます。急成長させるには「夢を語ること」が重要です。「私たちの事業はこんなに新しく、実現すれば世界はこう変わるんだ!」というビジョンを示すことが求められます。

「スタートアップ育成5か年計画」で注目高まる

青木:日本でスタートアップ支援が始まったのはいつごろなのでしょうか?

阪口:スタートアップが話題に上がるようになったのは、2022年秋に国が「スタートアップ育成5か年計画」を発表してからですね。スタートアップへの投資を10年間で10倍に増やすという目標が掲げられました。これが国策としてだったのでかなり注目され、各都道府県や市町村でもスタートアップ支援策が絡む施策が始まっています。

青木:最近、特に言われだしているんですか?

阪口:そうですね。もちろん「スタートアップ」という言葉自体は昔からありましたし、民間のベンチャーキャピタルによる支援は行われていました。

青木:ちなみに日本で成功したスタートアップ企業はどこですか?

阪口:よく言われるのはフリマアプリの「メルカリ」や、電動キックボードのシェアリングサービス「Luup(ループ)」です。

青木:確かにどちらも既存の社会の価値観やルール、仕組みを変えた会社ですね。

鈴木康友県知事が浜松市長時代からの先進的な取り組み

青木:静岡県内では、浜松市がスタートアップ支援にとても力を入れている印象があります。

阪口:そうですね。鈴木康友県知事は浜松市長時代からスタートアップ支援に力を入れていました。国が「スタートアップ育成5か年計画」を発表するずっと前の2014年から、「はままつスタートアップ」という起業促進事業を始めています。

さらに、急成長するスタートアップが生まれるよう投資を盛り上げるため、国よりかなり早い2019年頃から「ファンドサポート事業」にも熱心に取り組んでいました。

青木:その活動は実を結び成果を上げていますか?

阪口:メルカリのようなサイズの企業ではありませんが「はままつスタートアップ」は知名度が高まり、多くの企業が誕生しています。

静岡県が支援強化で先進県へ名乗り

青木:静岡県全体でも、スタートアップ支援を強化していく流れになるのでしょうか?

阪口:知事がその方針を示しています。2023年度には県主催で、賞金1000万円のスタートアップ向けビジネスコンテストが開かれました。行政主催のコンテストでは全国最大級の賞金額で、大きな話題となりました。

青木:どのような企業が優勝したのでしょうか。

阪口:優勝企業は3社あり、それぞれユニークな事業を展開しています。
・タイヤの環境負荷を軽減する自然由来のタイヤ強化材の開発したリッパー株式会社
・構造物のサビ、塩分、塗膜などを一瞬で除去するレーザー技術をもつ株式会社トヨコー
・AIやIoTを活用して養殖魚の病気を早期発見し、生産性を高めるシステムを開発した株式会社ストラウト
いずれも静岡県の特色である「ものづくり」「水産業」「環境配慮」と結びついた事業です。環境は最近のトレンドですね。

青木:スタートアップでは、「Luup」が浜松市に導入されるという報道がありました。

阪口:浜松は新しいことに前向きですよね。県主催のスタートアップイベントで知事が「Luupさんとはかなり昔から意見交換していた」とお話しされていたので、展開しやすい場所だったのかなと思います。

一次産業のスタートアップが生まれやすい静岡県

青木:支援に力を入れる環境があることで、静岡県発のスタートアップ分野の発展に期待できますね。

阪口:もちろんです。お金もモノも人も東京に集中している状況は変わらないのでトレンドは東京発信が多い状況は変わりません。しかし、静岡には東京とは違う課題があり、それにアプローチしやすいという利点があります。

東京のスタートアップはいまだにインターネット関連が多いのですが、静岡では製造業、ものづくり、漁業、農業などの産業に根差したスタートアップが生まれやすいのは静岡の特徴で、強みでもあると思います。

青木:確かに、都心では製造業や漁業、農業の課題意識が低いのかもしれませんね。静岡ならではの強みを活かして社会を大きく変えていく企業の登場を期待したいですね。

阪口:そうですね。今後の展開が楽しみです。

青木:阪口さん、ありがとうございました。

※2025年2月26日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。​今回お話をうかがったのは……阪口瀬理奈さん
一般財団法人静岡経済研究所特任研究員

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